「プラトーン」
(原題: Platoon)

「プラトーン」 プレビュー
1986年12月19日公開。
ベトナム戦争を描いたハリウッド映画の代表作。
興行収入:$138,530,565。
受賞歴:
- 第59回アカデミー賞
- 受賞:作品賞、監督賞、編集賞、録音賞
- ノミネート:脚本賞、助演男優賞(ベレンジャー/デフォー)、撮影賞
- 第44回 ゴールデングローブ賞
- 受賞:ドラマ部門作品賞/監督賞/助演男優賞(ベレンジャー)
- ノミネート:脚本賞
- 第41回 英国アカデミー賞
- 第2回 インディペンデント・スピリット賞
- 受賞:作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞
- ノミネート:主演男優賞(デフォー)
- 第37回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)
- 第22回 カンザスシティ映画批評家協会賞 監督賞
- 第7回 ボストン映画批評家協会賞 監督賞
- 第61回 キネマ旬報ベスト・テン 委員選出外国語映画第2位
- 第11回 日本アカデミー賞 最優秀外国語作品賞
監督・脚本:オリバー・ストーン
キャスト:
- クリス・テイラー(Private Chris Taylor)
- 演 - チャーリー・シーン
- 主人公。新兵。
- ボブ・バーンズ二等軍曹(Staff Sergeant Bob Barnes)
- 演 - トム・ベレンジャー
- 戦鬼と化した分隊長。エリアスとは意見が合わない。完全に対立したエリアスを戦闘のどさくさに紛れ銃撃した。
- ゴードン・エリアス三等軍曹(Sergeant Elias Grodin)
- 演 - ウィレム・デフォー
- 人間らしさを残した分隊長。バーンズとは意見が合わない。民間人を虐待したことに関して、口封じのためにバーンズから銃撃される。
- ウォルフ中尉(Lieutenant Wolfe)
- 演 - マーク・モーゼス
- 第二小隊小隊長。バーンズに見下されており無視されている。バーンズが川下の村で行った蛮行に対して、見て見ぬふりをした。
- 雨天時の戦闘では誤った砲撃地点を砲兵隊に伝えており、味方に犠牲者を出す。
- クライマックスの戦闘で通信兵のトニーと共に本部と連絡を取っていたが、敵襲に遭い死亡する。
- ハリス大尉(Captain Harris)
- 演 - デイル・ダイ
- 中隊長。
エリアス派閥
- キング(King)
- 演 - キース・デイヴィッド
- 除隊を控えている。クライマックスの戦闘直前に除隊が早まり、テイラーに見送られながら戦場を去った。
- ビッグ・ハロルド(Big Harold)
- 演 - フォレスト・ウィテカー
- 温厚な性格の兵士。冒頭の戦闘でテイラーが負傷した際にも励まし続けた。雨天時の戦闘で爆弾のトラップにかかり負傷する。
- フランシス(Francis)
- 演 - コーリー・グローヴァー
- 恋人に手紙を書いていた。クライマックスの戦闘ではテイラーと組んで蛸壺に入る。共に戦い最後まで無傷でいたが、夜明けを迎えると後送資格を得るために自らの足をナイフで刺した。味方に救出された後、テイラーと共に後送される。
- ラー(Rhah Vermucci)
- 演 - フランチェスコ・クイン
- エリアスの死後、分隊を率いた。有刺鉄線を巻いた長い鉄の棒を杖のように使う。
- 劇中、負傷や死亡しなかった数少ない人物の一人。戦線を離脱するテイラーやフランシスらを雄叫びを上げながら見送った。
- ガーター・ラーナー(Gator Lerner)
- 演 - ジョニー・デップ
- 通信兵。ベトナム人との通訳を担当。雨天時の戦闘で撃たれ負傷する。
- クロフォード(Crawford)
- 演 - クリス・ペダーセン
- テイラーやキングと排泄物の処理を行った。除隊を控えている。雨天時の戦闘で撃たれ負傷する。
- マニー・ワシントン(Manny Washington)
- 演 - コーキー・フォード
- 見張りをしていた所失踪する。その後、川下の村付近で喉を切られ、木に括り付けられた死体として発見される。
- ドク・ゴメス(Doc Gomez)
- 演 - ポール・サンチェス
- 衛生兵。クライマックスの戦闘にて、ウォルフとトニーに全線を突破された事を告げる。その直後、敵襲に遭い死亡。
バーンズ派閥
- バニー(Bunny)
- 演 - ケヴィン・ディロン
- 凶暴な性格。川下の村で片足のベトナム人青年を撲殺し、彼の母親までも手に掛けた。その後他の者とベトナム人をレイプしようとした。
- クライマックスの戦闘ではジュニアと組んで蛸壺に入る。逃亡したジュニアに気を取られた際に被弾し、その後頭を撃ち抜かれた。
