「潮」といえば、創価学会系の月刊誌である。その「潮」に、令和5(2023)年11月に亡くなった名誉会長、池田大作のオフレコ懇談が掲載されている。平成6(1994)年9月14日、東京・信濃町の中華料理店で、新聞各社とNHKの記者と懇談したときの内容だ。
「私の理想としているのは自・公です。国民は自民だと安心します」
野党になった公明党はこの年の12月に非自民の新進党に参加したが、この池田発言は自民党に「保険をかけた」と受け取られた。
懇談は「絶対にその内容を表に出さない」との条件で開かれた。筆者は懇談に参加しなかったが、写真週刊誌「FOCUS」に漏れた経緯と当時の学会幹部の反応を知っていただけに、32年経(た)って懇談内容が「潮」に掲載されたうえに、創価学会幹部が内容を解説までしたことに驚いた。
学会事務総長の谷川佳樹は評論家、與那覇潤に「オフレコといっても、やがて自民党側に伝わることを想定して、あえて話した内容ですよね」と語った。谷川が與那覇に話したのは昨年11月のことで、公明党が立憲民主党と中道改革連合を結成する前のことだ。
池田の「オフレコ発言」の内容を認め、「理想は自公」ということで自民党との対決を避けようとしたのか。
與那覇は「信仰に基づき土台を支え続ける愚直さより、メディアを瞬間的にジャックして呼びかける『ヒロイン』のほうが、大衆を惹(ひ)きつける」と、首相、高市早苗を批判するが説得力に欠ける。
なぜ「理想としてきた自公」でなく、対立してきた立憲民主党と組んだのか、学会幹部の中道改革連合結成に向けた役割はどうだったのか、次回以降ぜひ掘り下げてほしい。
2月8日投開票の衆院選では、公明党が参加した中道改革連合はSNS対策が後手に回り大敗する一因となった。
SNSが選挙結果にも影響を与えるほどになった事態を踏まえ、「国家とプラットフォームとの関係に対する監視を、憲法上の課題とすべき」だ、と主張したのは慶応大法科大学院教授の山本龍彦だ。
山本は「Voice」で、「AIが人間の魂に作用して意識・心理を形成するようになった時代の憲法学は、フィジカルな力をなお独占している国家と、『導く力』を寡占したプラットフォームとの関係をいかに捉えるかを新たな任務とすべきであるように思われる」と問題提起した。
山本は約80年前の憲法制定時とは大きく変わって、プラットフォームが「一国家以上の力を手にした」として、「プラットフォーム・AIをも対象に取り込むような憲法の再構築を含む、総合的な戦略をとることが求められよう」とした。選挙結果を受けて、自民党などはSNS規制を検討しているが、このように憲法論まで踏み込んだ議論を求めたい。
ほかにも問題提起として挙げたい論考が「文芸春秋」の「日独カナダは核武装すべきだ」である。米誌「フォーリン・アフェアーズ」に載った論文が反響を呼んだことを受けて全訳を掲載したという。
筆者は米オクラホマ大の助教、モーリッツ・グレーフラスと准教授、マーク・レイモンドで、イランなどの「信頼できない国家」や「敵対国」への核拡散への反対は当然としても、「『核拡散への全面的な反対』は、核兵器がもたらし得る『大きな利益』を見えなくさせてもいる」として、米国に対して「少数の同盟国」、具体的にはカナダ、ドイツ、日本には核保有を促すべきだと主張している。
「米国にとって、『選択的な核拡散』は、これらのパートナー国が地域防衛においてより大きな役割を担うことを可能にし、米国への軍事的依存を減らすことにつながる。同盟国にとっても、核保有は、米国がかつてほど伝統的な同盟関係に関与しなくなるなかで、中国やロシアといった地域の敵対国に対して最も信頼できる防衛手段を手にすることになる」
日本の核保有論議のなかで「米国が反対するから無理だ」と断定的に言う専門家は少なからずいるが、米国内で日本の核保有の「利点」を挙げる論者が出てきたことは注目に値する。
「文芸春秋」の「総力特集」は「高市政権参謀名鑑」。高市を補佐する「ごく限られた人々が政権の浮沈を握っている」として顔ぶれを紹介した。本文に目新しい内容はない。それよりも26人の参謀の寸評のほうが面白い。
急速に核兵器保有数を増やしている中国にどう対峙(たいじ)するか。日中の歴史からひもといているのが「中央公論」の特集「『中華帝国』と日本の興亡」だ。
明治学院大准教授の佐々木雄一は「歴史上、日本と中国が対等な立場で良好な関係を築いていた期間はほとんどない」と振り返る。
それだからこそ日中双方ともに居心地の悪さを感じているのかもしれないが、佐々木は中国との良好な関係を築くのは難しいとの認識を持っていれば、「短期的な浮き沈みに大きく動揺することもないだろう」として、「一喜一憂しない姿勢」の重要さを説く。その通りであろう。
その中国は沖縄に帰属問題が存在するかのような「認知戦」を仕掛けてきている。中国皇帝が薩摩による琉球統治を追認する勅書を出していたことを石垣、竹富、与那国各島などで発行される日刊紙、八重山日報に連載した長崎純心大准教授の石井望の記事にもいちゃもんをつけてきた。
石井は「正論」で、中国国営中央テレビの国際放送CGTN上で批判してきた中国側に反論した内容を詳報した。中国側は薩摩による琉球統治を無視しているが、石井は統治の史実は「動かし得ない」と強調した。
9月には沖縄県知事選が予定されており、中国の「認知戦」は激化することが予想されている。官民挙げて対策を強化すべきだろう。(敬称略)



