[解説] 今日の記事は、以前の解説版なしの転載の時に多くのアクセスがあった記事です。まずは解説なしで読んで頂き、最後に解説を書かせて頂きます。
次に、若いけれど私共の話をテーブを通して聞いて下さった方の、末期のお話をさせて頂きます。テープを渡すことにより命が短いと感づかれる事になるのではないかと心配しましたが、人間的にも立派な方でしたので、奥さんと相談の結果お渡し致しました。
Yへ
お父さんの元気の内にこの手紙を書き残しておく。痛みはさっき入れた座薬のお陰で止まっている。この間に少しでも多く書き進めておきたい。お前がこれを読むときは、既にお父さんはこの世には居ない。
本当に申し訳けないと思う。まだ小さいお前や、お姉ちゃんや、お母さんや、おばあちゃんや、四谷のおばあちゃん(生家の母親)を残して先に旅立つなんて、とてもつらいんだ。病院のベッドの中で幾日も泣き、苦しんだ。いろいろの事を考えると眠られず、身体に良くないと思いながら、毎日同じ事の繰り返しで、お前達の先の事が心配で、お父さんの運命を呪った。どんな事をしても、もう少し生きたい。片足が無くてもよい、両手が無くなってもよい、生きられるものなら生きたい。
そしてお前達の、少しでも役に立ちたい、相談にも乗ってあげたい。おじいちゃんが癌で亡くなってまだ幾日もたたないのに、お父さんが癌になるとは……、多分癌だ。いや、間違いなく癌だ。本当に胃カイヨウであってほしい。お医者さんも、周りの人達も胃カイヨウだと云う。
しかし、お父さんも少しは医学を学んだ。だからこのようにやせてくる事や、手術時間の短かかった事、入院前に三つの病院で診察してもらった時も、至急に手術が必要だと云われた事など、いろいろ重ねて考えると、悪性の癌でかなり末期に来ていると思う。
おそらくお母さんは医者から、知らされていると思う。その苦しさを顔に出さず、お父さんやお前達に笑顔を作っていてくれる。それを思うと本当に胸がはりさけるばかりに痛い。夢であってほしいと何度思った事か……
眠って起きた時、昨日の続きの今日である事に、どんなにガッカリした事か。いくら書いても書き足りない、このやるせない、どうしようもない気持ち、神も仏も恨みたくなる気持ち……これも今のお前ならば判ると思う。
おじいちゃんを亡くした今、又お父さんと別れてみると、神様や仏様があるならば、なぜ続けて、このような苦しみを与えるのかと……。
今、比較的平静な気持ちでこれが書けるのも、思い悩んでいるときお母さんが借りて来てくれた、何本かのテープを聞いて、お父さんの考えが変わったからだ。
元気で無我夢中で働いていた一ヶ月前なら、このテープを聞いても、おそらく聞き流していたであろう。しかし、ベッドの中で何も頼るものがないとき、イヤホーンを通して入って来る話は、今までのお父さんの考えを大きく変えた。素直に心に受け止める事が出来た。お前はまだ小さいから判らないだろうが、大きくなった時は、是非神様の話を聞いてほしい。今日は疲れたから続きは又明日書く事にする…。
昨日お前に手紙を書いてから、気持ちが和らいだ。正直な素直な気持ちを伝えられる事がこんなに嬉しい事だとは思わなかった。今日も続きを書く。今お前の寝息が聞こえる。耳を澄ませば皆んなの寝息が聞こえてくる。
皆んなで一諸に寝られるのも、もう幾日もないかもしれない、テープの話をする。
お父さんは今まで元気であった時も、神様や仏様はきちっとお祀りもしてきた。昔からのしきたりは、人一倍守ってきたつもりだ。だから神様や御先祖様については、現在の若い人達の中では、よく知っている部類の一人だと思っていた。しかし、話を聞いてみて、お父さんは何も知らなかった事に気がついた。神様と云えば正月にお札を飾り、毎日手を合わせ、又、お祭りには、町内でみこしをかつぐ事、位に考えていた。町内の氏神様も神様だ。しかし、それよりもっと偉い神様が居られて、その神様によって、お父さんも、お前も、お姉ちゃんも、お母さんも、皆んなが生かされている事が判った。
