装丁ベスト-いずれは死ぬ身


柴田元幸氏編訳のアンソロジー。
デザインは、BUFFURO.GYM、角川がやっていたブックプラスとか、パウロ・コエーリョの本とかをやっていたところですね。
若々しいイメージというか、ハイセンスなイメージというか(なんか語彙がおやじくさくてすいません)を持っているのですが、これは渋いですな。
イラストレーションは、クサナギシンペイ氏。マコーミック(だっけ?)の「ザ・ロード」のイラストが記憶に新しいですが、装画って感じじゃなくて、作品ぽい強さがありますね。
そのイラストの邪魔をしまい……みたいな装丁。
すごくハマッてますが、英語作品のアンソロジーなのに、ちょっと和な感じが不思議。
デザイン処理の仕方で、もっと欧米っぽい感じにすればなるとは思いますが、あえて、ということなんでしょうね。

装丁ベスト-人生問題集


エンボス紙にグリーンをしいて、白抜きの箱にスミでタイトルをのせている。
エンボスにむりやりのせたグリーンのでこぼこした感じがペンキっぽくて、
渋いけどモダンというか。バーチャルな渋さというか。
おふたりの著者のテイストにあっている。
ミソは、この箱が微妙にななめっているということ。
左上が、右下より2ミリあがっている。
ぱっと見、下がっているようにも見えるけど、んん……?
という気持ち悪さ。ものさしをあててみるまでわかりません。
デザイナーは高柳雅人さん。角川書店の装丁室の方でしょうか、
角川の本でおみかけする方です。

装丁ベスト-すべての男は消耗品である vol.10


村上龍さんの最新エッセイは、鈴木成一デザイン室によるものです。
村上さんの本は、鈴木氏がやったものがいちばんいいですね。
鈴木氏も毎回、気合いを入れてやられているように見えます。
これはオビなしで、下半分にタイトルを白のホットスタンプというのか、
特殊加工でバシっと決めています。
右上のほうにコピーが入っています。
オビなしは下手にやるとマイナーな感じになりがちですが、鈴木氏がやってマイナーになるはずがありません。
このデザイナーさんは、いちばん「メジャーな感じ」を出される方だな、と思います。
近年、世の中一般の装丁のレベルはあがってきていると思いますが、その中でも鈴木氏がずっとトップにおられるのは、つねに自分を更新して、新しいデザインをされつづけているからだと思います。
このバシッと太くて安定していて強い感じは、鈴木氏以外の何ものでもないのですが、それでも新鮮な感じもするので、おおっ! と思うしだいです。


装丁ベスト-骸骨ビルの庭(上) 装丁ベスト-骸骨ビルの庭(下)


「骸骨ビルの庭」、宮本輝さんの新作は、大久保伸子さんの手になるものです。
大久保さんは、明子名義で芥川賞の装丁など、文学作品を多く手がけられていて、近年では川上弘美さんの「真鶴」で講談社出版文化賞を受賞された才媛です。
何かのインタビューで、「あなたのデザインって何か太いよね」と言われた、と言っていたと思いますが、たしかにガシッとした強さというか太さというかがあります。
これ、並んで陳列されている様子はかなりインパクトがあり、週末の書店さんでいちばん目立ってました。
未読ですが、いかにも著者渾身の力作のように見えてくるから不思議です。
装丁って大事ですね。

装丁ベスト-首鳴り姫


これは中村至男さんデザイン。
彼も、書籍がメインではないデザイナーさん(アートディレクター)ですね。
がつがつしていなくて、ひたすらデザインとしてとんがったものを出してきた、
という感じでしょうか。
これは、カバーがなくて、表紙にツヤのビニールコーティング(PP)が
されています。
絵はカンディンスキー。
角背です。
書名と著者名は、ナールというのか、ちょっと丸みがかった文字で、
きっと素人が不用意に使うとだっさい感じになってしまうようなものだと
思いますが、文字がそれほど主張をしすぎないというか、
さりげなくすんなり収まっています。
とにかく絵の魅力を引き出したかったという感じだと思いますが、
きっとそれはなかなかできないことなんでしょうな……。
できそうでできない匠のワザ、と申しておきましょう。
内容にもとても合っています。

