入眠の壁を乗り越えよう!
睡眠中の脳の働きを知ることはよい眠りの意味を理解するうえでとても大切なポイントです。眠るということはたんに休息することではなく、心が自由になることでもあるのです。
眠りがもたらす心身の変化
覚醒している時と眠りに入る時では脳の状態に変化がおこります。
入眠時には脳波が単純化してアルファ波を示す時間帯がかならずあります。このとき眼球運動や顎の噛みしめなどの意図しない運動が頻繁に起こります。
覚醒時には抑えられている身体器官の不随意運動があらわれてくるのです。夢を見るのもこの時間帯です。日ごろは抑えられている情動や脳の興奮が意識の表にあらわれてきます。
脳が休むとはどういうことか?
夢を見ると、間近の日常生活の出来事であったり、心配事であったり、とても楽しい出来事を思い起こすこともあります。時間や場所が無軌道に移り変わってゆき、自分が行ったこともない国を旅していたり、懐かしい人に遭遇したり、時にはおそろしい人に追いかけられるということもあります。
夢の体験は個人的なもので、その意味を他人が特定することに科学的な根拠はありません。ただわたしたちの脳が自分自身で意識している以上に多くの情報をため込んでいることは間違いのない事実です。ここに、よく考えておくべきことがあります。
脳は肉体的な疲労と違い、ジッとしていれば休丸という性質のものではありません。
静かにしていると、いろいろ雑念が沸いてきます。このとき、脳は意図せずして活発に働いています。
眠りに入ろうとして夢を見たり、日ごろは抑圧されていた心配や気がかりなどが呼び覚まされて、じっとしていられないといったことが起こります。
座禅を組んだことのある方なら経験があるかもしれませんが、「心を無にしてください」といわれて5秒ですら心を無にすることがむずかしいのが現実です。
睡眠によって得たいものの一つに脳の休息があります。
これはただじっとなにも考えずに静かにしていればえられるものではありません。
よく眠ったという充実感、気持ちがすっきりして、幸福感を感ずるためには、生まれ変わったような気分転換が起こることが重要なのです。
気分転換が起こるための睡眠
脳の疲労と休息について、もっともも重要なことは気分転換を起こすことです。
これは活発化している神経ネットワークをつなぎかえることを意味します。
気分転換ができる柔軟性をもてるかどうかが、睡眠の質の大きなポイントなのです。
たとえば抑鬱(よくうつ)状態とは、自分が気になっていることからどうやっても心が離れない状態、そのことが頭に浮かんできてしまう状態です。
これが脳にとっては一番辛いときです。
うまく眠れない、気分が優れないというのは、気分転換ができる柔軟性を失っていることです。
大切なことは、たんに「休める」ことではなく、気分転換できる「柔軟性をとりもどず」ことなのです。
この点についてはよく注意して知っておくべきこともあります。
注意したい厳しいトレーニング
古来、このようなことを意図していわゆる苦行的なトレーニングが精神鍛錬の手法として考案されてきました。
今日でも、その流れを汲んでいわゆる「地獄のトレーニング」的なものがおこなわれていますが、これには、大きな弊害が伴うことを知っておきましょう。
ほとんどの方は、このような体験で心身を壊してしまいます。
たまたまうまくいった人が、強い確信をもってこういった取り組みを推奨していたり、講座を開いていることがありますが、この「強い確信」に対しては距離を置いて冷静に見る目を持ちましょう。
いろいろな出来事が心に刻まれるにはなにか現実的な理由があります。その理由そのものを取り除くことはわたしたちにはできません。
身体を動かし刺激することの効果
そこでわたしがお勧めしたいのが、マッサージや手技療法の施術を受けることです。
これらの施術を受けると、必然的に脳の体性感覚野、体性運動野が興奮してきます。
自分ではむずかしくとも、ここちよい刺激が手足の筋肉や背骨周りの筋肉からはいってくると、脳ば強制的に気分転換状態に入ります。
マッサージや手技療法の施術を受けると思わず寝てしまうという人は多いと思います。
しかし、よく眠るためにはそのことから自由になって、心のやわらかさを取り戻すことも必要です。
日ごろは固まったままで動かさない関節の柔軟性を回復するといつもと違う脳領域が大量の情報を受けて活性化してくるのです。
心地よい感じ、リラックスした気持ちは、大脳基底核や辺縁系などで働くさまざまな神経伝達物質を活性化して、脳のスイッチングを促す作用があります。
たんに身体のこりがほぐれることよりも、リラックスしてよい眠りに落ち、脳のなかの情報の流れに変化が起きることが手技療法の持つ大きな効用でもあるのです。