高田郁著「みをつくし料理帖 想い雲」を読んだ。

『捨て鐘が三つ。そして明け六つの鐘が響く。それにじっと耳を傾けながら、生きてるてしんどいもんやなぁ、と芳はしみじみと言った。澪は胸の奥から溢れ出すような哀しみに、ただ、じっと耐えた


『俺ぁ、「料理は料理人の器量次第」ってことを教えてくれたご寮さんの、その言葉を信じるぜ。なぁに、お客だって、きっとわかってくれる


『天災を除いて世の中で一番恐ろしいのは、妖怪でも化け物でもなく、生きているひとだと思う。だが、恐ろしいのもひとだけれど、同時にこの上なく優しく、温かいのもひとなのだ。男の背中に向かって、澪は両の手を合わせ、首を垂れるのだった