◆Wii:『メトロイド アザーエム』
◆Wii:『メトロイド Other M』


小生が「ディスクシステムでハマったアクションゲームと言えば?」と聞かれれば、

『ゼルダの伝説』『悪魔城ドラキュラ』とともに真っ先に思い浮かぶのが『メトロイド』。

横スクロールアクションとシューティングに謎解き要素を加えた絶妙なゲームバランスや

当時は珍しかったSF調世界観に幼かった小生はあっという間に魅せられ、

あの広い惑星ゼーベスのマップをある程度覚えるくらいやり込みました。


その後も『スーパーメトロイド』をはじめほとんどのシリーズ作品を追いかけてきましたが、

『メトロイドプライム』などシリーズ自体が従来のスタイルから脱却することに力を入れ始め

アクションゲームだったはずがSTG・ピンボールになるなどの我が道っぷりについていけず、

次第にメトロイドというシリーズから離れていってしまいました。


そんななか、GBA『ゼロミッション』以来6年振りに復活した

待ちに待った横スクロールタイプの新作メトロイド『Other M』。

”最新技術を使ったファミコンゲーム”という原点回帰を思わせるコンセプトに加え、

任天堂とアクションゲームの製作には定評のあるTeam NINJAとのコラボ作品ということもあり

「久しぶりに昔ながらのメトロイドが帰ってくるのでは!?」と胸躍らせて待っていました。


今回はそんなメトロイドマニアな小生が『Other M』についてレビューしてみたいと思います!!



▼良くも悪くもメトロイドの戦闘を180°変えた新技「センスムーブ」


『Other M』のコンセプトは前述したとおり”最新技術を使ったファミコンゲーム”。

要するに「少ないボタンで直感的に多彩なアクションができる」ようデザインされているのですが、

自動でホーミングするビーム・Team NINJAらしい暴力的な演出の入る攻撃技オーバーブラストなど

とにかく攻防あわせて簡単操作で華麗な動きができるようになっています。


なかでも秀逸なのが十字ボタンだけで出せる回避技”センスムーブ”。

敵の攻撃を受ける直前に十字ボタンを押すと完全無敵のステップが出るというものですが、

この”直前”のタイミングがかなり長め・ボタン連打でも連続して出るのに加え

ムーブが成功すれば強力な”チャージビーム”が一発で使用可能となるため、

ピンチの状態でもボタン連打さえしていれば大概は乗り越えられるほど強力な技です。


これだけやってれば勝てるほど使い勝手のいい技がボタン一つで出る親切設計なうえ、

全体の難易度も激ムズアクションを多く生み出してきたTeam NINJAにしては易しめなので

『NINJA GAIDEN』などのイメージが強いゲーマーからは「ぬるい!」と言われているようですけど、

メインターゲットであるはずの小生のようなオールドゲーマーには嬉しい技だと感じましたね。

とても避けられそうにない攻撃をヒラリヒラリとかわすのはかなりの快感ですよ!!


