巨人が目を閉じると
孔雀は夕日に羽を広げ
その形を失い色彩の渦となり
私達の惨めな性は
その軌道の獄(ひとや)に
トグロを巻いた

祈りはアラベスク
絡み合い綾なしてゆくその道を外れ
打ち拉がれる
踏み越えてみたいこの野性を
己れの弱さを補完しようと喰い殺してゆく
生きるという死への贖い

無意味であることの深みに嵌るな
底は浅い
人を寄せ付けないものは
その愚かさを見抜くからだ
犇き合うところには
何も無いのだ

放逐されたレプリカは
一番遠い場所から
唯一のものを目指している
しかしふり仰げば故郷は近い
そうだ私達は
凝視する一碧の孤独

秩序の星に
不確定の花が散る
それがどんな色をしているのか
果たして見抜けなかったが
最後の一輪まで
巨人は深く愛した

やがて日が昇り
解き放たれた孔雀がその羽をたたみ
巨人は夢から醒めるのだ
零れ落ちた涙が
そこにまた花と咲くのを
無常の瞳が色に染(うつ)しとって