「私の死骸を晒さないで」
赤毛の人魚が打ち上げられる
青灰色の躯体に毛細血管が滲んでいる
腐爛しかかった目玉は
今にも蕩けそうに宙をたゆたう
オマエの内側には
断崖が切り立っている
そうやって私は追い詰めてゆくのだ
侵食され崩落してゆくのだ

竜宮よりもたらされたリテラシーとか
蓋を開けると無知の血が騒ぐ
その判断能力と活用術
バーチャル王子をリアルに求めて
私達の脳内伝達物質は矢印
黙示されるのはコインではなくサイン
それでも
言うに尽くせぬ何かがそこにはあるのだろう
その意思を呑み込む前に声にせよ

深海 その沈黙に降り積もる微塵
やがてその澱みは金泥となり
私の衝動の契機をもって立ち昇り
再び私自身へと打ち寄せてくる
そして言葉となり
それ自身では存在すら出来なかった
純粋な言葉となり
抵抗によって覚醒してゆく

仮有と実有の間に引き裂かれるもの
迫り上がる断崖の上
志向するもの
表徴としての存在

アノマリーな異形の
瞑目する一個の人魚が
閉じられた海から
展開される宇宙へと泳いでゆく

私の透き通る肉体