3月末まで寒い日が続き全く桜が咲かなかった2024年。4月に入るとともにようやく暖かくなり桜もほころんだその第一週末、ほどよく霞む青空の下、いつものモノレール散歩に出かけた。

 

 

西鎌倉駅近くで見つけた小さな春。大谷石の擁壁が連なる町にも麗らかな季節がやって来た。

 

 

西鎌倉駅前の歩道橋に上ると春色の住宅地をバックに真っ赤な帯も凛々しい5000系第1編成が滑るようにやって来た。

 

 

先に撮ったいつもの定番アングルだと線路脇の桜が列車に隠れてしまうため、少し立ち位置を変えて線路北側の桜と奥の丘の桜を同時に入れてみた。はっきりと晴れていれば側面逆光サイドになってしまうのだがそこまで気にならないのも春のぼんやりした陽射しの下ならでは。

 

 

今度は横長構図(*200mmトリミング)に替えて1枚。黒帯の第6編成は引き締まって格好良いのだが、色彩豊かな春の景色の中ではちょっぴり華に欠けるかもしれない。

 

 

若葉の色にも似た黄緑色が鮮やかな第3編成。この日、ヘッドマークを掲出していたのはこの第3編成とピンクリボンの第7編成のみで、珍しく他の編成はヘッドマークなしで走っていた。

 

 

待っていた赤帯第1編成が大船から戻って来た。若芽に桜のパステルカラーの中、真っ赤な帯が一層引き立つ。湘南モノレールの西鎌倉付近では丘の上の住宅地から見下ろす谷筋を懸垂式の軌道が進むが、斜面の豊かな緑を下から見上げて行く景色も、都会の幅広道路を見下ろして走るモノレールとはまた違い、良いものだ。

 

 

さて、西鎌倉駅前の歩道橋でしばらく撮影した後は京浜急行道路沿いに湘南深沢方面へ歩いて行く。赤羽交差点手前、COOPの裏ての桜を見ながら去り行く青帯の第2編成を見上げると、車掌が片手を出して外の風を感じているようだった。

 

 

途中モノレールはトンネルに入ってしまうが、そのまま京浜急行道路を鎌倉山方面に上って行く。春色の木々が装う鎌倉山にはちょっと主要道路から外れればこんな景色も。

 

 

この日はこの後も所用があるため鎌倉山の奥まで深入りする気はないが、さくら道をずっと進んで行くのもまた良いのだろうなぁ…と思わせる鎌倉山ロータリーの景色。中央に立つ碑は関東大震災で倒れた鶴岡八幡宮の鳥居を転用したものだとか。

 

 

鎌倉山ロータリーから湘南深沢方面に少し降りたところで、定番のショットを。ちょうど同業の方が先にいらしていて一緒にお話しながら撮影させて頂いた。湘南モノレールと桜の組み合わせでは有名なスポットなのだろうが、こんな絶好の天気の日曜日にもかかわらず同業者は1名。お互い、湘南モノレールがあまりファンや観光客に注目されていないので良いですよね、なんて笑いあったものである。

 

 

同じ場所を坂下から狙う。湘南モノレールは湘南深沢~西鎌倉間にある鎌倉山トンネルで鎌倉山を貫く。もとはと言えば鎌倉山の別荘地に住む人々がモノレール建設に伴う桜の伐採に反対したからだというような言い伝えも残るが、結果として駅ができなかった鎌倉山はモノレール沿線でもやや交通不便な地域となり、秘境感漂うその佇まいはそのまま保たれることとなった(鎌倉山からだとモノレールを使わず本数の比較的少ない鎌倉山バス停発のバスで大船に出る人が多いようである)。何にせよ、鎌倉山トンネルは世界初となった懸垂式モノレールのトンネルで、木々に囲まれる山間のカーブを谷をも飛び越えながらスピードを上げて走り抜けしまいに床にレールのない不思議な形のトンネルに飛び込む景色は湘南モノレール車窓のハイライトの一つと言って申し分ないだろう。日本ではモノレールというと路面電車の現代版という位置づけで建設された都市の交通という路線が多いように思うが、四季の色に彩られる山間を行く単線の湘南モノレールはその車窓も実にローカル線然としており、美しい。

 

 

ちょっと軌道に近寄り、今度は横構図でトンネルから飛び出して来た青帯の第2編成と、桜の枝と、そして変電所の下を埋め尽くす菜の花とを切り取った。右側に見えるのがモノレールの運行を支えてくれている変電設備。

 

 

湘南深沢に向かって降りていくピンクリボンの打7編成と、白い花弁に緑の葉が爽やかな大島桜と。一見何のこともない景色だが、画面左下、遠方で坂道をぐいぐい上がって行く湘南深沢~湘南町屋間の軌道を見ると、如何にこの路線がアップダウンを繰り返しているかが良く解る。

 

 

最後は鎌倉山トンネルに吸い込まれていく列車を正面から撮り、機材をまとめて湘南深沢の駅へと向かった。鎌倉市北部から藤沢市東部にかけての丘陵地帯を豪快に飛び越えつつ大船と江ノ島とを連絡する湘南モノレール。沿線の景色は飲み屋街もある商業地の大船から始まり、準工業地帯を抜けて鎌倉山を境に丘陵住宅地に一変、最後は片瀬山のサミットを越えながら相模湾を遠望し一気に高度を下げて行く。そんな変化に富むローカルモノレールを、今後もゆっくりと追って行きたい。