今年は、結婚10年目だった。

10年目の年に
生まれてきてくれた、かわいい娘。

この子が大きくなるまで、元気でいないとな!

そう思ってた。



責任感と、赤ちゃんの未来にワクワクして、
より一層、健康には気をつけてきた。

…はずだった。


結婚するまでは、何も考えてなかった。
コンビニ弁当、真夜中のスナック菓子。

体に悪いとか、気にしてもなかった。
タバコも吸ってた。1日、約一箱。
金のマルボロだった。

結婚して、
妻が手作りの料理を作ってくれるようになって、
食事が、変わった。
コンビニでお弁当を買うことはなくなり、
コーラが、お茶に変わって。

タバコも、息子が0歳だった10 年前にやめた。

お酒だって、
ここ3年は絶った。
飲んでない。

2年前のお正月に、
好きなビールを一缶、飲んだかな?くらい。

自然派とまでもいかなくても、
気を付けてた。
妻も、いつも野菜中心で作ってくれてて、
肉は?肉は?って、
こっちから言ってたくらい、
気をつけてくれてたのに…。


痛む身体。溢れるように出てくる、咳。
咳をするたびに軋む骨の痛み。

なんでや…

なんでや…。

考えても、答えは出なかった。
なんでや?
どうしてや?
なんでオレ?

そんな思考が巡るばかりで…。

牢屋みたいや。
でられやん、不安の牢屋や……。


3日の休みは、検査で過ぎていった。
明日から、出勤…。

でも、
このまま仕事に行き続ければ
身体はもっと悪くなる…
今の身体では、迷惑をかけてしまうだけや。
それに…
家族と、おりたい。
家族の時間を過ごせないことへの辛さに、
耐えられなかった。

そう思って、
これから続く検査のためにも
自宅療養に切り替えて会社を休む事を決断した。


その夜、

寝ていると、
子どもを寝かしつけたあとの妻が、隣にきた。
(いつも子どもたちを間に挟んで寝てる)

自分を抱きしめながら、

『先に逝かんといて…』と、

泣きながら言ってきた。

自分は、
『分かってる』

と答えた。

それしか、返す言葉が見つからなかった。

今の自分は、
どちらの病気でも
受け入れてやっていく心の余裕はなかった。

その夜は眠れず、色々と考えが巡った…。


このままあと生きれても、数年か?
難病と死ぬまで付き合っていくか?
家族の事をどうすればいいのか?
まだはっきり病名も分かっていないのに…

長い1日やな…。


今思い出しても、
自分の命も、
妻の事も、
未来の希望も、
こんなに不安なことはなかった。


9月13日から会社を休む事になり、
家族との時間をゆっくりと過ごして行く。

長男は小学校へ。長女はこども園へ。
それぞれ行き、

昼間は妻と0歳娘との3人の時間になった。

久しぶりの休みな気がした。
ずっと、忙しかったから。
妻とこんなふうに、
ゆっくり、お昼にしよか〜って。

ゆったりした時間は、久しぶりだった。


気づくと、
妻が、泣いてる。


妻が昼ご飯を作りながらまた泣いてしまった。

自分が
どうしたん?と聞くと

『あんなに食事に気をつけてきたのに…、
身体の管理もしてきたのに…
もう…何を作っていいのか分からない…』

キッチンで、
切りかけた野菜を前にして、
そう言いながら泣いていた。

なんて…なんて言うたらええんや?

妻のせいじゃないのに。
自分を責めないでほしいのに…。
なんて声をかければええんや…

妻の側で、
自分は何でも食べるから作って、とだけ伝えた。

その日は、妻と目も合わせるのも辛かった。

身体は前日の造影剤の副作用か、
ものすごくだるくなり、

夕方になると、さらにどんどんひどくなって、

立ち上がるもしんどかった。