ただセンスムーブがあまりにも強力すぎるせいか、

「戦闘中ずっと十字ボタン連打」というプレイスタイルになりやすいのに加え、

未チャージのノーマルビームが雑魚キャラ(それも小さい敵限定)くらいにしか通用しないため

基本的に攻撃するにもまずセンスムーブを狙うほうが結果的に効率がよくなってしまうなど、

最初からゲームとして「センスムーブありき」にデザインされているのは気になりました。


「撃ちまくる」のが当たり前だった従来のメトロイドとは違って

「避けまくる」ことが重視されるゲーム内容には、昔を知る人ほど違和感を感じると思います。



▼面白さ以上に”大人の事情”を強く感じてしまう「サーチングビュー」


そして『Other M』最大の売りにして最大の弱点が、

Wiiリモコンを縦持ち(画面に向ける)していつでも主観視点に切り替えられる”サーチングビュー”。

従来のメトロイドに主観視点メインな『プライム』のシステムを融合させたもので

アイテム探しに、謎解きに、敵キャラの弱点を突く攻撃にと大活躍する(はず)のシステムですが、

これがアクションシーンのテンポを大きく崩す要因になっていると感じます。


まずアイテム探し&謎解きについてですが、

本作には「主観視点にしないと見えないアイテム&仕掛け」がものすごく少なめ。

さらにサーチングビューモードになってもできるのは視点を動かす&ビームを撃つことだけで

謎自体も「抜け穴を探す」「壊せるものを探す」くらいのバリエーションしかないため、

普段はサーチングビューにする必要性を感じるときがほとんどありませんでした…。


なかでも最悪だと思ったのがプレイ中何度もあるサーチングビュー強制イベント。

とある場所まで行くといきなり主観視点に切り替わり”おかしなところ”を探すことになるのですが、

範囲が360°あるのに全くのノーヒントで探さないといけないという意地悪っぷり。

おまけにその”おかしなところ”もめちゃくちゃ小さいうえにポイントしても反応しないことが多いので、

発生するたび「またか…」とイライラするだけのイベントでしかありませんでしたね…。


そして一番の問題がサーチングビュー「必須」のボス戦。

本作では主観視点で弱点を狙い撃ちしなければ絶対に倒せないボスが大勢いるため

「ボスを弱らせ、隙を見せたらサーチングビューで攻撃する」のが基本攻略パターンとなりますが、

弱点を攻撃するには必ず「リモコンの持ち替え」という別の動作が必要になるにもかかわらず

ボスの隙はかなり短く持ち替えている間に回復してしまう程度の時間しかありません。


このためボスを攻略するにはアクションゲームの腕とともに、

「いかに素早くリモコンを持ち替えるか」という他のゲームでは全く必要ないスキルが求められます。

この動きを「一瞬の隙を突くリアルさ」と捉えられる方なら面白く感じられると思いますけど、

小生にはただ煩わしいだけで面白みはまったく感じられませんでしたね。


要はサーチングビュー自体がアイテム探索にしろボス戦にしろ必要性がないのに

ただ「プライムっぽくしたかった」ために入れた視点変更という操作を強いられる感じで、

「プライムならこの操作は必要なかった…」というムダ骨感がものすごく強いんです。

なんか「プライムっぽさを意地で入れた」大人の事情に無理矢理つきあわされている感じでした…。



▼内容よりも姿勢に問題を感じずにはいられない”子供っぽ過ぎる”ストーリー

※この項目には多少のネタバレが含まれています。読まれる際はご注意ください。



『Other M』で最もやり玉にあげられているのが、

主人公サムス・アランの”子供っぽ過ぎる言動”に代表されるストーリー。

サムスの生い立ち・バウンティハンターになるまでのいきさつや

元上官アダムら昔の仲間との関係を軸に進んでいくのですが、

確かにサムスの言動は宇宙を何度も救っている女性とは思えないほど子供っぽいものの

特別わがままやわけのわからないことを言っているわけでもなかったので、

小生的には「言われているほどひどくはないな」というのが正直な感想でした。


しかし、たった一つ「最悪の設定」をしてしまったことですべてが台無し。

『Other M』の時間系列は「スーパーメトロイドの後」となっているため

サムスは最初からグラップリングビーム・スーパーボムなどのアイテムを持った状態なのですが、

これらすべてのアイテムは冒頭アダムの「危ないから」という命令で使用することを禁じられてしまい

以降は「アダムからの使用許可」が出るまではほとんどのアイテムが使用不可となってしまいます。


この設定により『Other M』では今までのメトロイド作品に必ずあった

「自分の手でアイテムを探してサムスを強化する」という楽しみがほとんどゼロ。

実際探索して手に入るアイテムはエネルギータンク・ミサイルなど能力向上のもののみで

極論すれば「探さなくてもいいもの(クリアに関係ないもの)」しかないため、

メトロイド最大の楽しみが本作では”おまけ程度”のものになってしまいました。

このため『アザーエム』にはアイテム探索の楽しみはない、と言いきっていいと思います。


さらに言えば、このアダムの”無茶な命令”に対して

サムスは「信頼しているから」という個人的な理由だけで従うことになるのですが、

その理由は「2人は家族同然に育ち、過去に同じ部隊にいたから」ということだけ。

特にアダムとの関係については「絶対的な信頼をよせるようになったきっかけ」のような

わかりやすいエピソードは一つとしてないのに「袂をわかった理由」だけは何度も語られるので、

小生はプレイ中「サムスは騙されている!」と感じることもしばしばでした。


