現役キャリア官僚
衝撃の告発小説に霞が関震撼

日刊ゲンダイ2013/9/18

霞が関全体を、一冊の本が震撼させてる。

タイトルは「原発ホワイトアウト」(講談社)。
再稼働が着々と進む日本の原発に、
致命的な欠陥があることを暴いた小説だ。

業界団体の反対派潰しの手法や、政治家や官僚を手なずける手練手管が臨場感たっぷりに描かれているが、この一冊はただのエンターテインメント本ではない。

帯のコピーに〈現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!!〉とあるとおり、
小説の形を借りた内部告発本なのだ。

著者は「若杉冽」。もちろんペンネームだが、プロフィルには〈東京大学法学部卒業。国家公務員1種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務〉と書かれている。

「原発反対派で知られる自民党の河野太郎議員がきのう(17日)午前、自身のツイッターで〈登場者はみんな仮名ですが、電力、原子力業界について書かれていることはかなり真実に近く、お勧めです〉と推薦。

〈エネ庁で相当の職務経験を積んだ高官で、かつ、左遷されるなどして相当の時間的余裕がある人が疑われているようです〉

と立て続けにつぶやいたことで、
本の評判が一気に拡散しました。

霞が関は、いったい誰が書いたんだと、“
犯人捜し”に躍起になっています」
 (経済部記者)


それもそのはず、登場人物も全員仮名だが、
「エネ庁次長」や「規制庁審議官」といった肩書の人物が登場する。

だから官僚が読めば、
実在のモデルが分かってしまうというわけ。

政治家や経済界の実力者も多数登場出するが、脱原発俳優で参院議員の「山下次郎」などと、名前の語呂や肩書から実在の人物が容易に想像できる。

官僚や政治家は、今ごろ気が気でないだろう。

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原発ホワイトアウト


レビュー


本書は小説というスタイルをとることで様々な立場、
ポジションの登場人物が自らの業界の利益を語る。

電事連をモデルにした組織や
自民党・民主党をモデルにした政党、

佐藤元福島県知事のように
国策捜査の毒牙にかかる原発立地県の
改革派知事も登場する。

様々な業界の「立場」が登場人物のセリフとして語られる。
どの立場にもその立場なりの正義は存在する。

この作品は小説という体裁をとっているが、
現在の福島原発事故後の日本が抱えている様々な
原子力をめぐる問題をわかりやすくまとめてある。

原子力問題は放射能問題というよりは、
国の統治のあり方そのものを
浮き彫りにする問題であることがよく分かる。

この本を読んだあと
サイレントマジョリティの有権者は
「原発再稼働はまだ時期尚早」と思うに違いない。

客観的な情報の裏付けがあるとろこに
この本の価値がある。

著者の若杉氏は現役キャリア官僚のようだが、
素性は一切書かれていない。

本書の中でもマスコミに協力して
内部情報をリークする善良な官僚が出てくるが、
官僚というのは守秘義務を負うから、
実名ではできないのだろう。

タイトルの「原発ホワイトアウト」。
この意味は最後になって明かされる。

ブラックアウトではないところに注目してほしい。

この本を読むことで、多くの読者が原子力問題を
一歩立ち止まって考えることになれば、
非常に良いことでしょう。

「再稼働反対」だけを唱えるのではなく、
国民が自分の頭で考えて一歩を踏み出さないと、
また福島原発事故のような事故は必ず起きる。

原発政策は国家の最高機密であるという問題から
本書は内部告発や機密保全法をめぐる問題にまで踏み込んでいる。


原発ホワイトアウト