そのとき、目の前にあった2冊の本。
どちらにしようか考えた。
ほんの一瞬の迷いだった。
こっちかな、
そう思った本の1ページ目、
それは、それは、びっくりした。
「当時の私は、新潟県新発田市の山麓にある、
小さな老人病院に勤務していたが、・・・」
ええっー、いきなり郷里がでて引き込まれていった。
安保徹先生の本は書店で手にとって開いたことはあったが、
買うには至らなかった。
その安保先生と共同研究をしていた
福田稔医師(1939-2014)の著書。
『人間は、治るようにできている』
長生きしたければ薬は飲むな
一見、キャッチーなタイトルであるが、
一般受けをねらった本ではない。
読むうちに医師、いや人として血の通ったセンスと、
外科医から転身する医師としての生きざまに、
さらに引き込まれていった。
福田医師は消化器外科医として経験を積むなかで、
手術によってかえってがんは治りにくくなるのではないか、
と思い始めるようになる。
やがて、
安保先生との共同研究があって、
自律神経と免疫の関係をつきつめてゆく。
胃ピロリ菌の除菌に異を唱える人がいる、
と聞いたことがあった。
福田医師がまさにその人で、
ピロリ菌は常在菌で敵視する必要はないという考え。
納得できる内容が書いてあったが、
医療現場では言えないな・・・
福田医師は50代で県北部の中規模病院に赴任する。
その地で晴天の日にゴルフ場から
虫垂炎の急患で呼び戻される日が続いた。
気圧との関係に着目して調査した結果、
気圧の高い日に虫垂炎が重症化することがわかった。
のちに白血球は気圧の影響を受けて変化することが判明する。
安保医師に出会うまで福田医師の研究は誰も見向きもせず、
外科学会にエントリーした演題は不採用になったとあるから、
笑ってしまうのだけれど、それが現状。
そして、
この1冊から福田医師を尊敬してやまないのは、
医学に対する素朴で情熱的な好奇心と、
己を知りその役割を精一杯果たして、
生き抜いた人と思うから。
福田医師が大発見と書いた、
自律神経との関係は「福田-安保理論」または
「自律神経の白血球支配の法則」と呼ばれる。
ストレスが病気の原因とよくいわれるが、
自律神経の乱れが白血球に影響を及ぼし、
病気に至る過程があるということだ。
よって、
自律神経のバランス回復→白血球のバランス整う
→免疫力で病気が治る
医療の場ではストレスを実に曖昧に扱っている。
データから理解できるよう本書では
わかりやすく解説している。
最終的に福田医師がたどりついたのは刺絡療法。
その気になって患者の身体をみると線が見えたという。
その線が虚血部位と考え針を刺してみると
症状が改善したというから、
読んでいてゾクゾクしてくる。
がんの末期においては
治ることがゴールとは限らない。
それについての朗報も触れている。
本を読みながら、
途中で、ふと不思議に思ったことがある。
医師の著書にもかかわらず、
プロフィールには学歴も経歴も一切印字していない。
本を読み進むとそれは書いてあるから
わかってくるのだけれど、
福田医師自身、闘病期間があり、
複雑な背景があったことが伺われる。
そして、
なぜか福田医師が愛おしい。
この本が出版されたのは、
福田医師が亡くなった3年後だった。
本を読む人には、
現代医学を否定しているとは考えず、
警告を発していると捉えてほしいと心から願う。
もともと単純な人間の病気を現代医学が
複雑にしている面がある。
健康は自律の道
自律の道を選択することによって
病気は治るようにできている。
この信念が浸透していくといい。


