観たぜ、アリエッティ | 蒼龍の棲む洞穴

観たぜ、アリエッティ



 観ましたよ、アリエッティ。これから感想を(ネタバレしない範囲で)書くんですが、その前にひとつ大切なことを。宮崎駿監督作品じゃないです、この映画。知ってました?監督は米林宏昌とかいう人です。誰だ、おまえ。CMに一切書いてなかったぞ、そんなこと。ジブリで「~の~」ときたらふつう宮崎作品と思うだろうが…。開始10秒で観る気を失いそうになりました。(企画・脚本に名前があるけど、別に脚本家がついてますしね…)

ゲド戦記が吾郎のせいでこけたから、敢えてCMで書かなかったんじゃないの?とか邪推してしまう。ポンポコとか海がきこえるとかなら、絵が違うし世界観も違うからなんとなく分かる。でもアリエッティは絵もストーリーも駿っぽいから気付かないよ。なんだか釈然としませんね。

前置きが長くなるんですが、感想書く前に自分のことも書いとこう。僕がジブリで一番好きなのはハウル。そん次は豚です。あとは宅急便とか海とか。ラピュタとかもののけ姫はあんまり好きじゃない、ひねくれ者です。その上で読んで頂ければよいかと。



『借り暮らしのアリエッティ』は、宮崎作品じゃないという前提にたてば悪くない、と思います。絵もキャラクターもジブリっぽいし、ストーリーも分かりやすい。小人の苦悩と、人間との交流ってテーマも良い。個人的にアリエッティのデザインは今までのジブリ作品の中で最もかわいいと思う。

ただし。あちこちのサイトのレビューで酷評されていることから分かるように、この作品にはいくつか欠点があります。
  ①主題歌がジブリっぽくない
  ②声優が微妙(ハウルと較べても、そして特に大竹しのぶ)
  ③会話が少なく淡々と進む
  ④キャラがクールで感情表現が薄い
  ⑤山場がない

正直これだけならまだまだ観れるレベルなんです。一番耐えられなかったのが、
  ⑥脚本がヒドイ
ってことです。会話になってないシーンがあったり、言葉遣いが変だったり、急に今までと違う人物のように話しだしたり。ストーリー的なことを言えば、強引に展開した挙句に「え、そこで終わんの?」ってところで終わりますし。(時間が短いからでしょうか?)

人間関係が薄い(ディズニー臭い)、あんまり子供向けじゃない(シビアな世界観)、使用人が不愉快、肩透かし…。結局誰も幸せにならないし、謎は残ったままです。重要ではない論理的な矛盾も加えると、結構不満があります。総じて粗い、甘い印象が残ったかな…。話、キャラクター、世界観はとても面白いのに、それをうまく表現しきれてないと感じました。

作品としての軸、というか伝えたいことがブレてることも要因の一つだと思います。なんとなくは分かるけれど、訴えかけるほどじゃない。メッセージをもっと強く打ち出せば、細部に捉われず楽しんで観れたんじゃないか。あんなに登場人物が笑わないジブリというのも珍しい、というのも無関係じゃない気がしています。



…とまぁ色々書いてきましたけど、結局、観る人次第でしょうね。世界観的には宮崎作品の正統を引き継いでいるので、楽しめる人は楽しめるみたいです。一緒に行った友人は「モヤモヤは残るけれど面白かった」と言っておりました。あとは頻りに惜しい、惜しいと。宮崎駿と較べるからイマイチ微妙なのであって、これを単体で見れば充分に楽しめるのだと思う。

そうそう。今回のヒロイン、アリエッティについてなんですが、豚とかもののけとかハウルのヒロインとは違い、結構クールです。物足りないなぁと僕は思ったんですが、ナウシカとかラピュタ・宅急便好きな人ならむしろ良いかもしれません。初期作品に近い女の子だったと思います。

あとは…宮崎駿じゃないんで、飯を美味そうに食ったり、大口開けて笑うようなシーンはないですね。当然と言えば当然ですが。駿さんがこれを皮切りに引退するという噂もあるらしいんですが、作画の本気度・「の」付きタイトルから言ってもポスト宮崎は米崎宏昌なんですかね。


最後にオブラートを噛み破っとこう。もし次も彼が監督をするのであれば、僕はもう二度とジブリを映画館で観ないです。この映画の良いところはジブリらしさ、世界観の面白さ、なんですがそれは宮崎駿のおかげだったんじゃないかな。宮崎映画は脚本も全部本人がやってますもんね。構想だけ練って新監督に渡した気がします。

☆☆
お薦めはしません




掲示板の住人が呟いてたやつ。確かにこっちの方が面白そうかも



床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)/メアリー ノートン

原作です