装丁ベスト-点─ten─

宇多田ヒカルの自伝&名言集。
ふつうに考えると、著名人でしかもかわいいおなごの本なのですから、
ぺらぺらの紙にツヤツヤの加工をして、
ばばーんと大きな著者の写真。
これでOKというか、それがベストだと思います。
しかしそこはくせ者の著者だけに、
デザイナーものっかって、オモシロイ
デザインをしてきました。
子どもが描いたような字をぽんとのっけただけ。
この字、クレヨンのようなカスレ感なのですが、
独特の字の下手さとあいまって、
ほんとに子どものノートみたいです。
親近感を演出したかったんですかね。
黄色の面積がでかくて、
このシンプルさはちょっと目立ちますね。
背なんかすごい変ですよ。
太くて白いオビがついているのですが、
そこには何も書かれていないので、
下三分の一は、ただ白い腰巻きになっているだけ。
上のほうには、表と同じ手書き文字がぽんとある。
本文の組み方とかは、
この手作りセンスとはぜんぜんちがって、
現代的でカッコいいです。
デザイナーは、たしかR25とか、
ミシマ社の「アマチュア論。」(これも変な装丁だった)
をやっている、一流デザイナー、
尾原史和@SOUP DESIGN

いい悪いは別として、
主戦場が書籍ではないデザイナーさんは、
独特のデザインをするように感じます。
中島英なんとかとか、佐藤かしわ氏とか。
がっつかないといいますかね。
書籍専門のデザイナーさんの「ゼッタイ売るぞ……」
という意気込みとは、別の文脈でくるデザインというか、
そもそも、書籍の手に取られ方の「あたりまえ」を知らないから、
結果的にそうなるのか……。
だから、あんまり小物著者の本には合わないかもですよね。

装丁ベスト-バーデン・バーデンの夏

新潮社のクレストブックスという海外文学のシリーズの一冊です。
装丁はもちろん新潮社装丁室。
クレストブックスの装丁は、ほとんどぜんぶすばらしいです。
かつて誰だったか偉いデザイナーさんが、
装丁なんてものはいい絵(写真)があれば決まる、
といっていたのですが(とがったデザイナーさんが聞くと
怒り出しそうですが、僕は、深い! と思った)、
それを証明するような装丁。
イラストは、装画ではかなり売れッコの、
木内達郎さん。
クレストブックスでは、『ソーネチカ』で描かれていましたが、
これもよかった。
デザインとしては、
やわらかいタッチの上に、
黒い四角をぼんとのせちゃっていますが、
それによって都会的というか、デジタルな(?)センス……
というのか現代的な感性が入ってくるので、
読む気にさせます。
白抜きのタイトルのわきに、オレンジでロシア文字も
入っていますが、これもなんだか未来っぽくていい感じ。
そしてこのシリーズ、背が赤いのがちらっとカバーを
みるときにも目に入るのですが、これもカッコいいんですよね。
隠し味のとうがらしです。
オビのデザインは妙にゆるかったですが、
あんまりデザイン化しすぎると言葉が頭に入ってこないから、
あえてそうしているようにも思います。
結論としては、「いい絵があれば、いい装丁をつくるための
条件が整う」ということですかね。

装丁ベスト-厭な小説

これはグッッッッジョブ!
このぼろぼろ感、カバーだけでなく本文にも表紙にも
一貫しています。本文の紙は、それほど粗悪ではないものの、
ちょっとぼさぼさした紙をつかっていて、
印刷(デザイン)で黒ずみを出しています。
カバーをめくって表紙をみると、
ほんとうに昔の本であるかのような
ぼろぼろ感が再現されています。
一見の価値ありです。
デザイナーさんは誰だろう……、
ここまで徹底するのは祖父江慎さんぐらいか……
なあんて思ってチェックしたら、
松昭教さんでした。
えらい!



装丁ベスト-1Q84


村上春樹の話題の新作。
デザインは新潮社装丁室。
大好きなデザイナ室で、私ならずとも、
ここがいちばん好きという人は多いと思う。
が、今回のは個人的にはあまりぴんとこなかった。
地味というか。
このタイトルなら、いくらでもカッコよくできると
思うのだが……。
おそらく、著者の意向も強いと思うが、
できるだけ余計なイメージが付かない方向で、
ということでこんな感じになったのではないか。
まあ、カルトを扱った内容なので、
不気味ですよ……という雰囲気は出ているので、
これはこれで正解なのだとは思う。
個人的には、「スプートニクの恋人」「国境の南、太陽の西」
のハードカバーのデザインが好み。前者は坂川事務所、
後者は菊池信義氏のデザイン。


装丁ベスト-脱「ひとり勝ち」文明論


ミシマ社の新刊です。
寄藤文平さんデザインです。
JTの絵の人……というイメージがありますが、
独特の温かみのあるデザインは特徴がありますね。
画像はちょっとぼんやりしててわかりにくくて残念ですが、
緑1色の箔押しが、とてもキレイです。
緑のギャバンとかシャリバンみたいなキラキラが
未来っぽさを出している一方、
手書き文字とカバーの紙の素材感の温かみが、
脱「ひとり勝ち」なやさしさを醸し出しています。
すてきな装丁です。