コード・ギアス
実に文化的な生活をしている。私のことだ。面白いアニメを観たのだ。それもロボットアニメという枠組みである。「コードギアス」をご存知の方もそうでない方もいらっしゃることとは思うが、便宜上、知らぬものととして話を進めさせていただきたい。横着は私の性である。先に云っておくが、私の身に起きている筈の人生の一大転機について読者の方に心配される謂れはないし、この際忘れていただきたい。
感想を端的に申し上げるとすれば、面白いという一言に尽きるようだ。しかしそれではこのWeblogなるものを仮初めにも始めた手前、あまりにも体裁が悪かろうから、もう少しばかり丁寧に説明した方が良いように思う。
ギアスの力を手に入れたルルーシュ・ランペルージは日本を征服している神聖ブリタニア帝国の転覆を企てる。チェスの上手であるルルーシュにとって、敵国の軍事行動の裏をかき勝利を収めることはさほど難しい事ではなく、同時に反政府組織の拡張をメディアを通じて行うことも容易であった。セクション11として、「イレブン」と呼ばれ差別されていた日本人にとって、彼らの存在が不満の捌け口とであるとともに一種の英雄的崇拝を集めることになる。戦術的勝利、卑劣な策略を用いてブリタニアに抵抗するルルーシュの目的は、目と脚に障害をもつ妹ナナリーにとっての優しい世界の創造であった。ルルーシュの旧くからの友人枢木朱雀も同様に、強きが弱きを挫く世界の矛盾を糺す為に、しかしブリタニア軍に身を投じ帝国内部からの改革を目指す。二人は共に同じ理想を掲げながらも、その思想による行動の違いから運命的な反目を共有することになる…。
まぁ粗筋はどうでもよろしい。問題なのは話の作り込み方の深さと、映像の美しさ、描かれるキャラクターたちの際立った知性や情熱であろう。主人公ルルーシュが自ら選んだ仮面付きの二重生活はその矛盾により滑稽なまでの哀しみを生むことにもなる。
ロボットアニメと聞いて即座にアレルギー反応を起こす者もいることだろう。安心して頂いても良いが、私自身もそうであったし、私が言いくるめてDVDを借りさせた後輩もそうであった。結果として私は全50話25時間相当を二日間で観ることとなり、後輩は資格試験のための貴重な7時間半を徒に消費することになった。
熱血漢が正義の炎で悪を焼き尽くす(一昔前の)ロボットアニメとは異なり、「コードギアス」の主人公は残酷なまでに頭の切れる白皙の青年である。彼の行う軍事的な采配の論理的な整合性、君主論や哲学を偲ばせる知性、ブリタニア皇帝に対する憎悪の濃厚さ、またキャラクター間の複雑な関係を実に明瞭に伝えているという事実は、何より制作者のインテリジェンスを表しているらしい。
「コードギアス」の面白さはまず第一にアンチ・ヒーローの面白さにある。日本にロボットアニメは数多くあれど、主人公はどれも甘ったれた熱血漢ばかりである。私は彼らがいやだった。創作と現実を取り違える愚かしさは頭では分かっていても、感情的にどうもしっくりとこない事に目をそむける訳にもいかない。現実にはあんなに単純な思考の人間はいないであろうし、いたとしてもロボットに乗り込み気持ちの熱さだけで敵機を突き破ることは不可能ではないか知ら。情熱過多の主人公に羨望は感じても、共感して感情を移すまでには至らず、心の奥隅で彼の愚かしさを笑っている自分がいる。
その常識の壁に疑問符を投げつけたのがエヴァンゲリオンであり、平凡で病んだ心の登場人物は僕たちの世代を熱狂させた、らしい。「コードギアス」ではさらに踏み込んで自らの欲望のために敵も味方も肉親ですら犠牲にする、いわゆる“悪者”が主人公であり、従来の常識に沿えば頑なにルールを守り人殺しにアレルギー反応を起こす朱雀の方がより主人公にちかい。
この関係を敢えてパラレルにしたところにこのアニメの面白さがあり、制作者の傾いた視線の元にいる誰それに自分はより近い位置にいるのだと感じる。アニメをみた印象では、その傾いた物の見方は戦後・戦中の日本、民主主義の矛盾を孕んだ正義やそれを押し付ける英米に対して向けられると共に、それらを叩き台にして独特に偏った世界観を押し付ける。誤解を承知で書くが、それが実に痛快なのである。
しつこく書いているうちにいい加減こっちが飽き飽きしてきたが、戦闘シーンの鮮やかさ以上に描かれるキャラクターたちの輪郭の彫りの深さが素晴らしいのだ。戦争という題材はその大きさ故に作品に破綻をもたらすことが多いが、「コードギアス」において戦争が矛盾なく組み立てられ、その為にキャラクターの性格に豊かさをもたらしている。レジスタンスでの戦闘描写とふざけた学園生活はアニメに緩急をつけ、またそれらが結びつき、互いに穴を開けて哀しみを垂れ流す構造には洗練された文房具のような実用的な美しさがあるように感じた。
もういかん。もう疲れた。私の頭はもう考えることの役に立ちそうにない。貴方のように物分りの悪い人には取り敢えず観ろと申し上げたい。アニメの満点が10だとすれば、私には今のところ10点満点をあげる候補として「コードギアス」しか思いつかない。それだけこのアニメには入れあげてるし、従ってアニメを観る人にもそうでない人にも観ることを是非お勧めしたいと考えている。今週中に私に会う予定のある人は覚悟していただきたいし、私に対して哀れみの視線を投げかける必要のないことは切に申し上げておきたい。
色々実験してみたが分かって頂けただろうか。もし何かの折にもう一度この文章を読み返す様なことがあれば、その時はこのエントリを消す公算が高い。疲れたのもう寝よう。
コードギアス 反逆のルルーシュ 1 [DVD]/福山潤,櫻井孝宏,ゆかな

