前回は、副業・兼業に関する会社・労働者双方の義務についてご紹介しましたが、今回は、会社が、副業・兼業を行う労働者に対して確認すべき事項と労働時間管理の方法についてご紹介したいと思います。

 

1.会社が、副業・兼業を行う労働者に対して確認すべき事項

通常、会社が、労働者が副業や兼業を行っていることを確認する方法としては、労働者からの申告等によることとなりますが、労働者の安全配慮義務を負う会社としては、労働者の就業状況を確実に把握したいところです。

そこで、就業規則等において副業・兼業に関する届出制度を定め、労働者の副業・兼業の有無やその内容を確認するための仕組みを設けておくことにより、無用な労務管理上のトラブルを未然に防ぐことができます。

主に労働者から確認する事項としては、次のようなものが挙げられます。

 

〇副業・兼業先の会社の事業内容

〇副業・兼業先の会社での労働者が従事する業務内容

〇労働時間通算の対象になるか否かの確認・・・など

 

さらに、労働時間通算の対象となる場合には、副業・兼業先の会社との労働契約の締結日・期間、所定労働日や労働時間など、それぞれの労使間で合意しておくべき事項等も示されています。

 

2.労働時間管理の方法について

また、労働時間管理の方法に関しては、法解釈・運用に基づき、副業・兼業先と労働時間を通算する場合、しない場合を明確に整理(※)して、労働時間に関する申告等や通算管理において、会社・労働者の双方に出来るだけ手続上の負担が掛からないようにすることが、円滑な運用に繋がります。

 

※労働時間の通算に関する規定の整理

★副業・兼業先と通算される規定

・法定労働時間の適用(労基法第32条)

・時間外労働と休日労働の合計が単月で100時間未満、複数月で1か月平均80時間以内とする上限規制(労基法第36条第6項第2号・第3号)

★副業・兼業先と通算されない規定

・36協定による時間外労働の限度時間、特別条項を設ける場合の1年の延長時間の上限(労基法第36条第1項、第4項、第5項)

・休憩(労基法第34条)、休日(労基法第35条)、年次有給休暇(労基法第39条)の規定

 

例えば、①労働者、②本業先の会社及び③副業・兼業先の会社の三者間で、あらかじめそれぞれの勤務先における労働時間の上限を取り決めておき、労働基準法に基づき、各勤務先の労働時間の上限の合計が、単月で100時間未満、複数月で1か月平均80時間以内となるように設定しておけば、相手の実労働時間を把握することなく、法律を遵守することができます。

ちなみに、労基法が適用されない形で副業・兼業をする場合(フリーランス、起業、顧問、理事等)や労基法は適用されても労働時間の規制が適用されない場合(管理監督者、農業、水産業等)は、労働時間の通算は行われませんので、参考にしてください。

 

他方、健康管理に関しては、副業・兼業に関わらず、健康診断やストレスチェック等の健康確保措置は実施しなければなりませんが、実施対象者の選定にあたっては、副業・兼業先の労働時間と通算するとはされていません。

この点に関して、改正後のガイドラインでは、会社側の指示により副業・兼業を開始した場合は、通算した労働時間に基づいた健康確保措置を実施するよう求められることになります。

 

2回に分けて、副業・兼業に関するガイドラインの改定についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。これまで進められてきた「新しい働き方」への取組みに加え、現在のコロナ禍を迎えて、これからの働き方として推進される「副業・兼業」への対応について、制度を正しく理解し、そして上手く活用して、「新しい働き方」へ取り組んでいかなければならないと強く感じます。・・・詳細は、こちら

新型コロナウイルス感染の拡大により、週の実労働時間が40時間以上の人の割合が、拡大前は6割超であったものが、5月には4割強まで下がり、7月になっても5割強と回復しきれておらず、月収額についても直近の報告では3割近くが同様に減少している状況です。

このような状況から、政府では、新しい働き方の定着、大都市一極集中の是正、デジタルトランスフォーメンションなどを掲げ、コロナ禍の影響を踏まえた「新たな日常」における成長戦略の推進が進められています。

 

そんな中、コロナ禍に加えて、「新しい働き方」に向けての取組みの一環として、9月1日、副業や兼業など複数の職場に就業する人に対する改正労災保険法の施行に合わせて、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されました。

そこで、今回は、1回目として「副業・兼業に関する労使それぞれが負う義務」についてご紹介したいと思います。

 

まず、現行のガイドラインでは、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは自由であるとの裁判例を踏まえて、企業が、労働者の副業・兼業を禁止又は制限できる場合として、以下の4つを挙げています。

①労務提供上の支障がある場合

②業務上の秘密が漏洩する場合

③競業により自社の利益が害される場合

④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

 

 一方、改正後のガイドラインでは、副業・兼業を行う場合における、労働者と使用者のそれぞれの負う義務として、「安全配慮義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」「誠実義務」に関する説明が追加されています。ここでは、これらの義務が履行されない等の場合に、一定の制限ができる旨が明確化されています。

このうち、特に「安全配慮義務」に関しては、・・・続きは、こちら

 

 昨年に障害者雇用促進法が改正されて1年が経ちましたが、まだまだ効果が浸透したとは言えない状況が続いています。そのうち、今年の4月に施行された中小事業主の認定制度について、ポイントを掻い摘んでご紹介したいと思います。

 

これまでの法改正により、納付金制度の対象事業主が段階的に拡大され、現在は常用労働者数100人超の事業主に納付義務がありますが、この対象拡大により、中小事業主における障害者雇用は少しずつ発展はみられるものの、100人以下の事業主については状況が停滞していますし、障害者を全く雇用していない中小事業主も多く存在することが、研究会報告書で問題として指摘されています。

 

