施設の話。俺の勝手な想像でできてます。








僕の母さんは、毎日知らない男の人を連れて来ては
僕を残してどこかへ行っちゃいます。
男の人は毎日違う人です。
僕は一人部屋の中で外を眺めてます。
僕の家の窓からは、「がっこう」という建物が見えます。
そこがどういう場所なのか知らないけれど
なんだか楽しそうな場所でした。
僕はずっとその建物を眺めては、外の世界に憧れました。



ある日母さんは僕にぼうりょくをふるいました。
いたくていたくて泣きました。
母さんも泣いていました。
母さんもいたかったの?





「ねぇ、どこに行くの?」
母さんは黙って僕の顔見て、泣きました。
どこか痛いの?
母さんは首を横に振った。
ただ一言
「ごめんね」。



見知らない建物に来た。
母さんは僕を置いて消えてしまった。
建物には同じ歳くらいの子がたくさんいた。
あぁ、そうなんだ。
そこでやっと解ったんだ。
母さんは
僕を…俺を
棄てたってことを



「根山くん、みんなと遊ばないの?」
施設の人が俺の傍に来た。
お願いだから、来ないで。
施設の人は無言で立ち去っていった。
そう、これでいいんだ。これで…

『ねぇ、遊ばない?』

目の前に知らないやつが来た。
顔は髪の毛に隠れて見えない。確認できるのは、ずっと笑ってる口だけだ。
「お前、何笑ってんだ?」
そいつはキョトンとした…気がした。
「笑ってないと、痛いから。」
その時は意味がわからなかった。


「根山くん、銅杉くんとなに話たの?」
別に。とあしらった。
「…銅杉くんもね、根山くんみたいに、ここに預けられた子なのよ。」
だからなんだよ。と思った。施設の人は、ただ淡々と話続けた。
「銅杉くん、いつも笑ってるでしょ?あれはね、お母さんに喜んでもらうためなの。」
もう親なんていないじゃん。
「…銅杉くん、お母さんに暴力をふるわれてたの。だから、ああして打たれないように、笑ってるのよ。」




「なぁ。」
銅杉は一人部屋の隅で絵を描いていた。
「なぁに?」
その手を止めてこちらに顔を向けた。やっぱり、笑ってた。
「あのさ…あ…あっちで…遊ば…ないか?」
「…いいよっなにするの?」
今までみたことない満面の笑みだった。
「お前のやりたい事でいい。」
「じゃあサッカーしようよっ。あと僕のことは、小太郎って呼んでね」
「…いいぜ。俺の事は、樹波って呼んでくれ。」



「あの二人、いきなり仲良くなりましたね。」
「お互い、似た状況にいたから、なにかと気が合うんじゃないかしらね。」
「あのまま、私たちにも心を開いてくれるといいですね。」




「そらっいったぞ!」
「えいっ…っとっと…うわぁっ」
「なにからぶってんだよー」
あぁ、久々だ。
こんなに楽しいだなんて思えたの。
「…ありがとう。」
「え?なにか言った?」
「別に。ほらもう一度いくぞっ」


母さん、俺を棄てた母さん。
今俺は、やっと、夢が叶ったよ。
もう、窓の外の世界なんかじゃないんだ。
母さん、俺はね
俺は…-



end