担当医からの説明が終わった後、母に15分だけ会えることになりました。
コロナ禍ということで、許された時間はたった15分。
母は個室の病室にいました。
医療麻薬がまだ効いていないのかまだとても苦しそうでした。酸素をつけており苦しそうな息の音が聞こえ胸が締め付けられました。
『大丈夫?苦しい?』
と聞くと小さな声で
『ちょっとね…。』
と母。6日前は、あんな元気な声だったのに。信じられない気持ちでいっぱいになりました。体も更に痩せてしまっていました。
父が
『元気になって、俺の誕生日に鰻食べに行く約束しただろう。○○(息子)と一緒に食べに行くんだから元気にならないと。』
そう言うと、母は辛そうな顔して
『無理だわ。』
と悲しそうに笑いながら言いました。この瞬間、今まで弱音一つ吐くことなく前向きだった母が初めて後ろ向きな発言をしたことによって母はもう悟っているんだと感じられました。でも、私自身はとてもじゃないけど受け止めきれませんでした。父は、少しでも生きる気力を与えたくてこの時そう声かけをしたと言っていました。
『明日も仕事でしょう?帰って大丈夫だよ。』
という母。こんな時にまで、父と私のことを気にしていました。もしかしたら、苦しんでいる姿を見せたくなかったかもしれません。その後も母と何か話をしたのですが、記憶が曖昧です。母がいなくなってしまうかもという恐怖と信じたくない気持ちで押しつぶされてしまいそうになってました。父は一生懸命母に話しかけていましたが、私は苦しそうにしている母を目の前にしてあまり声をかけられなかったような気がします。
そして、15分という時間はあっという間に過ぎていきました。