映画『ピュ~ぴる』感想
先週土日に色々してたので、書くことが腐るほどあります。大前研一の文字おこしサイトも動いてないようなので、文字おこしというかレジュメにまとめようかと思うんですが、いかんせん動画が長いからやり始めるとたぶん56時間はがっつり掛かるんで、ためらってます。時間というよりかは気持ちの問題かな。リクエストありゃ頑張りますけどね。さて。

映画『ピュ~ぴる』を観ました。ピュ~ぴるってのは今、世界に認められつつある日本の現代美術作家の名前です。そのドキュメンタリー。主に作品の制作を追っている訳なのですが、あーすごいねぇ、綺麗だね、面白いなぁ、とかそう単純な話じゃない。それは彼が、性同一性障害者であるってとこから始まる。

東京都出身、男性として生を享けたピュ~ぴるは十代の頃から奇矯な女装を始めて、自作のコスチュームを身につけてクラブ通いを始め、ゲイとして生きる。ある男性との交際を通じてより美しく、より女性らしくなりたいと感じた彼は全身の永久脱毛、ホルモン注射、整形手術、度重なる肉体改造を行う。同時に彼の奇天烈なコスチューム・ライフスタイルは“おかしなゲイ”として雑誌にも取り上げられていた。写真家吉永マサユキは取材を通じてピュ~ぴるに出会い、衣裳のデザインに芸術性を見出し、現代芸術家としての生き方を奨める。三年半を費やし制作された9体の立体作品「PLANETARIA」で芸術家としての一歩を踏み出す。
PLANETARIA / 水星(2001)

PLANETARIA / 地球(2000

PLANETARIA / 火星(2002)

PLANETARIA / 土星(2002)

PLANETARIA / 金星(2001)

ちなみにこれ全部手編みです
PLANETARIAは評判となり、確かな地歩を築くピュ~ぴる。その一方でホルモン剤の副作用で抑鬱を繰り返しながら、女性へと近づいてゆく体。肌目は細かく、胸は膨らむ。ピュ~ぴるは苦悩する。男として生まれ、女として生きることの矛盾。ピュ~ぴるは決意する。ただ愛して欲しかった。より大きな愛が欲しくて。その実感を得るために。去勢手術を受けた。性別適合手術を行った。ピュ~ぴるはその迷い・苦悩・葛藤をぶつけるように制作に打ち込む。男性から女性に、怪物から真の自分へ変貌をとげる軌跡をセルフ・ポートレートとして発表した。
Selfportrait(2008)






彼の作品は、美しいけれど、哀しい。それは観る人を感動させようとか、悲しませようとか、そんな計算で作られた作品ではなく、ありのままの自分、その葛藤を素直に表現できているからなのだろう。自己完結した「作品」をつくることを目的とせず、自分を表現する道具として、たまたま芸術を選んだ、選ばずにいられなかったところに、仕組まれていない、自然に溢れ出す情動が天然石のような自然さで存在している。
例えばそれは、西村賢太を評した石原慎太郎の『手先の器用さを超えた、人間のある“ジュニュイン”なるもの』という言葉に合致しているのかもしれない。また、ある画家は『きれいにまとめようとしてはいけない。美しくあろうとしてはいけない。自分の中にある対立をそのまま表現することこそが、芸術の芸術たる所以である』みたいなことを本に書いていたが、芸大にも美大にも行かず誰からも教えられた訳でもないピュ~ぴるが、それを体現していること、それ自体が彼の凄み、ある種の天才性を如実に表している。
ピュ~ぴるの生き方はまた、三島由紀夫のそれに似ている。虚弱な体に生まれついた三島が男性の男性らしい強靭さに惹きつけられ、ゲイとして生き、また自らも剣道やボディー・ビルディングを通じて肉体を作り替え、そして自衛隊へのアジテーションによってその“マッチョな”美に殉じたように、ピュ~ぴるは女性の美しさに惹かれ、肉体を改変することで“美”と同一化した。両極ではありながら、その美への憧憬には親和するものがある。
この映画はピュ~ぴるの半生を、手ブレしまくるホームビデオで膨大に録り溜めた映像を主に構成して作られている。映画の完成度を高いとは言わない。けれど被写体と信じられない近距離で接し、ともに悩み苦しんできた過程を伝えることは、このピュ~ぴるという奇人の美しさを一面的に伝える以上の大きな意義がある。それは観客にも大いに感じられたに違いない。
もし時間があれば鑑賞してみてください。きっと皮膚感覚で伝わる何かがあると思いますよ。
「GRAND MOTHER」(2008年)

