全球凍結(続7・8・9)武田信弘
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全球凍結(続7)

我々の科学者は予言していた。
遺伝子の劣化がやがて究極的なものになると。

究極的なものになるという意味は、
人類とは言えないものにやがて変わっていくということだ。

植物や昆虫、またはいろいろな動物で
奇形の発生はよく報告されていた。
ただ、それはみな外形についての変化だ。

問題は、人間について、外形だけではなく
精神そのものに異常が出ると言うことだった。

 このことは大きな問題を我々に付きつけた。
一つは、将来の安全を、健康をどうやって保つか。

もう一つは、なぜこういった問題が起こったかを
どうやって隠すかだった。

グリーンラン。
太平洋戦争終了後行われた作戦。

原発事故による放射能漏れを隠すために実行された作戦で、
実験のためにわざと放射能漏れを起こしたと偽るためのものだった。

米軍は間違えを犯さない。
我々は失敗をしない。

無謬性が我々の神話だ。

アメリカで開発された原子爆弾に
影の歴史があることは許されない。

2000年には、
我々アメリカ軍産複合体は完全に無敵になった。

世界中の国々の政府はもう我々に文句を言うことはなく、
たとえ真っ赤なウソで あってもそれを受け入れた。

もちろん、彼らの多くがウソをでっち上げを知っていた。
しかし、だからと言って我々は方針を変えるわけには行かなかった。

なぜそこまでやる必要があったか。
教育が、つまり、次世代の育成が必要だったからだ。

我々もやがて老い死んでいく。

我々に代わる世代が我々の方針を継がなければ、
我々がやってきたことが全て無駄になる。
それは許容できない。

歴史は勝者が作る。
これは真実だ。

科学の進歩と民主主義、それが我々の神話であり、
我々が正しいことを、我々に正当性があることを裏付ける基礎。

人々の記憶や意志も既に簡単に操作ができる。

サブリミナル技術の進歩は瞠目すべきものがあり、
期間や対象を指定して、記憶や意欲を無くしたり、
新たに作り上げたりすることは自由にできる。

全ての人間に永遠に
そういったマインドコントロールをしていくことは困難だ。
だから、外部記憶を徹底的に 作り変えるしかない。

外部記憶を完全に把握すること。
これが第一歩だ。

どんな文字記録があるのか、
それをもれなく収集することが必要であり、
グーグルがこれを担当した。

映像記録についてはユーチューブが担当した。

ネットにつながった環境が全てのCPUを、
マイクロプロセッサーを支配下に置いた。



全球凍結(続8)

