私は緊張しながらも頭部にはヘルメット、マスク、さらにゴーグル

催涙スプレー対策のため腕にサランラップをまき

立法府=議事堂前、その最前線の熱を取材した。

 

 

 

(香港 立法府 日本の国会議事堂にあたる政府機関)

 

 

 

 

 

(BBCなど海外からの取材陣も)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモ参加者たちが完全に香港立法府のエントランスを壊し

さらに議会侵入を試みたところで私は現場を後にする判断をした。

現場から中国解放軍が待機するビルは目と鼻の先。

車でサイレンを鳴らせば3分ほどで到着が可能な距離だった。

いつまた催涙弾やゴム銃による制圧が始まるか分からない。

 

 

この日、7月1日は香港の返還記念日。

自由と民主主義の象徴の一日のため毎年デモが行われている。

(もちろんそれらは逃亡犯条例以前は緩やかな市民パレードが中心だった)

香港在住の日本人起業家たちや

先に現場に入った先輩日本人ジャーナリストからも忠告を受けていた。

 

 

デモの中にはCIAや中国解放軍、中国公安部隊が紛れ込んでいる可能性がある。

十分に気をつけろ。

 

 

編集者への締め切り時間も迫っていた。

 

間違いは起きないとは限らない。

アフリカ、南米などで無茶をしてきたがここは同じアジア香港。

肌の色、文化が近い分、誤解をかけられ拘束でもされたら堪らない。

日本人のフリー記者はいない。

先輩ジャーナリストたちは200万人デモを取材したタイミングで帰国していた。

新聞社の滞在員たちはいる。フリー記者の意地もある。

 

 

 

 

朝、ホテルを出る際にパソコンを携帯せずに忘れていたことが幸いした。

パソコンがあれば現場近くから原稿を書き

再び立法府内に戻っていたかもしれない。

そして深夜の警官隊との衝突に居合わせることになったかもしれない。

 

どこまで追うか、どこで引き返すか。

一記者として歴史的な瞬間をカメラに納めたい気持ちはもちろんあったが

何が起き、何を伝えるかが私たちの領域であったし、

それはこれから始まる危険に見合うのか?今思い返しても判断は正しかったと思う。

 

 

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深夜、24時を超えて警察が動く。しかも大量の機動隊を従えていた。

抗議者を催涙スプレーで鎮圧。

デモ隊の一部が立法府内に侵入した直後から

立法府外にいる市民からは警察機動隊の出動の注意を促す発言が

多く行われていた。

 

制圧部隊は

26時 香港市外バスターミナルに警察を派遣。

デモ参加者を取り調べ逮捕した。

 

私は帰国ため一旦空港まで向かったが

動向が気になり

飛行機を翌朝まで遅らせる判断をした。

原稿は編集部に投げた。ただ香港に留まることで、この日の夜を彼らと共有したかった。

 

 

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現場では何が起きていたか?

22時頃、デモ隊は立法府、議事堂の議会場を占拠し

思いの丈をスプレー缶に込めたメッセージによって表現した。

"ここに暴政あり"

訴えの書きなぐり

厳粛さを備えている議事堂、香港立法府の光景は一変した。

 

 

私が現場を後にした数時間後には

報道ステーションなど日本のニュース番組にてトップニュースとなり

翌朝の朝刊には一面記事となった。

 

 

残念ながら、一部報道では市民が暴徒と化したとあるが事実ではない。

彼らの攻撃対象は政府機関に限定されていた。

他者への暴力ではなく、象徴への破壊行為だった。

 

政府は不当逮捕された仲間を釈放しろ。

政府は自殺抗議者に対しての考えを明らかにしろ。

 

デモ参加者がゴム弾によって顔面を打たれた、

警察こそが暴力を使い

誰が香港市民に向けて銃を放ったのか?

 

香港警察か?中国解放軍か? その責任を明確にしろ。

 

 

 

当然、この出来事はオンタムでニュースとなり新聞の一面を賑わせた。

香港市民の間でも

破壊活動が正当なのか議論が別れたことは事実だ。

 

 

(後記 最新情報

香港議会占拠に関わったことで訴追を恐れるデモ参加者30人以上が、

保護を求めて台湾入りしたという。台湾政府は受け入れを表明した。

7月19日 AFP 通信 Amber WANG 記者より )

 

 

 

 

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参議院選を控え、文字数の限られた私の原稿は事実のみを書き残すのみとなったが

ここに改めて文章とすることで(写真を公開することで)

インタビューを試みた多くの現地の方々のご協力に報いたいと思う。

 

 

 

立法府前にて、割れたガラスの破片で指を切り、血を流したが

救護班が丁寧に止血を施してくれた。

 

 

 

香港空港から出国の際

ダースベーダーのようなヘルメット、ゴーグル類については

何も問われず、機内手荷物として認められた。

 

 

 

 

 

 

香港での逃亡犯条例に対する市民の抗議活動は続いている。

 

 

日本に帰国すると、曇り空がやけに広く感じ

香港の喧騒とビル群と

路上を埋め尽くす人々を思い返さずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取材 text by Sotaro Ohdake 

( 本ブログの転載はお断りします )