街に出て姿勢を見よう! 【018】 | 快足健康ブログ

街に出て姿勢を見よう! 【018】

前回は、歩くときの筋肉の働きについて解説しました。「姿勢をたもつこと」と「歩くこと」、両者は切っても切れない関係にあります。

身体の重みを蓄える筋肉の働きが、イメージしにくいという方もあるかもしれませんね。

ジャンプするときの動作を思い出していただくと、このことがよくわかります。飛び上がろうとするとき、誰もがいったん膝をまげていったん身体を低くします。

このとき、太ももの筋肉がおこなっている運動が、まさしく、身体の重みを蓄える筋肉の働きなのです。

快足健康ブログ-【姿勢観察017】跳躍の力学モデル


抜き足差し足で歩くときには、このような働きが強く表れます。足裏にかかる衝撃をやわらげるため、日ごろよりも身体の重みを蓄える筋肉の働きがより強くなります。

同じことを階段でやってみてください。登りのときの抜き足差し足はらくですが、降りるときの抜き足差し足は難しく、筋肉に強い疲労を感じます。これは、足にかかる荷重が大きくなるためです。

階段を下りながら抜き足差し足をしてみていただくと、筋肉が身体を重みを受け止めていることが、よりはっきりと実感できるはずです。

実際の歩行動作では、筋肉に蓄えられた弾性エネルギーが身体を推進するエネルギーとして活用されます。

蓄えられたエネルギーが活用されないが抜き足差し足の動作では、筋肉が過熱し乳酸などの代謝産物がたまりやすくなり、よけいに疲労が感じられます。

このことからも、身体の重みを蓄える筋肉の働きが、歩くためにそなわっていることがよくわかります。

より専門的に知りたいという方は、R.カリエ『足と足関節の痛み』(荻島訳、医師薬出版)や中村 隆一、斎藤宏『基礎運動学』(医師薬出版)などを参照していただくと、歩行時の筋放電について記録した図が紹介されています。

実際の歩行動作と筋電図が照合してありますから、このような筋肉の働きがよくわかります(※筋肉の活動電位が、筋長が引き伸ばされるときに高くなっているのです)。

さらにクヌート・シュミット・ニールセン『動物生理学』(東大出版会)を読んでいただくと、このような筋肉の働きが、たんに人類だけのものではなく、哺乳類のもっている一貫した特徴であることがわかります。

さて、姿勢を見るうえで大切なのは、身体の重みを蓄える力のベクトル(方向性)です。身体の重みを蓄えるにあたって、どの方向にエネルギーを蓄え、どの方向に放出するかということが、姿勢観察の重要なポイントなのです。

下の図を見てください。

$快足健康ブログ-【姿勢観察015】直立・歩行の力学モデル


人類の直立姿勢は、四足歩行の動物(原型となっているのは、リスなどの齧歯類です)を後方から引っ張り起こすようにして作られています。

さらに直立二足歩行のために、骨盤が身体の側方に大きく広がり、背骨が身体の背面から中心へと移動しています。

骨格の構造、厚み、溝や「粗面」とよばれる表面のざらざらなどが、実際にどのような力がかかっているかを如実に表現しているのです。

快足健康ブログ-【姿勢観察016】骨格の形状と姿勢


上の図の記した赤い矢印は、脊柱や骨盤にかかっている力のベクトルを示しています。

姿勢を観察するということは、このような力のベクトルをよく理解したうえで、身長の違い、体型の違い、加齢による変化や男性・女性の違い、職業の違いなど、さまざまな条件の違いを考慮して、分類整理してゆく作業です。

手技療法をおこなうにあたって、姿勢の観察が大きなポイントになるのは、このような積み重ねがあってのことなのです。

(つづく)

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