Nさんのご主人は長男で、東京に出てから出世しました。そのため東京に立派な家を作りましたが、田舎の家には夏の避暑や村の用事くらいで、ほとんど帰らなくなってしまいました。ところがそんな折、加藤先生と親しいNさんの先祖の一部の人が加藤先生に頼り、自分達の思いを野田さん夫婦に伝えてほしいと言ってきました。
大神「わしじゃ。大神じゃ。親神じゃ。この者(加藤先生)そのように足腰に痛みあるは、この者の身内なる者ではないのじゃ。まったくの他人であるのじゃ。待て。代わるぞ」
亡者「はい。私でございます。私は遠いところに住んでいた者でございます。私の子孫の者は、家も田地もあるのに遠くのほうに住んでいて、家は空き家です。真っ暗です。たまに家に戻ってきても、長くいるのはほんの一月くらいで、また遠くの家に帰ってしまって、私達は戸締めの家の中にいるんです。あの嫁はいい者ですが、どうしてもこの家には来てはくれないんです。だから、私が子孫の者の知り合いの人(加藤先生のこと)に頼っていて、足や腰が痛くなるのです。私だけではありません。皆同じ思いでいるんです。
あの嫁が、こんなところは嫌いだなんて言って、来てくれないのです。私達がみんな長い間代々住んできたのに、住めないわけはないのに、あの嫁が来る気がないので、私達は毎日戸の開かない暗い家の中にいるのです。私達の墓だってこの屋敷の遠くないところにあるのに、子孫は遠くに住んでいて、たまにくるくらいで、本当に私達は悔しいです。家も屋敷も子孫に残してあるのに、空き家になっているんですから、悪いとは思いますが、長い間になりますが、知り合いに私が頼っているのです」
加藤先生「分かりました。そのことはお伝えさせていただきますが、でも皆様のお位牌は、いま子孫の方の住んでいる東京の家の仏壇にお祭りしているようですが、あの御位牌に入ってはいないのですか」
亡者「はい。私は入っていません。私は家の仏壇というか、昔からある家の中の仏壇にいます。私のほかの者は分かりません。私は、あの子孫の者のいるところに行くのは嫌です。このところが一番いいのです。あの子孫の者の家は、私は他人の家のようで嫌です」
加藤先生「では、ほかの人はどうしていますか」
亡者「待ってください。いますよ。みんなではないけど、今までのようにこの家にいますよ。あの子孫の者のところにいるのは、あの子孫の親でもなければ違う者がいるんですよ。みんなが、この家のほうが良いので、と言っていますよ」
加藤先生「分かりました。そのように子孫の方に良くお伝えさせていただくので、どうか私の足腰から抜けてくださいませんか。そして、いつ頃から私に頼っていたのですか」
亡者「私が頼っているのは、今ではないのですよ。ずーっと前からですよ。ずーっと前に、悪いけど頼っていたのですよ」
加藤先生「分かりました。では、よく話させていただくので、どうか私の体から抜け出てくださいませんか。私も人並みの体に戻りたいのですよ」
亡者「すみません。抜けますが、頼みはまだあるのですよ」
加藤先生「何ですか」
亡者「私はN家の者ですが、私があの嫁や子孫に言いたいことは、ウンと残した田地があるのだから、あの家に戻ってきてもらいたいと言ってください。私は、それでないと、あんなに一生懸命になって働いて残した財産が、むざむざと人の手に渡るのが心配で、心配で、仕方ないですよ。頼むからあの嫁に、戻ってきて先祖の者を安堵させてくださいよ、と言ってください。お頼みしますよ」
加藤先生「分かりました。よく分かりましたので、お伝えしますので、どうぞ私の体から抜け出てくださいね」
亡者「分かりました。すぐ抜けます。どうもすみません。堪忍してください」
(解説)先祖の歴史は長いです。ここに出て文句を言っている先祖は、田舎の家で暮らした何代かの亡者の人達だけです。そこに住まなかった先祖は、何の苦情も言っておりません。このような場合は、苦情を言っている先祖に話しかけて、教えてやることです。それは、土地や財産に執着心を持たないこと。
この世にどのような理由(苦労して築いた財産でも)があろうとも、思いを持ってはいけないこと。思うと暗いところに落とされること。肉体がないのだから、あの世ではあの世の修行をしなければならないこと。時代の移り変わりで、暮らし方も変わること。先祖は子孫の守護は必要であるが、執着心を持たずあの世の勤めに励むこと。などを分かりやすく話してやることです。根気よく話せば必ず納得します。