脚本はエウレカとおんなじ人らしいです
最近観た映画たち
ミルク [DVD]/ショーン・ペン

米国初の同性愛者を公言した公職者のドキュメンタリー風映画。アメリカの懐の広さには恐れ入る
☆☆☆
ファニーゲーム [DVD]/スザンヌ・ローター,ウルリヒ・ミューエ,アルノ・フリッシェ

制作者が悪乗りしすぎた結果、誰も付いてこれなくなったサイコ?ホラー。普通の映画では飽き足らない貴方に
☆
プリティ・ウーマン 特別版 [DVD]/リチャード・ギア,ジュリア・ロバーツ,ローラ・サン・ジャコモ

古典的名作。面白いけど二回目観たときは作りの粗さが目立った
☆☆★
バレンタインデー Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)/アシュトン・カッチャー,ジェニファー・ガーナー,ジェシカ・アルバ

流行りの恋愛負け組女もの。ラブ・アクチュアリーのように交差する恋模様。相変わらずストーリーは荒いが、後半に掛けてグイグイ引き付けられた
☆☆☆
Dr.パルナサスの鏡 プレミアム・エディション [DVD]/ヒース・レジャー,ジョニー・デップ,コリン・ファレル

ダークナイトで怪演したヒース・レジャーの遺作。彼の頓死が悪いのか監督が悪いのか、無茶苦茶。ストーリーではなくCGを堪能する人向け
☆
紅の豚 [DVD]/出演者不明