そして、お父さんはもう少しで、大事な大事なお前達と別れなければならないが、それは死んでおしまいになるのではないと教えられた。お父さんの命はずっと生き続け、身体は火葬になり灰となっても、魂はあちらの世に行って生き続け、仏壇の位牌を通してお前達の、あらゆる事を見続ける事が出来るそうだ。
そして、神様の元で修行というのがあるようだ。丁度お前の学校のような所だろう。まだ行って見ないから詳しい事は判らないが……そしてあの世からお前達を守るよ。なんでも暗い所に居るときは守れないというから、明るい所へ住んでお前達を一生懸命守るよ。どうも話の様子だと、死ぬと暗い所へ行くようだ。お父さんがもっと早く神様や先祖の事を知っていたら、最初から明るい所へ行っただろうが。
でも、お母さん宛の手紙にも書いておくが、亡くなってから四十九日が過ぎたら、加藤先生という方にお願いして、明るい所へ出してもらうよ。そうしたら、お前も仏壇の前でいろいろ話してくれな。学校の事、友達の事、思い悩んだ事、お父さんがきっと何とかするよ。先日もお願いして、お父さんの所の先祖代々の、小林家の大勢の方々を救けて頂き、それぞれの位牌に入って頂いているから、先祖の事は大丈夫だよ。
そうそう、おじいちゃんや、お父さんがこのような難しい病気になったのも、庭に祀った稲荷様の障りがきつかったのだそうだ。そのほかに土地の障りもあり、早くこのような事を知っていれば、こんな運命にはならなかったのにと本当に残念だ。でもいろいろの障りは、全部解決して頂いたから、お前達には災いはないと思うよ。
どうも運が悪いという事は、何か必ずそこには、そうなるような原因があるようだ。お前には少し難しいだろうが。お前が大きくなる頃には、このような事も研究され、もっと多くの人が分かり、解決方法も出来ていると思うよ。
それと、お父さんはずっと以前にも別の所で、別の男の人に生まれてきて、生活をして、年老いて又、死んでいるのだそうだよ。今生きているのは、十回目か二十回目か知らないが、死んだり生まれたりを繰り返しているのだそうだ。
だからもう少しで死ぬかもしれないが、又あの世で修行をして、神様にお願いして、次もお前と親子になるよう生まれてくるよ。そして今世、お前達に迷惑をかけた分、次の時はやさしい良い父親となって、埋め合わせをしたいと思う。お母さんはこの次にも、お父さんと結婚してくれるかな。お母さんにも、皆んなにも、埋め合わせをしたい。
お前ももう少し大きくなったら、心の勉強をしてほしい。このように生きている毎日毎日の、暮らし方のなかでの心の使い方、友達や人に親切にしてやる生き方の大切さ、自分だけ良ければよいという、自分中心の生き方はよくないのだよ。
人の為につくす生き方が大事なんだね。この生き方が次のお前の運勢を変え、お前の幸せになる種になるのだよ。まだお前は小さいから判らなくてよい。しかし大きくなったら、本当の神様とは何か?本当の生き方とは何か?ということも考えてくれ。お母さんにもよく話しておくよ。お前が将来相談できる人のことも含めて。
お前は父さんがいうのもおかしいけれど、素直でとっても気持ちの優しい子だ。お父さんはそれが嬉しい。学校の成績は普通でよいよ。それよりも丈夫で明るく、友達思いの子であってほしい。お姉ちゃんも本当に優しい子だよ。中学生になったら、なんとなく女っぽくなって来たね。お父さんは料理の上手な、優しいお母さんと一緒になれて本当に幸せだった。そして出来の良いお前達二人の子供を授かり、小林家に養子に来て、おじいちゃん、おばあちゃんに大事にされ、本当に幸せだった。申し訳ないのは、皆さんに役立たない内に、あの世に旅立たなくてはならなくなった事が、本当に心苦しいよ。死ぬのは少しも恐くないが、ただお前達に申し訳ない思いで一杯だ。
ふと、今も、自分の身に起きている事はみんな嘘で、これを書き終わって眠ると、明日になれば全てが健康で、なんて悪い夢をみたんだ、と思えたらとも、思ったりするんだよ。でも無理だな!
