更に1時間経過した時、面会の許可が下りました。

 


中に入ることが出来るのは、2人のみと看護士さんに言われました。父が、朝会ったから私と弟で行ってきなさいと言ってくれました。

 


弟と二人で、母の病室へ向かいました。

医療麻薬のおかげなのか昨日よりは少し楽そうに見えました。そして、やはり意識は朦朧としているようでした。

 


私達二人が母のベッドの横に行くと一瞬目を開けました。



『あれ、日曜日なのに仕事は大丈夫なの?』

と言いました。



『お母さん、今日はね火曜日だよ。ちょうど休みだから来てくれたんだよ。』



『えっ!!火曜日なの。』

とびっくりした顔をしまた目を閉じました。少し母と話をしましたが、話をすると苦しそうで可哀想になってしまいました。そして、母の手を握りしめました。か細くなってしまった母の手。私が左手で弟が右手を握りしめていたあの時間は一生忘れることが出来ない時間です。こんな風に母の手を握ることは初めてでした。もちろん、弟もそうだったと思います。

 


話したいことはいっぱいあったし、伝えたい気持ちも沢山ありました。感謝しても感謝しきれない気持ち。ありがとうってお母さんの子供に生まれてこれたこと本当に幸せだったこと…。でも、ここで伝えてしまったらお母さんがいなくなってしまうことを認めたことになってしまうのが嫌で伝えることが出来ませんでした。まだ、奇跡を信じたかった。母との時間を終わらせたくなかった。でも、今思えばちゃんと言葉で伝えてあげたかったと後悔しています。

 


そして、15分が経過しました。

弟が帰り際、また来るからねと声を掛けた時、母は細くなった腕をあげました。わかったよ…ありがとう…と言ってるように見えました。