- レッド・オニール三等軍曹(Sergeant Red O'Neill)
- 演 - ジョン・C・マッギンリー
- バーンズの腰巾着。クライマックスの戦闘前にバーンズへ休暇を申請するが断られる。
- 最期の戦闘も死体に隠れ生き残るが、バーンズに代わって小隊長代理を任され絶望する。劇中、負傷や死亡しなかった数少ない人物の一人。
- ウォーレン三等軍曹(Sergeant Warren)
- 演 - トニー・トッド
- 川下の村の騒動後、バーンズに付いていれば安心だとジュニアらに話す。雨天時の戦闘で撃たれ負傷する。生死は不明。
- サンダーソン(Sanderson)
- 演 - J・アダム・グローヴァー
- 通称サンディ。オニールと共にテイラーらに排泄物の処理を命じた。川下の村付近でブービートラップによりサルと共に爆死。
- サル(Sal)
- 演 - リチャード・エドソン
- 川下の村付近でブービートラップによりサンディと共に爆死。
- モアハウス(Morehouse)
- 演 - ケヴィン・エシェルマン
- バニーやエースらと川下の村でベトナム人をレイプしようとし、テイラーに止められる。雨天時の戦闘で砲兵隊からの砲撃により死亡する。
- トニー(Tony)
- 演 - イワン・ケイン
- 通信兵。川下の村でベトナム人を積極的に殺そうとした。また、モアハウスやバニーらとベトナム人をレイプしようとした。
- クライマックスの戦闘でウォルフと共に本部と連絡を取っていたが、敵襲に遭い負傷した。
- エース(Ace)
- 演 - テリー・マキルヴェイン
- 通信兵。川下の村でベトナム人を積極的に殺そうとした。雨天時の戦闘で砲兵隊からの砲撃により負傷する。生死は不明。
その他・派閥不明
- ジュニア(Junior)
- 演 - レジー・ジョンソン
- 姑息な兵士。ジャングルでの野営時、クリスから見張りを引き継いだ後で居眠りをし、その間に敵が近づいてきたため、結果、銃撃戦の最中にガードナーが戦死してしまった。
- 戦闘後に責任をクリスに転嫁しようとした。
- 川下の村ではベトナム人を殺すことには反対したが、その後他の者とベトナム人をレイプしようとした。
- クライマックスの戦闘ではバニーと組んで蛸壺に入るが、大勢で攻めてきた敵に怖気ついて敵前逃亡を図るも頭を木にぶつけて昏倒。最期はバニーを殺したベトナム兵に銃剣で刺殺された。
- ガードナー(Gardner)
- 演 - ボブ・オーウィグ
- テイラーと同期の新兵。肥満体。彼女と結婚を控えている。冒頭のジャングルでの戦闘で敵の放った流れ弾が命中し死亡する。
- テックス(Tex)
- 演 - デヴィッド・ニードルフ
- 冒頭の戦闘で負傷する。絶叫していたため、バーンズに黙るよう命令される。
- パーカー(Parker)
- 演 - ピーター・ヒックス
- クライマックスの戦闘で死亡。
- フラッシュ(Flash)
- 演 - バジル・アチャラ
-
- シェン(Fu Sheng)
- 演 - スティーブ・バレード
- 雨天時の戦闘で砲兵隊からの砲撃により死亡する。
- ロドリゲス(Rodriguez)
- 演 - クリス・カスティリェホ
- キャンプの寝床に神殿を作っている。クライマックスの戦闘で蛸壺を襲撃され負傷する。
- タブス(Tubbs)
- 演 - アンドリュー・B・クラーク
-
- エベンホック(Ebenhoch)
- 演 - マーク・エベンホック
- 劇中、負傷や死亡しなかった数少ない人物の一人。
- ホフマイスター(Huffmeister)
- 演 - ロバート・ガロッティ

あらすじ:
クリス(チャーリー・シーン)が、ベトナムへやって来たのは1967年。
大学を中退してまでベトナムを志願したのは、次々と徴兵されていく同年代の若者たちのほとんどが、少数民族や貧しい者たちだった事に対する義憤からだった。
だが、いきなり最前線の戦闘小隊(プラトーン)に配属されたクリスにとって、戦争の現実は彼の想像をはるかに超えた苛酷なものだった。
その小隊の隊長バーンズ(トム・ベレンジャー)は、冷酷非情で、顔の深い傷痕が証明するように過去何度も死線をくぐりぬけてきた強者だ。
班長のエリアス(ウィレム・デフォー)は、戦場にありながらも無益な殺人を犯してはならないという信念の持ち主。
その他、様々な個性を持つ兵士たち13人の小隊は、人間の最大の罪悪といえる戦争の真っ只中に放り込まれる。
ある日、ベトコンの基地と思われる小さな村を発見した。
バーンズは真実を吐かない村民を銃殺した。
バーンズの非情さに怒りを爆発させたエリアスは殴りかかった。
「軍法会議にかけてやる」と叫ぶエリアスと、彼の平和主義的言動に心良く思っていなかったバーンズの対立は決定的となった。
そして――大規模なベトコンの大部隊との戦闘が間近かに迫ったある日。