星つけようかと思ったけど無粋なのでやめます
参考:
Pyuupiru Official Web Sitehttp://www.pyuupiru.com/
Pyuupiru 2001-2008 Official Web Sitehttp://www.p2001.com/index.html
ユーロスペースhttp://www.eurospace.co.jp/
Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%A5%E3%80%9C%E3%81%B4%E3%82%8B

映画『ピュ~ぴる』を観ました。ピュ~ぴるってのは今、世界に認められつつある日本の現代美術作家の名前です。そのドキュメンタリー。主に作品の制作を追っている訳なのですが、あーすごいねぇ、綺麗だね、面白いなぁ、とかそう単純な話じゃない。それは彼が、性同一性障害者であるってとこから始まる。

東京都出身、男性として生を享けたピュ~ぴるは十代の頃から奇矯な女装を始めて、自作のコスチュームを身につけてクラブ通いを始め、ゲイとして生きる。ある男性との交際を通じてより美しく、より女性らしくなりたいと感じた彼は全身の永久脱毛、ホルモン注射、整形手術、度重なる肉体改造を行う。同時に彼の奇天烈なコスチューム・ライフスタイルは“おかしなゲイ”として雑誌にも取り上げられていた。写真家吉永マサユキは取材を通じてピュ~ぴるに出会い、衣裳のデザインに芸術性を見出し、現代芸術家としての生き方を奨める。三年半を費やし制作された9体の立体作品「PLANETARIA」で芸術家としての一歩を踏み出す。
PLANETARIA / 水星(2001)

PLANETARIA / 地球(2000

PLANETARIA / 火星(2002)

PLANETARIA / 土星(2002)

PLANETARIA / 金星(2001)

ちなみにこれ全部手編みです
PLANETARIAは評判となり、確かな地歩を築くピュ~ぴる。その一方でホルモン剤の副作用で抑鬱を繰り返しながら、女性へと近づいてゆく体。肌目は細かく、胸は膨らむ。ピュ~ぴるは苦悩する。男として生まれ、女として生きることの矛盾。ピュ~ぴるは決意する。ただ愛して欲しかった。より大きな愛が欲しくて。その実感を得るために。去勢手術を受けた。性別適合手術を行った。ピュ~ぴるはその迷い・苦悩・葛藤をぶつけるように制作に打ち込む。男性から女性に、怪物から真の自分へ変貌をとげる軌跡をセルフ・ポートレートとして発表した。
Selfportrait(2008)






彼の作品は、美しいけれど、哀しい。それは観る人を感動させようとか、悲しませようとか、そんな計算で作られた作品ではなく、ありのままの自分、その葛藤を素直に表現できているからなのだろう。自己完結した「作品」をつくることを目的とせず、自分を表現する道具として、たまたま芸術を選んだ、選ばずにいられなかったところに、仕組まれていない、自然に溢れ出す情動が天然石のような自然さで存在している。
例えばそれは、西村賢太を評した石原慎太郎の『手先の器用さを超えた、人間のある“ジュニュイン”なるもの』という言葉に合致しているのかもしれない。また、ある画家は『きれいにまとめようとしてはいけない。美しくあろうとしてはいけない。自分の中にある対立をそのまま表現することこそが、芸術の芸術たる所以である』みたいなことを本に書いていたが、芸大にも美大にも行かず誰からも教えられた訳でもないピュ~ぴるが、それを体現していること、それ自体が彼の凄み、ある種の天才性を如実に表している。
ピュ~ぴるの生き方はまた、三島由紀夫のそれに似ている。虚弱な体に生まれついた三島が男性の男性らしい強靭さに惹きつけられ、ゲイとして生き、また自らも剣道やボディー・ビルディングを通じて肉体を作り替え、そして自衛隊へのアジテーションによってその“マッチョな”美に殉じたように、ピュ~ぴるは女性の美しさに惹かれ、肉体を改変することで“美”と同一化した。両極ではありながら、その美への憧憬には親和するものがある。
この映画はピュ~ぴるの半生を、手ブレしまくるホームビデオで膨大に録り溜めた映像を主に構成して作られている。映画の完成度を高いとは言わない。けれど被写体と信じられない近距離で接し、ともに悩み苦しんできた過程を伝えることは、このピュ~ぴるという奇人の美しさを一面的に伝える以上の大きな意義がある。それは観客にも大いに感じられたに違いない。
もし時間があれば鑑賞してみてください。きっと皮膚感覚で伝わる何かがあると思いますよ。
「GRAND MOTHER」(2008年)

星つけようかと思ったけど無粋なのでやめます
参考:
Pyuupiru Official Web Sitehttp://www.pyuupiru.com/
Pyuupiru 2001-2008 Official Web Sitehttp://www.p2001.com/index.html
ユーロスペースhttp://www.eurospace.co.jp/
Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%A5%E3%80%9C%E3%81%B4%E3%82%8B