息子が幼稚園に入園した事を機に、私の世界が充実し、それと連動するかのように夫の態度も優しくなりましたが、私は常に腹の底に黒い塊のようなものを抱えていました。





仕事が激務であるにも関わらず、休みの日には家族に尽くす夫を、息子の父親としてとても満足していました。





ですが、私の夫としては?





以前、私へのプレゼントに夫が息子を連れて花を買いに行った際、その現場を偶然ママ友が目撃したらしく、後日「幸せで羨ましい」といった内容のLINEが来ました。






傍から見ると、私は幸せな主婦なんだと戸惑いました。





確かにこの頃の私は「今日までの結婚生活の中で一番幸せだった」という事に嘘はないです。





嘘はないですが、





私は、夫をどうしても許す事が出来ませんでした。





私はママ友が増え、自分の交友関係が広がってもそれを夫に話すことはありませんでした。





息子の幼稚園での様子を夫に話すことはありませんでした。




楽しい事も、モヤモヤする事も、それを夫に話す事は決してありませんでした。





つまり私は、夫を信頼していないのです。





この男は、こちらが気を許して話しかけると無神経な言葉でその場の空気を凍り付かせます。





本人は無自覚なのです。





もしかすると、アスペルガーなどのそういった特徴を持った人なのかもしれません。





ただ単に"妻"という存在をどう扱っていいのかわからない人なのかもしれません。





ですが、私にとってはそれはもうどちらでもいい事です。





私は夫との夫婦関係をどうにかしたいなどと思ってはいないのです。





私はこの男を家族とは思っていません。





単なる同居人、もしくはATMだと思っています。





一つ断っておきますが、私が率先してATMだと思っているのではなく、夫が自らATMに成り下がったのです。





私が悪阻で苦しんでいた時のあの迷惑そうな顔、陣痛で苦しんでいた時のあの心底うんざりした白けた目。





私はどうしても忘れる事ができません。





夫がどんなに家族サービスに励もうが、私は腹の底では冷ややかに、白けた目で眺めています。





それなのに、それでも、息子の喜ぶ姿を見ると幸せを感じてしまいます。





幼少期の私の得られなかった夢が叶ったようで、今の私が満足します。






私の腹の中は、夫への恨みと感謝が入り混じっていました。





夫を許してしまえば楽になれるのにと、自分を責める日もありました。






でもやっぱり許せませんでした。






この頃からだったと思うのですが、私は自分の体力が少しずつ衰えていくのを感じていました。






階段を上がったり、ちょっとした上り坂もすぐに息が切れるのです。





それは最初、全く気にも止めていませんでしたが徐々に徐々に私の心身を蝕んでいきました。