大人になったからなのか、まだ大人になれていないからなのか、

悪夢ばかり見る。

冗談や誇張を一切抜きで、少なくともここ一年間は悪夢しか見ていない。

毎日、毎晩、毎朝。

規則正しく、悪夢によって目を覚ます。

そして、うんざりするような酷い寝汗と共に一日が始まる。

幼い頃はお父さんやお母さん、仲の良いお友達に話せたりしてよかったけれど、

他人の悪夢ほどどうでもいい話があったもんじゃないし、悪夢は自分の悩みの現われみたいなものだと思うから、

今では他人にはほとんど話さない。

よほど面白かったり有益な悪夢でない限りは。

でも、悪いことばかりじゃない。

悪夢で目を覚ますと、必ず僕は昨日の行いを反省する。

忘れっぽい僕は誰かを傷つけたり、裏切ったり、クズを働いたこともぽっかり忘れているから

それで丁度いいのだと思う。

ひと際すごい悪夢を見た日は

少しだけ今日の自分が良くなったり、少しだけ優しい人になれている気がするから。

そういえば、

他人には絶対話さないようなうんとマイナーな悪夢を

よく紙に書く、ポエムみたいで恥ずかしくなって朝方シュレッダーにかける。

だから、シュレッダーの中はいつも悪夢でいっぱいだ。

シュレッダーの箱がぱんぱんになると、その千切りキャベツみたいになった悪夢たちをゴミ箱へ捨てる。

今ではそれが不思議と日課になりつつある。

そして、いつも決まってこの最低な悪夢のゆくえを考える。

悪夢たちは訳も分からずゴミ処理場に連れていかれ、

燃やされて、二酸化炭素になって、その町の空気になる。

でも、ひと際往生際の悪い悪夢は逃亡をはかって、

遠い町の、遠い国の、とおい、とおい、どこかで、

雨になって誰かの頭上に降り注ぐ。

すると…

今日悪いことをしたおじさんや、今日子供に優しくなかったママや、今日ちょっぴり友達をイジメたガキンチョなんかが

今晩うなされる。

うなされてしまえばいい。

そして、明日の世界が少しだけ平和になる。

こんなことを書いても僕はきっと今日も悪夢にうなされる。

うなされてしまえばいい。

でも、それで丁度いいのだと思う。



◼️monogatary.comという小説投稿サイトにて「月に行った猫」を更新しました。是非、お時間のある時に読んで頂けると嬉しいです。




短髪にしたい和田。
宜しくお願い致します。