要するに『アザーエム』ではストーリーの都合上

プレイヤーにアイテム使用不可という”縛りプレイ”を強要するにもかかわらず、

全編を通じその理由である「サムスのバックボーン」についての説明があまりにも少なすぎるうえ、

内容的にもプレイヤーに苦労を強いるにはあまりにも弱すぎて理由にならないものばかり。

おまけにその設定のせいで”アイテム探索”がなくなりメトロイドらしさも希薄化しているなど、

ストーリー重視という”今までにない特徴”が完全に足枷になってしまっています。


ストーリーなど言いたいことだけを重視した結果肝心の”物語の背景”がおざなりになり、

シナリオの書き方を知らない”子供”が書いたような作品になってしまっている『Other M』。

元々メトロイドには「人情味あふれるストーリーはいらない」と言われていたのに

その声を押し切って出した「人間っぽいサムス」が売りのシナリオがこれだけ子供っぽくては…。

このままでは今後シナリオ重視のメトロイドを出すのは難しいと思いますね…。


▼「本当にメトロイドを知っているのか」と聞きたくなるほど無意味なザコ戦

「ザコを倒してアイテムで体力・ミサイル回復」


これはメトロイドをプレイしたことがある方なら一度は経験されたことだと思いますが、

『Other M』ではザコをはじめ、すべての敵キャラ通じて倒してもアイテムは出現しません。

その代わりミサイルは任意のタイミングでリモコンを立てAボタンを押し続ければ補充することができ、

体力はセーブポイントかピンチ時限定でミサイル補充と同じ操作をすれば回復するようになりました。


しかしこれらの回復動作には時間がかかり戦闘中につかうと大概ボコ殴りにされるうえ、

体力に至ってはピンチにならないと回復できないため使用できる機会はほとんどなし。

おまけに本作にはアイテム以外にも得点・経験値などの「敵を倒して得られるもの」は一切なく

セーブポイントと回復動作以外に体力・ミサイルを回復できる手段がないので、

ザコ敵と戦闘してもただ体力・ミサイルが減るだけで”戦うメリット”はひとつもありません。


このため本作はたまに現れる「敵を全滅させることで開く扉」の時だけ戦い、

ザコは基本的に完全無視したほうがいいというメトロイドシリーズとは思えない内容で、

センスムーブの強さと相まって”完全逃げゲーム”と化してしまっています。


これがスーパーマリオのような「敵を倒すことを目的としない」ゲームならいいんですけど、

メトロイドは今まで「敵との戦闘」が醍醐味のシリーズでしたからね…。

プレイしていて「これは戦う意味がない…」って気づいたときは驚き通り越して落胆しましたよ…。


そして「自力で回復できない」ことの弊害がもう一つ。

「回復できない=回復する必要がないくらい強化しなければいけない」ため、

ゲーム中はエネルギータンク・ミサイルなどの強化アイテムを否応なく探すことになります。

しかし前述のとおり手に入るのは本当に能力強化アイテムだけなので、

変わるのは数値だけと苦労の割に「強くなった!」と実感できることはほとんどありません。

楽しいはずのアイテム探索が、ただの作業になっていたのは本当に悲しかったですね…。



少ないボタンで多彩な操作というコンセプトは体現しているものの、

肝心のストーリー設定・戦闘システムなどあらゆる面で調整不足が目立つ『Other M』。

特にサーチングビューのような”売り”の要素がただの足枷にしかなっていなかったり

「普通の女性」であることを前面に出したストーリーが説明不足で体をなしていなかったりと、

これだけ意欲的な試みがことごとく悪い方向にいってしまった作品も珍しいと思います。


特に問題だと思うのは、作品自体に『メトロイド』である必然性がまったく感じられないこと。

正直アクションゲームとしてだけ見れば出来がいいほうのタイトルだと思うんですけど、

新しいこと(やりたいこと)を盛り込み過ぎて『メトロイド』の原型がなくなってしまっています。


ゲームに限らず作品のイメージというものは人の数だけあると思いますけど、

シリーズの冠を持つかぎりは「変えてはいけないもの」というのもあると思います。

なぜならユーザーが数あるゲームのなかから「シリーズもの」を購入するときは、

「そのシリーズならではの楽しみ」という過去の経験からくるイメージをもとに選んでいるからです。


しかし『Other M』はストーリー的にもシステム的にも作り手側の意思ばかりを尊重し、

”ご都合主義”という名の理不尽さばかりをユーザー側に押しつけてまとめたっぽい内容。

なかでもゲームシステムについては「プライム方式なら万事解決」と感じるものばかりで、

本当は『プライム4』として作りたかったのになんらかの理由で合意が得られず、

仕方なく無理矢理横スクロールアクションに仕立てたという感じがものすごくするんですよ…。


「日本ゲーム界は続編ばかりで新しいことに挑戦したタイトルが少ない」とよく言われますが、

『Other M』は新しい試みを取り入れたばかりに「メトロイドらしさ」を失ったように思います。

20年以上も続いているシリーズであっても同じことを続けていれば未来はない、

かといって新しい試みもシリーズの「らしさ」を活かすものでなければ意味がない…。

続編ものだけが持つジレンマを、本作は身をもって教えれくれたのかもしれませんね。


次の横スクロールメトロイドがあと何年後になるかわかりませんが、

それでも小生はまた発売を楽しみにして追い続けていこうと思います。

次こそはメトロイドらしいメトロイドでありますように!!



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