現代版シンデレラ(79)の続き。


 エピローグ


 その日は雲ひとつない青空が広がっていました。


 風がとても気持ちよく近くにある海の香りを運んできます。


 遠くからかすかに聞こえる汽笛の音やユリカモメの鳴き声も このほとんど人が訪れない共同墓地では少し大きく響きわたります。


 シンデレラは亡くなった母ソニアの墓の前に立っていました。


 「お母様・・・遅くなりました。でも、ようやく会うことができた」


 ソニアの墓の前にはきれいな花が備えられており、黄色い蝶が花の蜜を吸いによってきます。


 シンデレラは祈りました。


 今まで色々なことがありました。どれもこれもシンデレラにとっては嘘みたいな出来事です。


 いつも自分は義理の母や姉に虐められて不幸だとおもっていたあの日々。


 突然、自分の身に降りかかった恐怖。


 その窮地を救ってくれ、シンデレラに本当の真実を教えてくれた探偵さん。


 自分が愛されて産まれてきたことを知り幼かったシンデレラは今では素敵な女性へとなりつつあります。


 「やはり、ここにいたか」


 シンデレラが振り返ると花を手に持った探偵さんがいました。


 「探偵さん・・・」


 探偵さんはソニアの墓の前で一礼し花を置きました。


 「結局・・・」


 シンデレラはぽつりと呟きました。その声はどこか物寂しげです。


 「結局・・・ずっと守られていたんですね・・・」


 探偵さんは優しく微笑し、シンデレラの髪の毛をなでました。


 「私って駄目ですよね・・・。こんなにも守られて生きていたことにぜんぜん気付かなくて」


 「ああ、まったくもって駄目だ」


 「え?」


 探偵さんがはっきりと肯定したのでシンデレラは驚きました。


 「そ、そうですよね・・・」


 「シンデレラ、あの時のことを覚えていないのか?」


 「え?あの時のこと?」


 「そうだ。君はずっと守られてきた。確かに、今までの出来事を振り返れば、私の力や、王子の力、それにソニアさんの力が大きかったかもしれない。でも・・・あの時の君は誰の力も借りなかった」


 「あの時って・・・もしかして・・・。でも、私、ほとんど覚えていないんです」


 「そうか、それは残念。あの時の君は思わず私が惚れそうなほど・・・」


 シンデレラはまた驚き、悲鳴にも似た声で叫びました。


 現代版シンデレラ(80)終わり。いよいよエピローグに入りました。もう少しで完結しますので、もうしばらくお付き合いください。