エリアスが単身、斥候に出た時、後を追ったバーンズが卑劣にも射殺してしまう。
やがて、ベトコンの大部隊と凄まじい接近戦が始まった。
圧倒的な人海戦術の前に次々と倒れていく戦友たち。
悪夢のような一夜が明けた。傷つきボロボロになったクリスの前に、バーンズが息も絶え絶えに倒れていた。
エリアス射殺のことに気づいていたクリスは、バーンズに向けて怒りの引金を引いた。
コメント:
ベトナム戦争の最前線を舞台に、地獄のような戦場と兵士達の赤裸々な姿を描く。
タイトルの「プラトーン」とは、軍隊の編成単位の一つで30名から60名程度で構成される小隊のこと。
1980年代にベトナム戦争を描いたオリバー・ストーン監督の代表作である。
仲間内での殺し合いが描かれている異色の戦争映画として注目された。
エリアスがバーンズに射殺される問題シーンがこちら:

クリスがバーンズに向けて怒りの引金を引くシーンがこちら:

数多くのベトナム戦争を描いた映画の中で、仲間内での殺し合いをテーマにしている異色な作品として、多くの論戦が交わされた問題作である。
だが、おそらくこういう事件は実際にベトナムの戦地で起こっていたのかも知れない。
米軍とベトコンとの凄まじい戦闘シーンは他の作品でも描かれているが、やはり米兵同士の殺し合いをしっかり見せているところが、オリバー・ストーン監督ならではだ。
出演した俳優は当時まだ無名に近いものが多かったが、実体験に基づいたリアリティのある戦闘シーンなどハリウッド的スペクタクル映画の要素も備えており、映画は大ヒットした。
『プラトーン』の成功でオリバー・ストーンはベトナム戦争を題材にした映画の先駆者として評価されるようになり、一人のベトナム帰還兵の生涯を描いた『7月4日に生まれて』を監督。
同作品でもアカデミー監督賞を受賞した。
オリバー・ストーンは、ベトナム帰還兵である自身の1年間の実体験を活かし、ベトナム戦争とそれが人間に与えた影響を描いた本作で一躍有名になった。
この人は、ニューヨーク州ニューヨーク市出身。
父ルイスはウォール街で成功を収めたユダヤ系の株式仲買人で、母はフランス系のカトリック教徒であった。
そのため、折衷案として米国聖公会で育つも、のちに仏教徒となったという。
イェール大学で1年間学ぶが、中退してベトナム共和国に赴き、英語を教えるなどして半年程過ごす。
帰国後復学するが、再び中退している。
1967年からアメリカ合衆国陸軍に従軍し、ベトナム戦争を経験。空挺部隊に所属し、LRRPと呼ばれる偵察隊に加わっていた。この任務は特殊部隊的な側面を持ち、死傷率がもっとも高かった部隊のひとつである。
除隊後にニューヨーク大学でマーティン・スコセッシに師事し映画制作を学んだが、しばらくはシナリオが売れないなどスランプの時期が続いた。
1974年にホラー映画『邪悪の女王』で長編監督デビュー。脚本を担当した1978年の『ミッドナイト・エクスプレス』で、アカデミー脚色賞を受賞。『コナン・ザ・グレート』(1982)、『スカーフェイス』(1983)などの脚本で頭角を現す。
『プラトーン』『7月4日に生まれて』の2作品でアカデミー監督賞を2度受賞する。
その他の代表作には『ウォール街』『JFK』『天と地』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『ニクソン』『スノーデン』など。
本作『プラトーン』は、自身のベトナム戦争での体験がベースになっていると言われ、戦争という異常な状況下で人間はいかに醜く残酷になるか、そしていかに戦争が非人道的なものであるかを痛烈に訴えている。
これらの作品についてはアメリカ国内では賛否の差が大きく、特にオリバー・ストーンと同じ世代ではその傾向が顕著である。
日本への来日の際、オリヴァー・ストーンは広島市・長崎市・沖縄県を訪れ、原爆資料館や米軍基地反対の沖縄住民の元を訪れた。
沖縄ではジャーナリストのジョン・ミッチェルが同行した。
2017年、米国家安全保障局の盗聴を告発したエドワード・スノーデンを描いた映画『スノーデン』が公開された際、「日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)などアメリカの同盟国と言われる国々は、僕は現実には同盟国ではなく "アメリカに人質を取られた国" だと思っている」と語った。
主な監督作品は以下の通り:
『プラトーン』
『ウォール街』シリーズ
『7月4日に生まれて』
『ドアーズ』
『JFK』
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』
『アレキサンダー』
『ワールド・トレード・センター』
『野蛮なやつら/SAVAGES』
『スノーデン』
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