「・・・・・」
「あ?どーした坊主?そんな苦虫噛み潰したような顔して。」
無理もないさ。
だって・・・
「・・・汚い。」
「あ?・・・・・」
男は車内を見渡し、そして目線を僕に戻した。
「その・・・・何だ・・・・。あっ!坊主!お前の名前聞いてなかったな!」
「・・・話そらした。」
「うぐっ!・・・まっ・・・まぁそのうち・・・な。で、名前は?」
男はしどろもどろしながら話を進めた。
「・・・原島鴇。・・・『おじさん』は?」
「なっ・・!おっ・・・おじさん・・・っ!」
少しショックだったみたいだ。
「俺はなぁ・・・コレでも25だっ!呼ぶなら「汐鵜」って呼べ!」
「しお・・・う?」
「そーだ。」
汐鵜はニッと笑った。
それから数時間。汐鵜と色々な事を話した。
それはありふれた会話で
好きな食べ物の事や番組、家族の事・・・。
それは今までに感じた事のなかった「安堵感」。
「・・・なぁ鴇坊・・・って、ありゃ?・・・寝ちまったか。」
僕はいつの間にか、ときたま揺れる車内の心地よさに、眠ってしまっていた。
「ふっ・・・寝顔はやっぱ、まだまだガキだな。」
そう言って、腰に巻いていたジャケットをかけた。
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「・・・-い、おい。」
「・・・んっ・・・ん?」
目を開けると、目の前には汐鵜の顔があった。
「うわあっ!」
「うおっ!?・・・いきなり大きな声だすなよ・・・。」
2人とも驚いた。
けど一番ビックリしたのは汐鵜だろう。
後ろにのけぞった。
「さっ、ついたぞ。」
「え?」
トラックから降ろされ、辺りを見回した。
その景色は見たこともない、初めて見る景色だった。
「ここは・・・?」
ふっと、目の前に一軒の家が目に止った。
「ここか?ここはなぁ・・・俺ん家だ。」
「・・・えぇ~・・・。」
「っ!なんだよそのリアクションはよぉ!」
見るからにおばけとかでそうなぐらいの、古い家だった。
「文句言うなら、お前は車ん中で過ごしてもらうぞ。」
「!それはヤダ!」
あのごちゃごちゃとしたとこを想像するだけで・・・・いやだった。
「よし!ならいくぞ!」
汐鵜は笑って僕の手をひいた。
僕はその時まだ知らなかった。
汐鵜のその笑顔の「理由」を・・・-。
第3話に続く。