前回の補足を少しさせて下さい。





私は小学校4年生から6年生まで、スポ少でバレーボールをやっていました。




昭和の時代だったので指導は厳しく、しかも強いチームだったので入団当初は30人くらいいた同級生も半年後には7人まで減りました。




私は今でこそ日本人女性の平均身長ですが、当時は同級生達に比べて背が高く、それに加えてジャンプ力があり、大して球技のセンスもないのにチームの主力としてそこそこ活躍していました。





キャプテンの候補の中に名前が上がった事もあり、私自身も「キャプテンになったらどうしよう〜♪」とドキドキしていましたが選ばれる事はありませんでした。





当時はちょっとガッカリしましたが、よくよく考えてみると私は身長とジャンプ力だけが取り柄であり、ボール🏐のコントロールも出来なければ、テクニックもなく、なによりバレーボールのルールをよく理解しておらず、今何故笛を吹かれたのかもわからないまま試合に参加していたので、当然と云えば当然でした。






キャプテンに選ばれたのは、候補にも上がっていなかった意外な人物でした。





彼女は背が低くジャンプ力も平均的で、前衛で活躍するタイプではなかったのですが、レシーブもサーブも安定した選手でした。





なにより私などと違って、練習には無遅刻無欠席、家でも練習を欠かさない真面目な姿勢が選ばれた要因なのだろうと思いました。






ですが実際は違っていました。






彼女の両親は、今では当たり前、当時では珍しいスポ少に熱心な親でした。





今は練習当番、試合当番に加え試合があれば車出しをするなど、親の協力がなければ成り立たないみたいですが、私が子どもだった昭和の時代、スポ少は基本的に指導者と子どもだけの世界でした。





なのでキャプテンの両親は当時ではとても珍しいというか、とても浮いた存在でした。






練習や試合にはほぼ毎回見学に来ていて、車出しも積極的にするが、口出しも積極的でした。







コーチ達が見ていないところで、私達にプレーについて上から目線のアドバイスというダメ出しをしていました。






キャプテンの選出についてもコーチ達に詰め寄ったというのは後から聞いた話です。






そのキャプテン自身は、どんな子だったかというと自分より弱い人間には強く出るが、強い人間には弱く出るタイプでした。





ある試合中、何故かセッターが私に全くボールを回してこない事があり、コーチが問いただすとキャプテンが私にボールを回さないように指示した、という事が一度だけありました。





そしてあの事件が起こります。





私の他にアタッカーがもう一人いるのですが、その子が道でキャプテンのお母さんに出会い、挨拶をすると突然キレて説教を始めたというのです。






「あなた達の態度は生意気でとても悪い。もっとキャプテンを敬いなさい!」






この話は瞬く間に広がり、私の耳に入ってくると同時にキャプテンのお母さんから直接電話をもらいました。





聞いた話では怒り狂った様子だったらしいですが、電話では穏やかで落ち着いた感じでした。が、必死さがひしひしと伝わってくる声でした。






私はおそらく30分くらい彼女と話しました。というより私が一方的に喋る彼女の話をずっと聞いていたのです。





彼女の話す内容は「とにかくあなた達の練習態度が目に余る。かといってちょっと言い過ぎたかもしれない。でもやっぱりあなた達が悪い。」という事を何度も繰り返しましたが、その中でもきっとこれが彼女の本音なんだろうなと思う言葉がありました。






「うちの子は頑張ってるのに、あなたは頑張ってない」






バレーボールの花形といえばやはりアタッカーやセッターの前衛ポジションなのでしょう。





ですが私は誓って、ポジションでチームメイトに優劣をつけた事はありません。




確かにキャプテンから見れば私は不真面目に見えたかもしれません。




私はバレーボールが好きというより、仲の良い友達とやるバレーボールが好きだったのです。




試合で遠征するとなると、一番の楽しみはおやつ交換でした。




前日に自主練するより、おやつを買いに行く方が大切でした。




ですが、そういうスポーツの楽しみ方だっていいじゃないですか。




私は何もプロを目指している訳でも、ましてや日の丸🇯🇵を背負っている訳でもないのです。




ポジションでチームメイトに優劣をつけ、勝手に落ち込み、勝手に腹を立て、体格差を埋める為に必死に努力しても埋まらないもどかしさを他人にぶつけて、チームの輪を乱しているのはあなたです!





とは当時の私は言いませんでしたが、私はこの時のキャプテンのお母さんの言動が、奥さんに重なったのです。





実際、彼女達はよく似ていました。





姿形ではなく、なんというかオーラみたいなものが。





チームメイトを蔑む目、つまらなさそうな顔、口を開けば不満ばかり。





私は奥さんに何度も忠告しました。





「チームメイトは敵じゃなく、仲間ですよ」




「ポジションにこだわるより、友達とスポーツを楽しんだという経験の方が将来の糧になる」





レギュラーになれなければ絶望し、なったらなったで今度はキャプテンになれるよう画策し、キャプテンになっても周りからチヤホヤされなければ気が済まない。




スポ少が悪いのではなく、スポ少で狂う親が悪いのです。





余談、というか後日談ですが、中学校では私は吹奏楽部に、私以外のチームメイトは皆バレー部に入部しましたが、キャプテンだけは中二の途中で陸上部に転部しました。




なにがあったのかはわかりませんが、怪我に悩まされていたようです。




奥さんの子どもも、キャプテンになれたのも束の間体調不良で卒団を待たずに辞めたと言っていました。