偉大なる神様に、出来るなれば、奇跡をお与え下さい、と毎日祈っているよ。石川のおばさんも、内緒で神様にお参りをしてくれているようだ。皆んなで一生懸命、お父さんの事を祈ってくれているんだね。本当にありがたいよ。お父さんは、あくまでも胃カイヨウで通すよ。その内にこの家でも寝られなくなり、病院に戻る事になるだろうが、希望は最後まで捨てないで頑張ってみるよ。
いつかお前達に、お父さんの病気について、話さなければならない時が来ると思う。誰でもいつか、どこかで何かを、覚悟しなければならない時が来ると思う。そしてその覚悟の為に必要な事は、偽りの優しさではなく、つらくても全てが事実であることを、認める事なのだね。そしてその苦しさに耐え、立ち上がる事なのだ。人間は苦しさを越す度びに、強くなるのだから。
テープの中に愛する夫を亡くした妻が、神様に私の生きている内に、夫を生まれ直させて下さい。会わせて下さいと、無理を願っていたが、お父さんの気持ちも、一日も早く生まれ直して、お前達の生きているうちに会いたいと思う。しかし、そのような情に流される事は、良くない事もわかったよ。
テープを聞いて良かった、もっと早く知っていれば良かったと思う。元気な内に親神様を一度参拝したかった。いつか機会があったら、お母さんやお姉さんと一緒に参拝してみてくれ。その時にはお父さんも、お前の背中に乗ってお詣りにいくからな。
お前達のこの世も、お父さんのこれから住むあの世も、大神、親神様のフトコロだそうだ。だから、どちらに居ても同じように生きているんだね。ただ、顔が見られないだけなんだ。テープを聞く前は、お父さんが死んだあとは、お前達が苦労する事を考えるとつらく、お前達の成長の姿を見る事も出来ないと思うと、運命を呪い、どうしようもなく、自分自身をたたきたくなったが、テープの話を聞いてからは、位牌を通して見る事も守る事り、又、命の生き続ける事を知ってからは、大分気持ちがおさまったよ。むしろ残るお前達の方の心が、倒れないでほしいと願うよ。
最後に、この手紙をお前はいつか読む事になるであろう。それは遺書という事になる。その日もそう遠くないであろう。お父さんの死が、お前達のこれからさきの夢を、奪う事になるかもしれない。しかし、幼くして父を失った子供も多い。しかしそのような子は、苦労はしても、しっかりした人生を歩んでいる人が多い。お前達も苦労はするが長い目でみると、その苦労がきっとお前達を立派に磨き上げてくれると信じている。
お父さんは、愛するお前達のために、一分でも長く生きたいと思う。最後の最後まで病と闘ってみるよ。どうか、お父さんの人生最後の闘いぶりをみていてほしい。そして、お前が困難に直面したとき、お前の身体のなかに、お父さんの血が流れている事を思い出してほしい。またお前達の寝顔をのぞいてしまった。お前達の寝顔を見るのも、これが最後かもしれないと思うと、どうしても見ておきたくなったのだ。それにしても、皆んないい顔をして眠っている。お前達の寝顔を見ていると、お父さんがどれだけお前達を愛していたかがよくわかる。特に病気になってみると、あれもしてやりたかった、これもしてやりたかったと、悔やみばかりだ。
死を前にして、少しも恐くない理由が分かった。お父さんがお前達の事を、命も惜しくないほど愛していて、又お前達も、お父さんに負けないほど、お父さんを愛している事が分かったからだ。愛している事と、愛されている事を感じ合えたとき、すべての恐怖は消えるのだね。いつかきっとお前にも分かるときが来るだろうと思う。さて名残は尽きないが、そろそろ旅立ちの準備に入らねばならない。最後の闘いの準備だ。疲れるからこの辺で手紙は終わる。
その前にもう一言、お前にはまだ荷が重いかもしれないが、男なのだから、お姉ちゃんとお母さんを頼むよ。それとお父さんに代わって、大神、親神様を信じ、心を成長させてくれよ。お父さんは心の底からお前達を愛していた。又、素晴らしい家族を与えられ、短い人生であったが、楽しく過ごせた事を、全ての人に感謝して筆を置く。
さようなら、
父より
愛するYへ
追記
お姉さんと、お母さんにも手紙を書いておく。
お母さんには、葬儀のときは簡単にするように話してある。戒名もいらないし、葬儀を立派にしたからといって、お父さんがあの世で幸せになるわけではない。お坊さんのお経も、何の役にも立たないという事も知った。
単なる今の世の葬儀であって、亡くなった時は葬儀の事など、ほとんどの人は知らないであの世に行く。親戚の人が葬儀のやり方で苦情を云う人もいるかも知れないが、お父さんの頼みであった事を知ってほしい。
それから死期が来た時には、無理に生かすような処置はしないよう、お医者さんに頼んである。では、最後を迎えあの世へ明るく誕生したいと思う。
後記
私共が相談を受けたのは、医師にだめだと云われ、手術も無駄だと云われていた末期の状態の時でした。
[解説] 死期を悟った人の手紙ということで、迫力があります。私たちは普段死期を意識することはあまりありませんが、死を意識すると、人生にもっと真剣に向き合うことができます。
私たちは人生の目標として俗世における目標(進学、就職、結婚、家を購入など)を立てることはありますが、魂の修行の目標を立てる人は少ないと思います。しかし、魂の修行の目標こそ重要なので、このブログを読まれている方は、一度、目標を立てられるとよいかもしれません。
逃げないで紙に書いたり、パソコンで書き出して見るのです。
死後に、大神様たちに対して、私はこのような目標を立て、このぐらい努力しました。そろそろ、人間界の修行を合格と認めて頂けないでしょうか、と言える自信を持って死ぬことができれば理想的だと私は思います。