【私の神経質】

私は非常に神経質な性格です。
人とのご縁でも、そのやり取りの中でも
『美しさ』を感じ得ないと長続きしません。
私が感じる美しさは
他人には推し量れません。
私が何に美しさを見出すかは
私自身でさえワカラナイからです。

いっとき、一人の小説が好きになり
彼女の文庫になった小説を
読み漁っていた頃がありました。

その小説家は、小川洋子と言います。

彼女の小説は、とても美しく官能的で
ページを開く度にドキドキしました。

彼女の描く小説の登場人物は、
いつも、何処かが欠けていました。
私と同じくです。

欠けていることに対する
私自身のコンプレックスを
様々な表現に変えて
私を肯定してくれている。

そんな風にすら思えました。

小川洋子の作品と出会ったのは
書店のアルバイトの時でした。

そこには、若くて可愛らしい
女性のアルバイト店員が居ました。

とても可愛らしい顔立ちであると同時に、
とても目がキツくて、とっつきにくい
話かけづらい感じの女の子でした。

彼女は、私が描くPOPのイラストに
とても関心を持ってくれました。

私が絵を描く姿に
何かを感じてくれたのでしょう。

彼女は、私に彼女の好きな小説を
読んでみないかと提案してくれました。




『シュガータイム』

少しばかり言葉を交わし始めたばかりの
歳の離れた私に貸してくれた小説の内容が
余りにも官能的であったことに驚きを
隠せなかった。それでもそこは伏せて、
私は、彼女から小説を借りては読み、
そして、自分で買う様になった。

彼女は、とても几帳面な性格で
綺麗で折り目やキズの無い本を選び
そこに自分で用意した柄紙で
ブックカバーを施すのだった。

私も彼女を真似て、ブックカバーに
合いそうな紙を見つけて、同じ様に
ブックカバーにするのが好きになった。

当時のそれらのコレクションは、
今でも書棚に並んでいる。

ここ迄の描写に、KissもSEXも
描かれてはいないが、もう既にとても
官能的でエロティックに描かれている。

美しさ…が、内包されているせいだ。

私は、今でもこの一時
彼女と過ごした時間をほんの時々
引き出しの奥からこうして出しては
恍惚とする時間を過ごす。

_______________

【友愛数】

友愛数…と云う聞き慣れない言葉を
聞いたことがあるだろうか?

最小の友愛数のペアは『220と284』。

220の約数を書き出す。
284の約数を書き出す。

220 の自分自身を除いた約数は、
1, 2, 4, 5, 10, 11, 20, 22, 44, 55, 110 。

その和は 『284』となる。

一方、284 の自分自身を除いた約数は、
1, 2, 4, 71, 142 。

その和は 『220』となる。

このエピソードが紹介されているのは
映画化もされた同名小説
『博士が愛した数式』に登場する。




事故で80分しか記憶が持たない博士の
苦手な人とのコミュニケーション手段は、
こうした『数のユーモア』をもって接すること。

嗚呼、なんと可愛らしい人間らしい
欠落から来る愛と優しさと美しさだろう。

この美しさが、少しでも読者諸君に
伝わってくれると嬉しい。

_______________

【美しさの定義】

『美しさの定義』は、人それぞれある。

何に美を感じ、何に官能さを感じるか
他人には、それらは知り得ない。

それは、その人の頷きの
仕草の中にあるかもしれない。

それは、ある瞬間にだけ発せられる
その人の声の発声にあるかもしれない。

桜の花びらが花弁から離れる瞬間に
どうしようもなく震える官能を感じるかもしれない。

波打ち際の潮が引いて露わになってく
濡れた岩肌に感じるかもしれない。

また、それ以上に
それを感じ得る感性そのものが
人間たる最大の美しさだと思う。

私だけが感じ取れるその何かに
打ち震えるが如くにすべてが許されたと
感じて涙し、すべてを委ねてしまう程の
言い知れない念いで繋がるってしまう。

私は、それを恋とよんでいる。

もう、すっかりと
遠い過去になってしまった。

想い出は時と共に美化されてしまう。
その美しさに勝る体験をするのは
なかなか難しいことだろう。

随分と恋から遠ざかってしまった。

美しく去ってしまった過去に浸って
時をやり過ごせる程、歳はとっていない。

その美しい瞬間が、きっとまた
私の元にやって来てくれるかもしれない。

夢は夢のままでも構わないが、
それを味わえる程の夢見心地は
妄想の中ではけっして味わえない。

私は、神経質だからこそ
この微細な美しさを感じ取ることができる。

私は私のままで良い。

その美しさを感じ取れる存在が
この世に一人として居なくなっても
私はこの美しき感性と共に在り続ける。

🌷SoulFlower Kamuy🌷

_______________

一粒の砂に世界を見、
一輪の野の花に天国を見る
手のひらに無限をつかみ、
一瞬のうちに永遠をとらえる

詩/ウィリアム・ブレイク