休みの平日になんとなく窓から顔を出していると、下校中の三人組の小学生男子たちの会話が聞こえてきました。


「社会的制裁を与えないとな」「これは社会的制裁ですな」


とまだ黄色い帽子を被っていたので低学年くらいでしょうか、覚えたての大人の言葉を使ってるって感じでした。

と、そんなことを言って、二人の男の子が後ろを歩いている男の子の方を向いたのでどんな社会的制裁を行うのか見ていると…


「〇〇菌つけたー」


と言って一方が自分の右手を相手の肩になすりつけて二人は逃げるように走っていきました。

「〇〇菌」をつけられた方も「やめろよ〜」とまんざらでもなさそうな感じで鬼ごっこみたいに二人の男の子たちを追いかけていきました。

かわいい社会的制裁ですよね

全然社会的じゃないし(笑)

これだけいろいろな娯楽が溢れているのにまだ「〇〇菌」という遊びが残っているんですね。

そういえば菌で思い出したんですけど、


人間のヒトゲノムにはオレンジやりんごなどの多糖類を分解する酵素がなく、僕らの身体に住み着いている微生物が酵素を出して、代わりに分解し、消化しているらしいです。


これはどういうことかというと、事実として僕らはりんごを食べているようで本当に食べているのは僕らに住み着く微生物なのです。


これまで僕は人は生理学的に独立した存在だと思っていたのですが、知らず知らずに僕の身体はアパートみたいに無数の微生物たちが住み着いていて、それと共存していて…

母親の身体から出てきた瞬間からシャワーみたいに身体に付着するそうです。

微生物は栄養供給や免疫系、代謝系の調節など、体内で様々な役割を担ってくれていて、僕らは彼らなしでは生きてはいけないのです。

だから、もしかすると僕らが微生物を利用しているようで、利用されているのは僕らの方で、僕らの身体の主導権は微生物側にあるのかもしれない。

とか考えるとめちゃめちゃ怖いですよね!!

後、以前ネットニュースで見たんですけど、人はキスをすると健康になるそうです。

キスをすることでより多種の微生物を体に取り入れ、病気の原因となる微生物の侵入に対する抵抗力を強めるんだそうです。

これも考え方を変えると、キス自体も微生物によって操られてキスさせられてるのかもしれないですよね。

だって、キスって人間が繁殖する上で必要な行為に含まれないじゃないですか。

それなのにどうして僕らはキスをするのかと考えると、やっぱり僕らの感情に働きかけている何かがいるわけで、もしかしたらそれは微生物のせいかもしれないですよね。


「あー、なんか喉渇いちゃったー」


「お、お、俺、俺の水でよかったら飲む?」


と必死に鼻の穴が膨らんでないかとか気にしちゃって…


小学生の頃、なんであんなに間接キスが禁断の行いみたいになってたのか今考えると不思議でしょうがない。


あれもきっと微生物たちにとっては、初めて移民を受け入れるみたいなとても大きなイベントだったからかもしれないですよね。

タイプでもない人にキスをして、明日の朝日ともに溶けていくお化けみたいな情熱や
 
浮気とかもきっと微生物のせいです。

遡って考えればアダムとイブの禁断の果実を口にした罪も

微生物によって仕組まれたものかもしれません。

とか考えると…

僕はなんて遠いところに来てしまったんだ。

僕らは本当の意味でオレンジ、りんご、キスの味を知ることが出来ないのかもしれない。


それでも


嗚呼、キスがしたい。