一昨日、実家に行ったので弟の部屋を覗くと、弟は掛け布団にくるまって携帯を弄っていました。
まだ昼間なのに電気を消して
まるでモグラみたいに。
そして、弟は僕に気づくと背を向けて
「分かっているよ」
とまだ何も言っていないのに呟きました。
弟は今年受験生です。
華の高校三年生です。
でも、本当に勉強していないのです。
家族が受験生であることを忘れてしまうくらいやらないのです。
たぶん本人も忘れています。
僕は「やる気〜スイッチ君のはどこにあるんだろ〜」
と歌いながら弟にくすぐり攻撃を開始しました。
弟「やめて、やめて…」
と言い、くすぐり攻撃を止めた途端再び布団に潜っていきました。
それからしばらくの沈黙。
そして、弟はおもむろに布団から手を出すと壁に
「令…和」
と言いながら指でなぞりました。
弟「令和になってからやるよ」
僕「それいつもの明日からってやつじゃん」
弟「違うよ、令和になると切り替わるんだよ」
それから弟と「今日は二度と返ってこないよー」とか、世界一不毛なやり取りをしながら気づいたのが、言葉ってブーメランになって返ってくるんですよね。自分に。
弟に言いながらも自分はどうなんだろうって。
そもそも弟に意見を言う資格なんてないんじゃないか。
とか考えてしまって、
思ったんですけど
僕も弟も自分でモチベーションを維持できる人間じゃなくて
世の中には危機管理意識が高く、自分でやる気スイッチを押せる人間がいますが
僕も弟もきっとやる気スイッチが外部に取り付いているんですよね。
自分では押せないんです。
だから、兄弟揃って本棚に似たような自己啓発本のようなものがあって…
というか、じつは
今、今、ここにいる僕の世界の裏側で、やる気MAXの自分がスタンバイしていて、そのスイッチが押された瞬間に入れ替わっているのかもしれません。
新しい恋が始まったとき
欲しい服が手に入ったとき
尊敬している人の話を聞いたとき
この世の全てのことに興味が持てそうなくらい爽やかな気分で、ありとあらゆるものが美しく輝いて見えて…
きっとそれらを感じているのはこの世界の僕ではなくてスイッチの向こう側の僕なんですよ
だから、すぐに色褪せていく。
でも、そうはいってもこの世界の僕が何もしなかったら何も起きないわけで、
僕みたいな人間は外部のスイッチが押されるように少しでも何かしないといけないんですよね。
だから弟と別れたあと、昔好きだったバンドの曲を聴いてみたんですけど…
この曲やっぱりいいなって思って、どんよりとした天気も跳ね返すぐらいの活力がみなぎってきました。
そして、今日は「寝ないで頑張るぞ!」と思いコンビニで無糖のコーヒーと普段は絶対に飲まないルイボスティーを買いました。
完全にやる気MAXの僕と入れ替わってました。
生きることはこんなに自由で素晴らしいんだ!!
あ、ヤバい、なんか今叫びたい。
叫んだらヤバい人だけど叫びたい。
とか考えてる時点でヤバい人だけども。
もうウォークマンの音量とともに、
自分は何者でもないけど何者にでもなれるという自信が加速していきました。
家に返ってすぐルイボスティーを飲みました。
それは
本当に不味くて
今、今、ここにいる僕の酷く現実的で複雑な味でした。
でも…
健康にはいいそうですね。