新年明けましておめでとうございます。


 まず始めに作者自身の体調とパソコンの不具合が重なって挨拶が遅れたことを深くお詫びするとともに、今年最後に書き終える予定だった、現代版シンデレラを書いていきます。


 粗筋 探偵が依頼を受けた本当の理由はシンデレラの母親ソニアのためでした。そして、ことの真相を聞かされたグレッグは忘れようとしていたあの日の出来事を鮮明に思い出すのです。



 それは寒い夜の出来事でした。


 窓の外では白い雪が街中の屋根を覆い 月の光に反射してキラキラと輝いています。


 街を行き交う人々は コートの両端を強く握りしめ 帽子を深く被っていました。


 そんな様子を窓から眺めながら 先生が来るのをグレッグは待っていました。


 病院の待合室は少し冷えていました。


 「お待たせしました」


 「先生、お話とは?」


 先生はグレッグの顔を見て一礼してから 個室へと招き入れます。


 「ここではなんなので・・・中にどうぞ」


 個室に通されたグレッグは勧められる側に椅子に座ります。


 「お話とは・・・その・・・、あのですね・・・ソニアさんのことですが・・・」


 「ソニアが何か?」


 次の瞬間 グレッグは自分自身の身体が斧で両断されたような強い衝撃を受けました。


 「ソニアさんの病気は・・・もう・・・治らないんですよ」


 「・・・」


 それはあまりにも突然の出来事でした。


 信じていたものが一瞬にして粉々になり何も残らない。信じていた医者という人間から完全なる死刑宣告が下されたのです。


 「嘘、嘘ですよね・・・。先生も人が悪い。私はあなたをこの国で最高の医者だと信じて、妻を、ソニアを預けたんです。治せない。冗談にもなりませんよ」


 「・・・無理して子供を産んでしまった彼女の身体は、本人が思っているよりずっと深刻なんです。今の彼女には、何時間もかけた手術は命に関わります。いや、正直言って無理でしょう・・・」


 「そんな・・・」


 すでに諦めている医者にグレッグは詰めより必死に叫びます。


 「あなたの仕事は病気の患者を治すことだ。そのために私は高い入院費を何年も払ってきた。このお金を稼ぐために、私は必死の想いで働いた。それで足りなければもっと出す覚悟でいた。私が一文無しになってもいい。ソニアの病気さえ治るなら、三人で、いくらでもやり直すことができる。そう信じていたからこそ、今まで私は頑張ってきた。先生、私から希望を奪わないでください! もう一度、もう一度助かる方法を考えて見てください!」


 「お気持ちはわかりますが・・・」


 「先生、どうかお願いします!」


 「だから・・・」


 それでもグレッグは医者に頭を下げ続けました。何度も何度も断られてもグレッグは決して諦めませんでした。


 「先生! ソニアを助けてください!」


 一歩も譲ろうとしないグレッグの必死な行動を見て 医者は心を打たれ考え直します。


  「わかりました・・・そこまでおっしゃるなら、未認可である抗生物質など、少しでも病状が改善するありとあらゆる方法を試してみましょう。保険が利かない分、費用はかなりの高額になりますし、絶対に治るという保障はありません。グレッグさん、それでもあなたがいいというなら・・・」


 「お願いします。どんな可能性であろうと・・・助かる見込みがほんのわずかでも、助けることができるのなら・・・わたしは絶対に・・・絶対に諦めたくありません!」



 グレッグが思い出したあの日の出来事・・・それはグレッグの妻に襲い掛かった壮絶なる病魔との闘いでした。


 現代版シンデレラ77終わり。78へと続きます。