万城目学さんの話はいつも少しファンタジーでミステリーでゾクゾクワクワクしておもしろい
この本もとても面白かった
ネタバレするので抽象的な書き方になるが、きゅっと切なくなり、温かな気持ちになり、話の中の人々同様にその秘密をそっとしまっておきたくなる話だった

事実に基づくのかはわからないが、話の中で、戦時中に京大の男子学生数千名が戦場に駆り出された
まだ大学生になりたてだった彼らの多くが空に散り、復学することはなかった
彼らの壮行会が出征前に京大農学部グラウンド、通称農Gで行われたのだそうだ

夏の照りつける暑さとか
まとわりつくような湿気とか
がなるようになきまくる蝉の大合唱とか
京都のダルい夏の様子が話と一緒に再生された

そこに、
入学してすぐに大学を発たなければならない悔しさとか
離れた家族を思う気持ちとかまで
至極リアルに感じた

農G横をよく通るが、アメフト部やラクロス部がよく練習している
約80年前、この地から旅立ち志半ばで2度と帰ってくることのなかった男子学生たちを思うとえもいわれぬ気持ちになる

そんな彼らは
こっそりお盆には野球をしに帰ってきているのかも、しれない