 そこで、今回の法改正では、中小事業主における障害者雇用の発展に対する社会的な関心を喚起し、障害者雇用に対する経営者の理解を促進するとともに、先進的な取組みを進めいている事業主が社会的なメリットを受けることができるようにと創設されたのが、「中小事業主の認定制度」(法77条以下)です。

 

これは、一定の認定基準※に基づいて、障害者雇用に関して優良な中小事業主(常用労働者数300人以下)に対して、社会的なメリットが受けられるようにするもので、評価方法としては、この認定基準の項目に対する達成具合により異なる評価点を加点する方式で、50点満点中20点以上得ることや、法定雇用率を達成していること等が認定要件とされます。ちなみに特例子会社は、獲得すべき合計得点が35点以上とされ、認定要件が高く設定されています。

 

※認定基準項目

①取組み(アウトプット)

 ・体制づくり

  組織面、人材面

 ・仕事づくり

  事業創出、職務選定・創出、障害者就労施設等への発注

 ・環境づくり(障害特性への配慮)

  職務環境、募集・採用、働き方、キャリア形成、その他雇用管理

②成果(アウトカム)

 ・数的側面

  雇用状況、定着状況

 ・質的側面

  満足度、ワークエンゲージメント、キャリア形成

③情報開示(ディスクロージャー)

 ・上記取組み(アウトプット)の状況

 ・上記成果(アウトカム)の状況

 

 この認定を受けた事業主にどのようなメリットがあるかといいますと、・・・続きは、こちら

6月10日に公表された労働政策研究・研修機構による新型コロナ感染拡大関連の影響に関する調査結果によると、民間企業に雇用される労働者のうち44.9%が、自身の雇用や収入に影響があったと回答していることが分かったそうです。

では、どんな影響があったかというと、「勤務日数や労働時間の減少」(26.6%)や「収入の減少」(24.4%)が多く、ほかに73.9%が「仕事面で特に不安に感じたことがある」と答え、理由としては、やはり「収入の減少」が40.7%に上っています。

 

 また、6月30日には、各労働局やハローワークでの相談・報告等をもとにした集計結果が厚生労働省から公表されています。それによると、新型コロナ感染拡大の影響による解雇等の雇用調整の可能性がある事業所数は4万9,020事業所にもなり、解雇等が見込まれる又は既に解雇された労働者数は2万8,173人にも上っているそうです。

 5月29日に公表された内容と比べると、約1か月間で、事業所数は約2万か所、労働者数は1万2,000人増えています。ちなみに、業種別で見ると、事業所数では製造業や飲食業、小売業などが多く、労働者数では宿泊業や飲食業、製造業の順に多かったようです。

 

 まだまだ、新型コロナの収束の目途がつかない状況のなか、先行きの見通しがしづらい状況が続いていますが、政府のセーフティネットを上手く活用し、今後必ず来る景気回復に向けて、適切な準備だけは整えておく必要はありそうです。

 

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新型コロナウィルスの影響により休業を余儀なくされている労働者の生活を支援するため、労働者に休業手当を支払った事業主に対して、申請により雇用調整助成金が支給されています。

このたび、事業主の指示により休業させられている期間の全部又は一部について、賃金(休業手当)を受けることができなかった雇用保険の被保険者に対して、申請により休業前賃金の8割を休業実績に応じて支給する制度が始まりました。

これは、新型コロナウィルス感染症対応休業支援金といいまして、あくまでも労働者保護の観点から創設されたもので、事業主の休業手当の支払義務が免除されるものではありませんので、休業手当等が支払われた場合には返納する必要があることには注意が必要です。

 

★対象労働者

中小企業に雇用され、休業手当等を受けられない国内で就労する労働者※

※新規学卒者や休業後に離職していても対象になります。

※新規学卒者以外の場合、以下については対象外となります。

①雇入日の属する月の翌月末までの期間

②休業前賃金が全く無い場合

 

★給付額

休業前賃金日額※ × 0.8 × 休業日数

※原則、過去6か月のうち任意の3か月分の賃金を90で割ります。3か月分の賃金が無い場合は2か月分を60で、2か月分無い場合は1か月分を30で割ります。

 

★上限額

日額上限1万1,000円 月額上限33万円

 

★支給対象期間

令和2年4月1日 ~ 同年9月30日

 

★支給対象となる休業日数

休業日数から就労した日数や自己都合で休んだ日数を控除

※4時間未満の就労は0.5日と算定

 

★申請手続

労働者本人による申請のほか、事業主がまとめて申請することも可能

 

★必要書類

①支給申請書

②支給要件確認書

③本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードの写し等)

④口座確認書類(キャッシュカード、通帳の写し等)

⑤休業前及び休業後の賃金の支払状況を確認する書類

(賃金台帳、給与明細、賃金の振込通帳の写し等)

 

※①②は厚生労働省ホームページでダウンロード可能↓↓

https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

 

★申請期限(各休業期間の申請期限)

・令和2年4月~6月:令和2年9月30日

・令和2年7月   :令和2年10月31日

・令和2年8月   :令和2年11月30日

・令和2年9月   :令和2年12月31日

※郵送の場合は必着ですので注意!

 

★申請方法

郵送(オンライン申請は準備中)

 

今回の支援金の大きなポイントは、支給日数と支給対象額が休業手当とは大きく異なる点です。就業規則によって企業ごとに違いはありますが、法定の最低限度で言えば、平均賃金計算の日数は暦日のため概ね同様ですが、支給対象となる日数は暦日ではなく、休業した所定労働日数に対してになりますので、1か月(暦日)の概ね6割程度の日数になります。これに対して、支援金の場合は、基本、歴日となるため、ほぼ10割の日数になります。

また、支給対象額についても、・・・続きは、こちら