9月28日の検査入院まで
家族で一緒に過ごす時間が増えて、

少しずつだけど、
『どちらの病名であったとしても、
受けいれていこう』

そう、思えるようになってきていた。

その間も妻は、
自分に色々と教えてくれる。
それだけ自分の事を思っていてくれている。

言葉では言い表わせないくらい、
それが、嬉しかった。

家にいる時間は、
0歳娘との時間にもなって、
この子の存在が、心を癒やしてくれてた。
痛みも咳も、変わらず襲ったけど、
気持ちが乱れる事もなく、穏やかに過ごせた。


9月28日の検査入院の日は、
生検と言って、
病変の組織を採取して調べる検査だそうだ。

ガンなのか?
肉芽腫なのか?
ハッキリさせるための検査。

この検査は予後も状態を見るため、
入院が必要です。と説明を受けていた。


先生『これを、見てくださいね』

撮影したCT画像を指して、説明された。

先生『今度受ける検査は、この…心臓近くのリンパの
   病変を採取していきます。』

画像には、心臓近くに白い影があった。
…結構、ある…。

先生『口から肺に管を入れて、採取する検査です』
  『予後の様子も見ていきますので、
   検査入院していただくことになります。
   大丈夫ですか?』

自分『あの…入院は一泊とかで大丈夫ですか?』

先生『そうですね。何も問題なければ大丈夫ですが…
   熱など副作用がでた場合は、
   様子を見るため入院して
   もらうことになると思います。』
  『ご都合悪かったですか?』

自分『いえ…!娘の園で最後の運動会があって、
   なんとか参加できればと思っていたので…』
  『大丈夫です!』

ふたりめの子が年長で、
今年は園生活最後の運動会がある。

9/30だった。

ずっと前から、
仕事の有給を使って休みをとって、

楽しみにしてきた。

かつて、息子の運動会のときは、
息子の徒競走で走っている姿を見て、
人目もはばからず、涙してしまったほど。

運動会は、
子どもたちの成長を感じられる
僕にとって大切な事業のひとつだった。

それでも、
ためらってる場合じゃない。

どっちも大事なら、
どっちも叶えられるよう、
気合を入れていくしかない。

久しぶりに、
自分らしい思考が戻ってきた気がした。

もともと、
人より決断力はある方だ。


娘の運動会は見たい。

その目標があるだけで、
気合いのような、
前向きな思考を取り戻せた気がした。


入院当日は、
妻と0歳娘、3人で向かった。
運転は、妻がしてくれた。

一泊二日の予定で、手続きを色々終えて、
病棟へ向かった。
病室には0歳娘は入れず、
(感染対策もあり、子どもは入れなかった)

しばらく談話室で一緒に過ごし、
先生と、看護師さんの話を聞いたあと、

妻は、淋しそうに帰っていった。

誰か一緒に病院についてきてくれるだけで、
嬉しかった。


もし…
もしも、独りだったら…
この検査を受ける所まで辿りついただろうか?

多分、来ていないし、
病気になっている事すら、
受け入れず放置したままで、
仕事に行き続けて、

病院にまで辿りついた頃には
手遅れにはなっていただろうな。

いや、病院に行くことすらなく、
過労死と言われて終わっていたかもしれない。

そんな事が頭をよぎった。

妻がいてくれたから、
子どもたちがいてくれたから、

自分は今、こうして検査を受けるところにいる。
怖いけど、
安心できる心境でいられる。


入院1日目は、
朝の10:00から入って、
検査は、14:00〜16:00の予定だと言われていた。

食事は朝から抜き。
昼も、抜き。
 
これから受ける検査の名前は、
肺の内視鏡生検検査。

もらった資料に目を通して、
大体の流れは、把握してから挑んだ。



『…よし!』と
入れた気合も、
木っ端微塵に吹っ飛ぶほどの苦痛だとは、

夢にも思わずに…。