機能不全家族に育った人が、異常な環境に運良く気づいて離れ、回復の道を歩むには、自分の無意識に植え付けられた、もはや自動運転になってしまっている、たくさんの異常な思い込みや、制限、自己否定感、無価値観、そして物事の解釈の仕方、認知の歪みとひとつずつ向き合うことが必要不可欠である。
それを発見していく作業は、とても大変である。無数にある、その足枷達に気づくには、自分の心の中に、いつも冷静で、客観的に物事を見通すことが出来る「バードアイ」の視点が必要になる。
感情が、誤った信念を通して揺れ動き、暴れまくる時、人は冷静ではいられない。特に、幼少期から自己を健全に形成できなかった人にとっては、自己を守る術も、感情との正しい付き合い方も知らない為、翻弄されるだけになりがちだからである。
訪れるたくさんの理不尽かつ不愉快な、心身の痛みを伴う出来事は、経験する度にまた、たくさんの誤った信念を作り出す。それは、もうこれ以上、自分が傷つかないようにするための、心の防衛本能ともいえる。
過酷すぎる環境下で、毎回、その辛さをダイレクトにそのまま味わっていては、その環境で生きていかれない。だから、心を守るために、苦しく、悲しい心の痛みを、その時感じた感情を、心の奥深くに封印する。
全ては生き延びるための、涙ぐましい努力の結果なのであるが、回復の道に入り、その固く封印された心の部屋を浄化した後は、(回復ステップ①②)親からダウンロードしてしまった、無意識の沢山の信念に向き合うことになる。
親や先生など周りから教えられたこと、メディアを通して植え付けられた信念、子どもの頃、世間の常識として定着していた信念なども含めて、総点検する必要がある、ということ。
そこに、自分を苦しめている元凶が存在するからである。そこに気づく視点が生まれ、自分の心をモニタニングして、いろいろな違和感を見逃さずに気づいて、緩め、解放していく時、そこまできたあなたは、親の、無意識に発せられるメッセージにも気づくようになる。
自分へ発せられていた、親からの無意識のメッセージ。
・親が子を過剰に心配する→「あなたは信頼できない」「失敗する」
・親が子の思いや願いを先回りしてやる→「私の言うことを聞き、私の思う通りでいなさい」=支配
・なんでも親に聞きなさい、頼りなさい→「私の存在が一番上。何でも知っている」=子の自立を阻止。子を骨抜きにし、子の人格そのものを尊重する姿勢の欠落
・子の成長、選択、経験を見守らず、常に監視する→子にプレッシャーをかけ続け、失敗や傷つくことも含めた様々な経験を奪い、支配すること
…などなど。これらのメッセージは、親と接した時に気づくだろう。ただ、気づけるようになってくると、親と一緒に時を過ごすことは、もはや苦痛でしかなくなる。
親は、自分が無意識にどのようなメッセージを発しているかなど、自分を振り返り、内省したりはしない。そもそも内省できる親ならば、猛毒親には変貌しない。
親は、自分もその親から、ずっとそのような無意識のメッセージを、幼少期から、その親からの言動を通して受け取ってきた。それが元で、自己愛も、自己肯定感も持てずに、沢山の制限を抱えたまま、大人になっている。
親から健全な愛を受け取れなかった、悲しい思いをした、という想いは自覚しているが、自分が親になった時、親から受け継いだ「毒」を自分の子に、同じように盛っている、ということは、認識できていない。
自分の親のようにはならない。子を幸せにできる親になる、と決意していた母は、皮肉にも、その決意がさらに、子を苦しめる結果になったことを、夢にも思わない。
強固になってしまった、認知の歪みや思い込みの強さは、年月とともに、ますます偏狭に強固に強化されていく、という事実も知らないからだ。
最初は被害者だった母が、心の仕組みを学べず、そして自分の人生に疑問を抱かずに、自分を救おうと方向転換することもしなかった為に、代々受け継がれてきた、その家系の「毒」を、子にそのまま渡し、もはや自分が、加害者に変貌しているとは知る由もない。
もし、あなたに子がいるならば、一度、自分に問いかけてみてほしい。
「親である私は、わが子にどんな、心の無意識のメッセージを伝えているか?」と。
親自身が、子がいてもいなくても幸せで、健全な自己肯定感を持ち、自立した大人の人生を楽しみ、歩めていなければ、子を幸せにすることはできない。