Too late To die
世の中下らないことばかりだ。予測通りになったことなんて一度もない。下らない風に惑わされ、下らない波に翻弄されて、下らない結論が導かれる。自分の小賢しい、その場限りの決断のせいで、暴風雨に曝されながら、それでもなんとか舵取りしないといけない。鮪がいれば鮪を釣り、カジキがいればカジキを釣り、何がいるのか分からなければ取り敢えず釣り糸を垂れる。船さえ沈まなければ、いずれ嵐は抜け出すだろう。その場限りの決断でもしないよりはマシだ。あるホステスが言った。結婚なんて、タイミングと縁なのだと。自分で決められることが限られているのなら、時間に身を任せることもいいだろう。この下らない時代に、それでも下らない決断を下すこと、それ自体に意味がある。下らない銀座というきらびやかな街で、下らない大人たちが下らない夢を散らす。下らない空には、今日も下らない星が瞬いて、下らない僕を見守っている。夢のなかで歌い上げよう。暴風雨はいずれ平穏な波に破られる。信じられることなど何も無い。予言や宗教や運命論は僕を救わない。一番下らない自分こそが、唯一この下らぬ現実世界を打破する鍵なのだ。いつかこの下らぬ現実を絞め殺すその日まで、僕は釣り糸を垂れよう。波と戯れよう。波の下に眠る、安らかな魂にそう誓ったのだ。僕は今日も生きている。