久しぶりの投稿である。17年間の塾講師を経て不動産会社に転職した割には、不動産に関する投稿がゼロだったので、そろそろ不動産に関する情報提供もしてゆきたい。

 

 表題の通りである。賃貸物件を契約する場合、重要事項説明で触れられることもあり、契約書でもお目にかかったことがあるだろう「短期解約違約金」について解説する。

 

 

<短期解約違約金とは>

 

 その名の通り、入居期間が短かったら違約金を支払いなさいよという特約(契約事項)である。全ての物件が該当するワケではなく、契約書に記載が無い場合は無論そのようなお金を払う義務は無い。

 

 「短期」といってもどれくらいなのか、というのは一概に決まっておらず「1年未満」「2年未満」「半年未満ならいくら、1年未満ならいくら」「1年未満ならいくら、2年未満ならいくら」と4~5タイプほど存在する。

 

 違約金の金額は、だいたい家賃の1ヶ月~2ヶ月に設定されることが多い。

 

 

<大家はそこまで金にがめついのか!?>

 

 そういう制度があると知ると、入居者は「ただでさえ、大家は何もせず毎月安定した家賃収入でウハウハ状態なのに、違約金まで取って儲けようとしているのか!」と憤慨することだろう。

 

 しかし、これに関しては大家さんを責められない事情が存在するのだ。不動産雑学の1つとして知っておいてほしい。

 

 

<大家さんは部屋が決まると仲介店に多額のお金を支払う>

 

 これは内々の話になるが、仲介店の紹介によりとある部屋が決まったとする。契約者は、仲介手数料を仲介店に支払う。売買と異なり、賃貸は「借りる方」が仲介手数料を負担する。

 

 ところが、仲介店は「仲介手数料」のみで食っていけないのだ。仲介手数料の上限は家賃の1ヶ月と決まっているのだ。それ以上の請求は宅建業法に違反するので絶対に許されない。でも、正規の仲介手数料だけだと仲介店はどんどん潰れてゆく。そうすると、大家さんからお金をもらえないかどうか考えるわけである。

 

 そこで考え出されたものが「仲介手数料」とは別に、「あなたの物件を紹介してあげたんだから、宣伝費として別途下さい」というお金。「広告宣伝費」と言われるものだ。

 

 これには上限が無い。宅建業法にも規定や制限が無い。だいたい相場としては家賃の1ヶ月~3ヶ月くらいで設定される。家賃5万円の物件だと、決まるごとに仲介店におこづかいとして5万円~15万円のお金を支払わねばならない(大家が)。

 

 広告宣伝費は必ず設けねばならないものではないが、設けねば仲介店が紹介してくれない。広告宣伝費をたくさん設定している物件は、仲介店が率先してお客さんに紹介する。

 

 つまり、とある物件が決まって、大家さんが宣伝費として10万円を仲介店にあげました。その半年後に退去しました。また募集をかけ、数ヶ月空白の期間があったのちに再び申し込みが入り、また仲介店に10万円を宣伝費として支払いました。

 

 どうですか??あっと言う間に退去されたら、大家さんはかなり損します。退去が決まって、ただちに次の申し込みが入るような時代じゃないでしょ。2ヶ月、3ヶ月と空室の期間が発生することも考慮すると、大家さんの損失ってかなり大きいのです。

 

 おっと、話が全然違う方向に行ってしまった。。。。

 

 

<短期解約違約金は違法ではないのか?>

 

 これは難しいが、判決をみる限りでは、賃料の2ヶ月までなら適法であると言える。と言っても2ヶ月設定する物件はそんなに多くないと思う。違約金1ヶ月設定のところが多い。上記理由を考慮すれば、大家さんが儲けるために作られた制度ではなく、むしろ大家さんの損失を少しでもカバーするための制度であるということは理解すべきである。

 

 逆に、短期違約金4ヶ月とか5ヶ月になると、無効とは言えないまでも、判決において減額される可能性はゼロではない。ってか、そんな物件を申し込むなよwwww あとで「納得いかねぇ」じゃなく、最初から「それだったら他で探します」となるべきである。

 

 あと、大家ないし管理会社が、物件を正常に保たず、不具合や隣人の騒音、いやがらせなどで解約する場合(借り主側に正統な理由がある場合)、短期解約違約金は無効となることもある。

 

 

 短期違約金なんて一切払いたくないという人は、仲介店に確認して、そういう物件に住むのが一番である。契約というのは双方の合意の上なのだから、後になって「そんなの知らない、違法だ」というのもおかしな話である。

 

 契約書の隅々まで目を通す必要は無い。しかし、自分に不利になり得る事柄は、思いつくこと全て仲介店に確認すべきである。