現代版シンデレラ(77)の続き。
お金があれば幸せになれる。グレッグはずっとそう思って生きてきました。
お金があれば誰も苦しんだりしない。お金があれば笑顔でいられる。
お金があればソニアの病気も絶対に良くなる。
それからのグレッグはほとんど病院にも顔を出さずにより一層働きました。
医者が要求した法外の薬代を払うためには 今までの稼ぎではまったく足りません。
グレッグは寝ることさえ惜しんで仕事に打ち込みました。
しかし それでも足りません。
グレッグがどれだけ働こうが ソニアに使う薬代には届きません。
グレッグは家を担保にして薬代に当てることにしました。
ですが まだ足りません。
さらにグレッグは身の回りの品々を売りますがやはり不足しています。
グレッグは身内に借金をし始めました。
けれども ソニアの薬代をまかなうことはできませんでした。
しかも 肝心のソニアの病気もほとんど改善しませんでした。
日を見るごとに顔色が悪くなっているのを必死に隠そうと振るまい 笑顔を浮かべようとするソニアを見てグレッグは自分の力のなさを呪いました。
そして 医者から二回目の死刑判決が下されました。ありとあらゆる方法を試したが無理だった。グレッグはもうこんな医者には頼みませんでした。彼は別の国から最優秀の医者を探しました。しかし誰もかれもがソニアは助からないといいました。
ある医者などは自分の薬を売りつけるためにグレッグを欺きました。胡散臭いとわかっていても、グレッグはその医者にお金を支払いました。ですが、結局、ソニアは良くなりませんでした。
売るものがなくなり家も土地も取られ借金もしてグレッグのお金はとうとう底をつきかけていました。
ですが、グレッグにはどうしてもお金が必要でした。その頃にはすでに会社で絶対の信頼を受けていたグレッグは今度は会社のお金を横領し始めます。悪いことだとわかっていましたがそれでも妻を治すためなら仕方がない。グレッグはソニアを治すためならどんなことだってやり遂げる覚悟をもっていました。
会社の横領がばれそうになったとき グレッグは自分が捕まるわけには行かず偽の証拠をでっちあげ同僚を犯人と仕立て上げました。その後も同じようなやり口でお金を横領していきました。
さらにグレッグはお金を儲けるためなら、あくくどい政治家にも賄賂を贈り、支援者の振りをつつ、お金を手に入れてきます。世間からどう恐れられても、グレッグはまったく気にしませんでした。いつしか、世間はグレッグを金の亡者と影で罵るようになりました。そんな陰口を知ってもグレッグは金を集めるために利用しました。
医者が駄目とわかれば今度は怪しげな呪いし病気に効く石など 現代で科学では解明されない品物まで買い集めます。そして自分でも魔術や秘術といった類の勉強をし始めます。
西洋の隠避学、東洋の神秘学、漢方薬、小さな島の魔術儀式に至るまでありとあらゆる方法を行います。
それでも駄目なら今度は身体に良く効くといわれる食べ物を集め始めました。
グレッグは決して、自分が美食家であったわけではありません。美食家の振りをして世界中の食べ物を集め、ソニアの病気を治そうとしていたのです。ですが、それも思ったほどの効果はありません。
病状が悪化するソニアを見て グレッグは何度も何度も自分の運命を呪いました。
そして、とうとう精魂果てて力つきてしまいました。
始めからわかっていたのです。治るはずがないと。それでもグレッグは認めたくありませんでした。だからこそなんでもやってきました。ですが、もう限界をとうに超えていました。それでも諦めずに粘って、さらに粘ってここまで来たのです。
そんな思いの中、グレッグはある島のゾンビについて書かれている本を読み、突然、悪魔の声が頭に響いたのです。
人間の身体を仮死状態にさせるフグの毒、これを使えば・・・。
グレッグは最初、そんな思いを否定しました。しかし、否定すればするほどその思いは強くなっていきました。もう、病魔とは闘いたくない。どれだけ頑張ってもソニアは助からない。なら、一層、私の手で・・・。
そして・・・その思いは静かなる時を得て実行に移されました。
ソニアの葬式の時 グレッグはソニアの墓の前で自分が引き返せないことをしてしまったことを笑いました。グレッグには笑うしかなかったのです。幼いシンデレラにはグレッグの笑いの意味はわかりませんでした。
現代版シンデレラ78終わり。79に続きます。