サブリミナル効果によるマインドコントロール。
非常に大きな武器だった。

有効すぎたのかも知れない。
2000年以降、何度も銃規制の話が出 た。

しかし、その度に市民が自己防衛の権利を有することが強調され、
結局、強力な銃規制はされなかった。

あの背後には、
やはりマインドコントロールがあったのではと疑っている。

サブリミナル効果を誰がいつ誰に対して使うか、
明確な規定が作られていたはずだった。

しかし、現実にはかなりルーズな運用がされていた。

特に、特定の個人のテレビやパソコン、携帯電話などの画面に
サブリミナル効果を使っていくことは一定の技術を持っていれば
誰でも勝手にできてしまったからだ。

ソフト的に、勝手にそういったことが
できないように注意はしてあったが、いたちごっこだった。

他人の意志を思うがままに操れる、
このことは快感だった。

1990年代から2000年代には、相当に勝手な使用がされ、
自分が目を付けた女をモノにするためにサブリミナル効果を使う
関係者さえかなり出たようだった。

ただ、サブリミナル効果には欠点がある。

不自然な行動をやらせてしまうと、
何らかの催眠術が使われているのではという
疑いを持たれてしまうからだ。

だから、常に、現実の何らかのとっかかりが必要だった。

どこかの学界で賞を取らせてやるとか、何らかの事故を起こさせるとか、
好意を持たせたり、危 機感を抱かせたりするためのきっかけが必要なのだ。

人間の心理などいい加減なものだ。
ものごとの真価など関係はない。

そもそも、真価など評価は不可能だ。

問題なのは印象であり、
印象は幾らでもサブリミナル効果で操作ができる。

ただ、我々は間違ったのかも知れない。

日光がさえぎられ、食糧不足が表面化したとき、
我々は三つの対応を取った。


1.初期には平時の政治対応をやらせること。

国内向けにはエネルギー備蓄と寒冷地でも
栽培できる作物の増産などに励むこと。

国外へは緊急輸入を求めるだけで、
海外への軍事行動はさせなかった。

2.食糧危機が飢餓状況にまで行ったとき、

暴動とテロを起こさせて、
その社会全体を混乱状態に陥れること。

3.政治家と軍部には秘密らに食料供給をすること。

テロ社会化した段階で、
政治家と軍部全体を一気に殲滅した。

この方法で、全ての国が処理できた。
そして、今の我々がいる。

軍の存在は、結局、力による自己の存在保障だ。
そこに政治はない。

そこに対話はなく、自己と対等な他者は居ない。

常に相手に勝つか負けるかだけが問題であり、
勝つ場合には他者否定、
負ける場合には自己否定となるだけだ。

そして、今の我々がある。

今の我々。
この状況を我々は望んだのだろうか?

確かに、我々は他者にうち勝った。
他者を滅ぼし、我々は今こうやって生存している。

明るくはあるが、温かみのない光。
これを我々は望んでいたのだろうか?


全球凍結(9)

アリス。
こうやって眠り込んでいるアリスは本来の姿ではない。
これを本来の姿だというものは明らかに神に背いている。

そして、では、そういった事態を
作ってしまった我々は神に背いてしまったのか?

我々がこういった事態を作ったのではない。
そう言いたい。

しかし、メリッサは我々こそが
今の事態を招き入れたのだと指摘するだろう。

第2次世界大戦のさなか、
核兵器の開発に全力を傾け、

実際に、日本に投下したとき、
我々は道を踏み外してしまったのだと。

しかし、殺し合いになれば、
問題は誰が生き残るかだけしかない。

たとえ、地球環境が破壊されようと、
生き残らなければ意味はない。

我々が作らなければ
ヒットラーが作っていただろう。

核爆弾と原子力発電所。
これは必然だったのだ。

アリスが5歳で発病したときに、
尋ねた言葉が胸に刺さっている。

「パパ。アメリカは強い国でしょう。
なぜ原爆を使う必要があったの?」

メリッサを責めた。
アリスが自分でこんなことを考えるはずがない。

なぜ、アリスの病状と放射能汚染のことを
結びつけてアリスに話したのか、そう、メリッサに問うた。

メリッサは答えた。

「アリスはペットじゃない。
自分がなぜ病気になったか、その理由を知るべきだ。」

私は反論した。

「メリッサは子供だ。
子供が理由を知ったからと言って、なんら事態は好転しない。
それに、そもそも、本当に放射能汚染が原因かどうかは分からない。」

「戦う相手を知らずに戦はできないわ。
アリスは呼吸障害と戦っているだけじゃない。

彼女の体の中に無数に存在する
放射性ストロンチウムやアメリシウムと戦っているのよ。

そして、それは生物進化、
何万年・何億年と言う遺伝子進化と
それを破壊する放射性物質の戦いで、

別の言葉で言えば、
他者に打ち勝つことが究極の価値なのか、

それとも他者と共同の社会を作っていくことが
究極の価値なのか、その戦いなのよ。

放射能汚染が原因であることは疫学が証明している。
その疫学を誤魔化したのはあなたよ。」

メリッサの指摘は図星だった。
第2次世界大戦中に国内で核実験をやった。

その段階で既に被曝被害が大量に出ることがはっきりしていた。
ただ、 その被害を認めるわけには行かなったのだ。

核兵器保持国はどこも同じだった。

自国の核保有を正当化するために、
被曝被害を隠ぺいした。




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