ジブリで2番目に好きなやつ。むしろ何が面白くないのか問いたい。えぇ金曜ロードショーです
☆☆☆☆
耳をすませば [DVD]/出演者不明

ジブリでストーリーが一番頭に残らないやつ。ストーリーの軸ずれてるからだと思う。主人公が作家を目指す後半からは面白かった
☆☆
感想を端的に申し上げるとすれば、面白いという一言に尽きるようだ。しかしそれではこのWeblogなるものを仮初めにも始めた手前、あまりにも体裁が悪かろうから、もう少しばかり丁寧に説明した方が良いように思う。
ギアスの力を手に入れたルルーシュ・ランペルージは日本を征服している神聖ブリタニア帝国の転覆を企てる。チェスの上手であるルルーシュにとって、敵国の軍事行動の裏をかき勝利を収めることはさほど難しい事ではなく、同時に反政府組織の拡張をメディアを通じて行うことも容易であった。セクション11として、「イレブン」と呼ばれ差別されていた日本人にとって、彼らの存在が不満の捌け口とであるとともに一種の英雄的崇拝を集めることになる。戦術的勝利、卑劣な策略を用いてブリタニアに抵抗するルルーシュの目的は、目と脚に障害をもつ妹ナナリーにとっての優しい世界の創造であった。ルルーシュの旧くからの友人枢木朱雀も同様に、強きが弱きを挫く世界の矛盾を糺す為に、しかしブリタニア軍に身を投じ帝国内部からの改革を目指す。二人は共に同じ理想を掲げながらも、その思想による行動の違いから運命的な反目を共有することになる…。
まぁ粗筋はどうでもよろしい。問題なのは話の作り込み方の深さと、映像の美しさ、描かれるキャラクターたちの際立った知性や情熱であろう。主人公ルルーシュが自ら選んだ仮面付きの二重生活はその矛盾により滑稽なまでの哀しみを生むことにもなる。
ロボットアニメと聞いて即座にアレルギー反応を起こす者もいることだろう。安心して頂いても良いが、私自身もそうであったし、私が言いくるめてDVDを借りさせた後輩もそうであった。結果として私は全50話25時間相当を二日間で観ることとなり、後輩は資格試験のための貴重な7時間半を徒に消費することになった。
熱血漢が正義の炎で悪を焼き尽くす(一昔前の)ロボットアニメとは異なり、「コードギアス」の主人公は残酷なまでに頭の切れる白皙の青年である。彼の行う軍事的な采配の論理的な整合性、君主論や哲学を偲ばせる知性、ブリタニア皇帝に対する憎悪の濃厚さ、またキャラクター間の複雑な関係を実に明瞭に伝えているという事実は、何より制作者のインテリジェンスを表しているらしい。
「コードギアス」の面白さはまず第一にアンチ・ヒーローの面白さにある。日本にロボットアニメは数多くあれど、主人公はどれも甘ったれた熱血漢ばかりである。私は彼らがいやだった。創作と現実を取り違える愚かしさは頭では分かっていても、感情的にどうもしっくりとこない事に目をそむける訳にもいかない。現実にはあんなに単純な思考の人間はいないであろうし、いたとしてもロボットに乗り込み気持ちの熱さだけで敵機を突き破ることは不可能ではないか知ら。情熱過多の主人公に羨望は感じても、共感して感情を移すまでには至らず、心の奥隅で彼の愚かしさを笑っている自分がいる。
その常識の壁に疑問符を投げつけたのがエヴァンゲリオンであり、平凡で病んだ心の登場人物は僕たちの世代を熱狂させた、らしい。「コードギアス」ではさらに踏み込んで自らの欲望のために敵も味方も肉親ですら犠牲にする、いわゆる“悪者”が主人公であり、従来の常識に沿えば頑なにルールを守り人殺しにアレルギー反応を起こす朱雀の方がより主人公にちかい。
この関係を敢えてパラレルにしたところにこのアニメの面白さがあり、制作者の傾いた視線の元にいる誰それに自分はより近い位置にいるのだと感じる。アニメをみた印象では、その傾いた物の見方は戦後・戦中の日本、民主主義の矛盾を孕んだ正義やそれを押し付ける英米に対して向けられると共に、それらを叩き台にして独特に偏った世界観を押し付ける。誤解を承知で書くが、それが実に痛快なのである。
しつこく書いているうちにいい加減こっちが飽き飽きしてきたが、戦闘シーンの鮮やかさ以上に描かれるキャラクターたちの輪郭の彫りの深さが素晴らしいのだ。戦争という題材はその大きさ故に作品に破綻をもたらすことが多いが、「コードギアス」において戦争が矛盾なく組み立てられ、その為にキャラクターの性格に豊かさをもたらしている。レジスタンスでの戦闘描写とふざけた学園生活はアニメに緩急をつけ、またそれらが結びつき、互いに穴を開けて哀しみを垂れ流す構造には洗練された文房具のような実用的な美しさがあるように感じた。
もういかん。もう疲れた。私の頭はもう考えることの役に立ちそうにない。貴方のように物分りの悪い人には取り敢えず観ろと申し上げたい。アニメの満点が10だとすれば、私には今のところ10点満点をあげる候補として「コードギアス」しか思いつかない。それだけこのアニメには入れあげてるし、従ってアニメを観る人にもそうでない人にも観ることを是非お勧めしたいと考えている。今週中に私に会う予定のある人は覚悟していただきたいし、私に対して哀れみの視線を投げかける必要のないことは切に申し上げておきたい。
色々実験してみたが分かって頂けただろうか。もし何かの折にもう一度この文章を読み返す様なことがあれば、その時はこのエントリを消す公算が高い。疲れたのもう寝よう。
コードギアス 反逆のルルーシュ 1 [DVD]/福山潤,櫻井孝宏,ゆかな

脚本はエウレカとおんなじ人らしいです
最近観た映画たち
ミルク [DVD]/ショーン・ペン

米国初の同性愛者を公言した公職者のドキュメンタリー風映画。アメリカの懐の広さには恐れ入る
☆☆☆
ファニーゲーム [DVD]/スザンヌ・ローター,ウルリヒ・ミューエ,アルノ・フリッシェ

制作者が悪乗りしすぎた結果、誰も付いてこれなくなったサイコ?ホラー。普通の映画では飽き足らない貴方に
☆
プリティ・ウーマン 特別版 [DVD]/リチャード・ギア,ジュリア・ロバーツ,ローラ・サン・ジャコモ

古典的名作。面白いけど二回目観たときは作りの粗さが目立った
☆☆★
バレンタインデー Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)/アシュトン・カッチャー,ジェニファー・ガーナー,ジェシカ・アルバ

流行りの恋愛負け組女もの。ラブ・アクチュアリーのように交差する恋模様。相変わらずストーリーは荒いが、後半に掛けてグイグイ引き付けられた
☆☆☆
Dr.パルナサスの鏡 プレミアム・エディション [DVD]/ヒース・レジャー,ジョニー・デップ,コリン・ファレル

ダークナイトで怪演したヒース・レジャーの遺作。彼の頓死が悪いのか監督が悪いのか、無茶苦茶。ストーリーではなくCGを堪能する人向け
☆
紅の豚 [DVD]/出演者不明

ジブリで2番目に好きなやつ。むしろ何が面白くないのか問いたい。えぇ金曜ロードショーです
☆☆☆☆
耳をすませば [DVD]/出演者不明

ジブリでストーリーが一番頭に残らないやつ。ストーリーの軸ずれてるからだと思う。主人公が作家を目指す後半からは面白かった
☆☆