思い返せば僕はずっと"ひとり"だった。いや、ひとりが良かった。ひとりで生きることになんの躊躇いもなかった。
なぜなら人は最終的にはひとりで死ぬのだから。
その運命の定めからは決して逃れられない。
それなのに無理して誰かと関わって周りに気を配って、同じような服を着たり、同じようなものを食べたりして
ひとりを薄めたくなかった。
だから、学生時代のその殆どを"ひとり"で過ごしていた。
けれど、本当に僕はひとりになれていただろうか?
本当に僕の中に純然な確固たるひとりがあったとするならば、昼食を一人で摂ることを恥ずかしいと思う気持ちや、昼休み、なんか一人で寝たフリをするのはあまりにも定番すぎるからと、次の授業の準備をしてるフリをして、気が付いたら昼休みの15分をまるまる次の授業の準備のフリにあてていたり…などしなかった筈だ。
僕の"ひとり"は常に他者の目を気にしているあまり、ぐらぐらと揺らいでばかりだった。
僕は大勢の中で上手くやれない人間だ。
それならばもっともっと"ひとり"を濃くしていかなければ最終的に訪れるひとりの死を受け入れることなど到底出来ない。
僕の"ひとり"はあまりにも"薄すぎ"る
そのような結論にいたり…
なんやかんやあって…
今なんか…
うすしお味じゃなくね?
となっていた。
買ったは良いものの、気分はコンソメパンチ、むしろコンソメダブルパンチだったのでは?
と気づいてしまったのである。
だから、全然手を付けずに、なんかもはやポテトチップスの賞味期限ギリギリまで寝かせてみようかなと試みていたのだ。
けれど、やはりというべきか、またあの声がした。
ポテ坊「どうせ食べるんだから早く食べちゃえよ?」
ーーまた、お前か。
ポテ坊「君みたいな薄っぺらい人間は僕みたいなうすしお味がお似合いだよ?」
ーーそんなことはない、やめろ、僕はもう二度と揺らがないと決めたんだ
ポテ坊「じゃあなんで買ったんだよ責任取れよ」
ーー責任…。
「君はただの気まぐれでうすしお味を買い、そして今うすしお味を寝かせようとしてる、あまりにも自分勝手だろ?結局君は自分を強くしたいんじゃなくて、弱い自分を受け入れてくれる社会を望んでいるだけなんだ」
ーーそ、そんなことはない
ポテ坊「そんなことあるさ、君はあまりにも脆い人間だ。その証拠にほら数分前まで君は、それほど仲良くない友人の誕生日にスタバのギフトカードを送るかLINE のスタンプで済ませるかでずっと悩んでたじゃない?本当にちっちゃい男さ」
ーーやめろ、もうやめてくれぇーー
僕の自我が崩壊する寸前、どこからともなく声がした。
Mr.P「なにかお困りのようですな?」
ーーあ、あなたは?
Mr.P「私はジュリアス・プリングルズ、通りすがりのサワークリームオニオン味さ」
ーーか、かっこいい!
ポテ坊「く、くそぉー、早く僕を食べてこんな奴追い出してよ、僕のほうが先なんだからさ」
Mr.P「おやおや先とか後とか、そんなおこちゃまなこと言われると困りますなぁー、ちなみに私はほらこんなことも出来ますぞ…フゥーー…」
Mr.P「フンッ!!!」
ーーぶ、分身の術ぅーー?
ポテ坊「こ、こんな濃い味食べたら絶対喉乾くよ?」
ーーそうだよなぁー
ポテ坊&Mr.P「じゃあ、どっちにする!?」
ぜーんぶ食べちった…