竹下さんは五十六歳の主婦で患者さんです。五十歳を過ぎてから腰と足が痛く、あちこちと病院を巡りましたがよくならず当院へ見えたのです。早速大神・親神様にお伺いいたしましたところ、熱田神宮様に関わりがあることが分かりました。
熱田神宮様は、「謙虚な心になり前世において苦しめた亡者の人達に詫びなさい。心造りをしなさい」と再三にわたってお教え下さるのですが、竹下さんはその意味が理解できず、なぜ熱田神宮様は再三私を痛めつけるのだろうと思い、それまでは年に二回は熱田神宮に参拝していたのに今日は熱田神宮に参拝し神主様に頼んで熱田神宮様をお祓いするよう祈騰してもらってきたと言うのです。
熱田神宮様を災いの神だと思い始めたのです。のちほど分かったことですが竹下さんは前世、前々世において数多く大勢の方々を苦しめ死に追いやる行為をしていたのです。そしてその多くの亡者達の恨みが今世生きている竹下さんに念として向けられていたのです。
ところが竹下さんは、何回かの生まれ変わりの折に熱田神宮様の巫女として生きたこともあるのです。そのために熱田神宮様が守護神となって下さり、竹下さんが生を享けてから子育てが終り落ち着く年齢まで多くの亡者の恨みを抑えて下さり無事に生活できてきたのです。しかし今世も五十歳を過ぎてさきが短いのだから前世の亡者に詫びなさい、と教えて下さりはじめたのでした。
[解説] 熱田神宮様は随分と情け深い神様だということが伺い知れます。転生における配置のルールというのがイマイチ分かりませんが。大勢苦しめたら、簡単に人間として戻ってこれなさそうなのですが、馬や犬などを経て、人間になり、熱田神宮様の巫女として特訓を受けたといったところなのでしょうか。50を過ぎるまで神様の方でシールドというかバリアを張って亡者の恨みを抑えてくれるというのも、マンガのようです。
しかし竹下さんは輪廻転生のこともまた前世において悪を行なったことも信じず亡者の人達に許しを乞うどころか、なぜ私ばかり苦しまねばならないのかと不平ばかりを夫にぶつけている毎日です。その時のようすです。
大神――この者、景子なる者、同じことの繰り返しをいつも申しておるがそのように苦しき思いいたすはこの者、景子なる者の心の足りぬことであるのじゃ。この者への関わりある神の怒りとて充分にあるのじゃ。待て。代わるぞ。
神――わしじゃ。わしはこの者、景子なる者に関わり深き神、熱田の社の神であるのじゃ。わしの怒りにて景子なる者あのように厳しき痛き思いをいたしておるのじゃ。あの者長きにわたり何度となく前世よりの関わりあるを知らせてまいりたのだが駄目じゃ。なにを申したとて少しも心に入らぬのじゃ。
このようなる者になにを申したとて分からぬゆえに神はこの者、景子なる者には守護の行いとていたさぬのじゃ。この者の痛み苦しみあるはわし神のいたさせしことではないのじゃ。自身の古き前世の折の行いにて悪しき行いにより多くの者達を苦しめて通りてまいりておるのじゃ。その関わりある多くの亡者なる者達からの恨みの念を向けられ、この者の今の痛み苦しみとなりておるのじゃ。
このうえなるは自身より古き時代に関わりある亡者となりし者達への詫びの思いを深め、苦しむなかにても、古き時代の折に他の者にそのようなる苦しみを与えしことを悟り、許しを願ってまいるよりないであろう。わし、神は長きにわたり守りてまいりたが今となりては守護はいたさぬのじゃ。この後なるはわし熱田への願いをいたさぬがよいのじゃ。
[解説] せっかく指導したのに、あまりにもアホな生徒でもう面倒を見ていられない、という感じが伝わってきます。神様の世界の修行も大変ですね。
加藤――熱田神宮の神様、誠に誠に申し訳ございません。どうか景子さんの心の薄いと言うか物足りないところはお許し下さいませ。今、景子さんを見離されましては可哀相でございます。
古い前世の折には確かに神様の巫女さんでお仕えしたことでございましょうが、今世の景子さんは自身では前世のことはなに一つとて分かりませず神様の目から見るなれば誠に物足りないことと存じますが、どうか今世だけでもお許し下さいまして、せめて景子さんの足腰の痛みをお許し下さいましてお助け下さいますようにお願い申し上げます。
神様の申されるお怒りのほどは充分にあるかと存じますが、そのところをどうか曲げて今世はお許し下さいませんでしょうか。
神――わしはこの者に長きにわたりいくどとなく申してまいりたが、この者、心薄き者ゆえに怒りておるのじゃ。この者の痛みなるは自身にて苦しめし、その苦しき亡者達より恨みの念を向けられておるのじゃ。それゆえに関わりある亡者達に詫びて許しを願うことがよいのじゃと知らせたのじゃ。
今はわしとて怒りておるのじゃ。そなた仲に入り申してはおるが、わしは今はこの者への守りはいたさぬのじゃ。この者の心、深く分かりし後にては別じゃが今は駄目じゃ。
加藤――有難うございました。無理を申し上げまして申し訳ございませんでした。お許し下さい。
この後、竹下さんには前世の因縁や神様のお話や心造りのことをよく説明し、今世の生き方がいかに大切かをお話ししたうえ加藤先生に御無理をお願いして合計八回も前世の深い因縁を消していただきました。
誰でも前世の事は覚えていないし因縁や輪廻転生のことは理解しにくいことなので無理からぬことです。しかし、このように前世の因縁を消していくことにより完全に治るのですから輪廻転生や因縁が存在する証拠として認めざるを得ないのです。