ICUに救急搬送された夫のその後です。


早朝、待合室にて、看護師さんがたくさんの書類を持って、入院説明に来てくれました。


そこで初めて知ったのです。
報告書に「右前頭葉に脳腫瘍の疑い」と書いてありました。


心筋症でなく、脳腫瘍って?
ドクターXとか、ドラマでしか聞いたことのない、これまで無縁の病名に、目の前が真っ暗になりました…。


入院説明の後は、ICUの医師説明があり、
CTにて黒い影がある部分が脳腫瘍。
一部出血している。
痙攣を抑えることが先なので、今は薬で眠らされている。
人間の体は本来酸性とアルカリ性がバランス良く保たれているが、痙攣の影響で強い酸性に傾き、危険な状態だったこと。
などを知らされました。


少し待たされた後、私だけ面会が許されました。
コロナのせいで、子供は面会禁止です。


上半身裸で、口に挿管され、あちこち管に繋がれた夫の姿に、愕然としました。
「手を繋ぐと握り返してくれますよ」
と言われましたが、反応なく。
私の知っている夫の姿ではありませんでした。
少し経つと私の呼びかけに反応したのか、口の管を取ろうと手を動かしながら、顔をしかめて暴れ始めました。


すぐ先生が来て、これは痙攣でなく、意識が戻りつつあり挿管が不快で暴れているだけなので良い傾向ですが、今は眠ってもらいますと、薬が追加され、間もなく眠りにつきました。


不快だったのか、目にうっすら涙が浮かんでいた夫を見て、私も初めて涙が出ました。


意識が戻れば本日中に一般病棟に移れると聞いたので、お腹が空いたとぐずり出した息子を連れて一旦帰宅。


コロナと緊急入院のダブルパンチで、先行き不安ですが、一生懸命対応してくれる医療従事者の方々には感謝の気持ちでいっぱいになります。


コロナの影響で、面会時間が決められており、基本的に本人とは面会禁止、こちらからの電話問い合わせも禁止、一方的に病院側からの連絡を待つ旨、指示を受けました。
このご時世、クラスターを起こさないためにやむを得ない対応と思います。


我が家は、どちらの両親も遠方に住んでいるため、近くに頼れる人がいません。
東北に住んでいる義母が、朝一の新幹線で来てくれ、昼には合流できました。
義父は医師で、義母共にしっかりした両親のため、泣いて取り乱すこともなく、冷静で、落ち着いていたので、私みたいに頼りない嫁にとっては、本当に心強い限りです。


午後の面会時間を待つ間、病院から良いお知らせとの電話がありました。
意識が回復し、一般病棟に移るとのことでした。


病院に着き、入院に必要なオムツ等を渡してから、遠方から義母が来たので、義母だけでも会わせてもらいたいとお願いすると、面会が許可されました。
夫と会った義母が戻ってくると、看護師さんから、夫が「おーい」と呼んでいるとのことで、戻って下さいと言われたので、今度はあなたが行きなさいと、私が行くことになりました。


生きてる!!と感動!!


土気色して、顔のむくんだ別人のような夫が、ベッドに横たわっていましたが、生きてる!!それだけで嬉しい!!


「大丈夫?」と声をかけると手を挙げてくれました。
安堵して、うるうるしました。
何が起きたか先生から聞いた?と聞くと、頭を指差しました。
何があったかは、全く覚えてないそうです。
「不動産屋に連絡して、土地の契約遅らせてくれる?」


我が家、注文住宅を建てる予定の土地の契約を2週間後に控えているところでした。
夫はこんな状態になっても、土地の契約を気にしていたのです。


もういいよ!土地は!やめよう、社宅でいいよ。治ってからまた探そうと言っているのに、
「何で?」と言うのです。


駅近で、日当たり良い南向きの、通勤にも便利な、土地でした。


大変残念だけど、脳腫瘍というワードを見てしまった今、到底一軒家を買う勇気など起こるわけもなく。
ローンうんぬんより、もし、私達を残して逝ってしまったら?と考えると…。


また、仕事のことも気にしていたので、あなたの上司と連絡が取れているから大丈夫と安心させてあげました。
私も夫と同じ会社の元社員で、社風をよく知っているので、こういった時安心して休めることもよく知っています。


「仕事のことは何も心配しなくて良いから、ゆっくり治療に専念して下さい」とのお言葉をいただきました。本当にありがたいことです。


その後、脳外科の担当医からCTについての説明がありました。
本人には、頭に悪いところがあると伝えた以外、説明は行なっていないとのことでした。


右前頭葉に、ぼやっとした大きい腫瘍があり、範囲は約5センチ。全てが腫瘍なのか、浮腫を含んでいるかは、造影剤を使ったMRIと、血管造影で分かるだろうとのこと。
今は、痙攣の影響で、腎機能が低下していて造影剤が使えないため、それが良くなり次第検査となる。
良性や転移性の場合は、ころっとした形のものが多いが、こういったボヤッとした形の場合は、悪性である可能性が高い。
脳腫瘍の原因はないとされている。


など、私たちの質問にも、分かりやすく答えてくれました。


医師の義父曰く、期待させるような甘い言葉より、はっきり言ってくれる医師のほうが信頼できるとのこと。


悪性…って治るんだろうか?


私たち、どうなってしまうんだろう。


不安だけがぐるぐる回ります。