■ 能力不足の労働者

おはようございます、東京都府中市の社会保険労務士 飯田弘和です。

 

 

  本日のチェックポイントはこちらです

 

【チェックポイント その415

能力不足の労働者への対応

 

採用した従業員が何度、注意や指導しても同じミスを繰り返し、まったく改まらないとの相談を受けました。

会社としては、能力に見合う賃金額への変更や、場合によっては辞めてもらうことも考えているとのこと。

 

賃金の減額変更については、原則、当事者の合意が必要です。

雇用契約も“契約”である以上、その契約内容を変更するには当事者の合意が必要となります。

ただし、雇用については、雇用契約書だけでなく、会社の就業規則や賃金規程等も雇用契約の一部と考えられるので、就業規則等の規定を根拠に契約内容を変更することも可能です。

この場合には、その変更が、“会社による権利の濫用”に該当しない限り、変更が有効になります。

 

そして、“権利の濫用”とならないためには、“変更の合理性”が必要です。

今回の件でいえば、労働者の能力不足および改善がみられないこと、そして、その能力に見合う賃金額がいくらになるかを如何に客観的に証明していくかが重要になります。

 

次に、辞めてもらう場合ですが、退職勧奨もあれば解雇もあり得ます。

退職勧奨とは、「辞めてくれないかなあ」という、会社から労働者への退職の提案です。

これに対し、労働者は自由な意思で、応じるかどうかを決めることになります。

ですから、退職勧奨を行っても、必ず労働者が辞めるわけではありません。

 

解雇については、会社からの一方的な雇用契約の解除ですので、労働者が同意するかに関係なく、解雇は有効になります。

ただし、“客観的に合理的な理由”と“社会的な相当性“がない解雇は、権利の濫用として無効となるので、安易な解雇は避けるべきです。

そこで今回の場合、教育指導をしっかり行い、それでも能力向上がみられず、他部署への異動も難しく、これ以上、雇用契約を継続することが難しいといった状況が必要でしょう。

 

「何でそこまで!?」と思うかもしれませんが、日本では、解雇がそれほど難しいのです。

ただし、解雇無効を判断するのは、あくまで裁判であり、裁判で無効との判決が確定するまでは、解雇は有効と考えられます。

 

以上の考え方を参考に、会社としてそれぞれのリスクを評価し、どのような対応をしていくかを判断していただくことになります。

残念ながら、万能の対応方法などありません。

 

 

ペタしてね

 

発信者プロフィール
 
 社会保険労務士事務所いいだ
     社会保険労務士  飯田弘和(いいだひろかず)
〈詳しくは、HPにてご確認ください〉
                           

 https://soudan-iida.jimdo.com

就業規則の作成・見直し、労務管理コンサルティングへのご相談につきましては、当事務所にご相談ください

■ 休憩時間

おはようございます、東京都府中市の社会保険労務士 飯田弘和です。

 

 

  本日のチェックポイントはこちらです

 

【チェックポイント その414

休憩時間について

 

雇用契約書や就業規則で定められた“休憩”が取れていないとして、労働者から、その分の未払い賃金を請求されることがあります。

 

たとえば、雇用契約書で、以下のように定められていたとします。

始業  9:00

終業 17:00

休憩 1時間

この契約では、拘束時間8時間、労働時間7時間となり、7時間分の賃金が支払われることになります。

そのため、休憩が1時間取れなかった場合、その分は労働時間として、賃金を追加で支払う必要があります。

 

ところで、「休憩時間」とは、「労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間」をいいます。

そのため、現実に作業は行っていないが、何かあればすぐに対応するために待機しているような状態は、休憩時間ではなく、「手待ち時間」として労働時間となります。

 

休憩時間であれば、労働者が自由に利用できることは当然ですが、その“自由利用”も絶対的なものではないと考えられています。

そのため、休憩時間中の外出を会社の許可制にする場合や休憩時間中であっても事業所内での政治活動を会社が禁止するような場合でも、休憩の本来の目的を害さない限りO.K.です。

最高裁判決でも、休憩時間の”自由利用”について、「時間を自由に利用することが認められているに過ぎず、企業秩序維持のための制約を受ける」としています。

 

休憩時間か待機時間(労働時間)かで揉めることが多いのが、夜間のワンオペ作業です。

ワンオペですと、何かあったら対応せざるを得ないことが多いと思います。

そのため、たとえ、実際には作業等を行っていない時間が多くあり、労働密度が薄い仕事でも、“労働から離れることが保証”されていないとして、労働者から休憩が取れていないとの主張がなされます。

これって結構グレーで、地裁判決では、ケースによって必ずしも労働時間と判断されるわけではないのですが、かなり注意を要するところです。

たとえ1回10分・15分のコマ切れでもいいので、完全に労働から離れる時間をきちんと作る等の対応をしておいた方が会社としては安心です。

 

 

ペタしてね

 

発信者プロフィール
 
 社会保険労務士事務所いいだ
     社会保険労務士  飯田弘和(いいだひろかず)
〈詳しくは、HPにてご確認ください〉
                           

 https://soudan-iida.jimdo.com

就業規則の作成・見直し、労務管理コンサルティングへのご相談につきましては、当事務所にご相談ください

■ 退職代行サービス

おはようございます、東京都府中市の社会保険労務士 飯田弘和です。

 

 

  本日のチェックポイントはこちらです

 

【チェックポイント その413

退職代行サービス

 

ゴールデンウィークがあけてから、事業主からの「退職代行業者から、従業員の退職について通知が届いたが、どうしたらよいか?」といったご相談を受けることが増えました。

 

退職代行業者とは、従業員に代わって、会社に対し、退職の意思表示をする事業者をいいます。

しかし、この“退職代行業者”には、違法あるいはグレーな事業活動を行っている事業者も多くいます。

 

弁護士法72条で、弁護士や弁護士法人以外が、報酬を得る目的で、法律事務を行うことを“非弁行為”として禁止しています。

違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑に処せられます。

退職代行業者が、会社に対して従業員の退職の意思表示を代行することや退職条件について交渉することは弁護士法72条違反(非弁行為)となります。

退職代行業者にできるのは、従業員の伝言者(要は、つかいっぱしり)として、従業員が退職を希望していることを会社に伝えることだけです。

要求や交渉はできません。

 

また、最近は、退職代行業者が弁護士と提携していることがありますが、弁護士が非弁活動を行う者と結託することは禁止されています。

弁護士や弁護士法人が、非弁活動を行う者に自己の名義を利用させることも、弁護士法で禁止されています。

 

ですから、弁護士または弁護士法人自らが退職代行を行わない限り、退職代行サービスは、単なる“つかいっぱしり”が行う何ら法的効力のないものか、あるいは非弁行為として違法・無効となるものです。

そして、そのような者から従業員の退職の申し出があっても、それは正式な退職の申し出とは認められず、そんな申し出に応じる必要はありません。

 

もし御社に、弁護士あるいは弁護士法人以外の退職代行者から、従業員の退職について通知等が届いても、原則、相手にせず、従業員本人と直接、話すべきです。

ちなみに、会社が違法な退職代行業者と退職に関する事項について合意しても、それは無効となります。

 

 

ペタしてね

 

発信者プロフィール
 
 社会保険労務士事務所いいだ
     社会保険労務士  飯田弘和(いいだひろかず)
〈詳しくは、HPにてご確認ください〉
                           

 https://soudan-iida.jimdo.com

就業規則の作成・見直し、労務管理コンサルティングへのご相談につきましては、当事務所にご相談ください