高校生編⑤
過去をさかのぼって出す答⑱
覚えてる事と言えば、その日は自分の中で『少しでも自分のチームが負ける』ってことを考えない。よぎらせないことだった。そのため『必ず勝つ。勝ってインターハイに必ずいく』ってことだけを念じていた。
大会1日目、個人戦があったが俺は2回戦で涙をのんだ。他のメンバーも初戦で敗れていった。
大会2日目、いよいよ団体戦が始まった。
俺は高総体前の練習、練習試合は、自分の思う剣道ができず、チームに迷惑ばかりをかけていた。だから心の中で、『こんな調子じゃ高総体も負けてしまう。最後の試合だから誰も責めはしないだろ』と投げやりな気持ちを持っていた。
だけど、何かが俺を奮いたたせた。
多分それはこの高校3年間の『俺の剣道』だと思えた。
勝った試合もあれば負けた試合もある。その一試合一試合が、俺をここまで育ててくれた。いや、小学1年の頃から始めた俺の剣道が、ここまで、今日まで俺を守り育ててくれた。
恐れるものは何もなかった。
ベスト16。
相手は手強いチーム。
団体戦は5対5。タイマンで競っていき、5試合中、勝者の多い方が勝ちとなる。
この試合、俺は5番目。最後の砦だった。
俺に回ってきた時、チーム共に2対2の同点だった。
俺は、昔からここで勝負が決まるっといった試合で、ホントに勝率が低かった。
いつもの俺ならプレッシャーに潰され、弱気な試合をしていただろう。俺だけど、その時は違った。
前にも述べたが、『必ず勝つ。勝ってインターハイへ!』
これだけを頭の中に叩きこんで、プレッシャーを追い払っていた。
試合開始。
相手は体格もたくましい。名前も県下では知らないやつはいないだろう。2分間くらい、お互いの譲らぬ攻防が続いた。
しかし、
勝負は一瞬だった。
俺がスッと前に出た。
すると相手の面が俺目掛けて攻めてくる。
ここだ!
俺は本能で相手のコテを打つ。
俺のコテを打つ音が響いた。
まずは1本先取。
そして2本目。これも一瞬だった。
両方とも面へ飛んだ。
これで勝利チームが決まる!
続く。