永遠の夏なんて嘘だ
最低気温 16℃
ブラジル サンパウロには日本に似た彩度の低い憂鬱な曇り空が広がっていた
高速道路の脇
広がる山々の木々は高く緑は深い、丘の上には色あせたレンガの家が並び
羊やヤギが飼われている
酸性が強く農業に向かないPHを多く含んだ赤い土
森の中の十字架 特大の国旗=アウリヴェルジが風を受けている


地下鉄にはあらゆる肌の色の人間が乗り合わせ
試合会場のスタジアムにはやはり白人が多かった

憧れていただけに事前の情報を入れず
小説で読んだこの国の景色は
うすぼんやりとし色彩を欠いていた

南アフリカでの取材を終え、なんとかして辿り着き
今、目の前に広がり、この国の空気を吸い込む事が出来ても
ピントがずれた違和感は拭いきれない


コンフェデレーションズ杯が終わり、
優勝の翌日には日常を取り戻したサッカー王国
ビジネス街の銀行はデモの影響を受け破壊され営業を休止していた
ワールドカップ本番となれば学校会社が休みになるこの国では
コンフェデ=プレ大会は所詮準備であり練習であるようだ
街を見渡しても人々が大会に熱をあげる印象はない
バス公共料金の値上げに端を発したデモの暴徒化、各地への広がりが目下の所トップニュースとなり人々の関心を引き続き幹線道路の車を止めた

サンパウロ ベロオリゾンテを経由し早くも総移動距離は1000キロを超え
3年後に五輪開幕を控えたリオデジャネイロに到着した
ビーチ沿いには高級ホテルが並び露店商が集まる
隣につられやすい同じ様な品も名が並ぶ一方
アンデス地方の先住民系の血を引く男の姿も目にした
街の外れの岩山にシェラトンとファベーラが隣り合っている


たった数種類憶えたポルトガル語で火を貸し合い煙草を吸い
安い豚肉を買い 宿の小さなキッチンで焼き食べる
今までの安宿と違い暑いシャワーを浴びる事が出来
また野外テラスからは眼下に大西洋と水平線を見渡す事が出来る
ここから水平まで何キロくらいあるんだろう?
魚眼レンズで覗いたように地球の丸みが空に映っている
僕らはこの場所が気に入り一週間の延泊をする事にした



大西洋に斜めの影が落ち
コルコバード像がオレンジの夕陽に照らされていた
覚えのある少し危険な匂いと共に夜がやって来て目が覚める感覚を憶えた
見た事もない下弦の月が現れ、無数の星達が顔を見せる
冬の憧れを唄った歌を思い出した
ブラジル国旗 アウリベルジ
進歩と秩序と記され
リオの空から見た星座がデザインされている事を知った
ファベーラが丘の上まで広がり家々に白やオレンジの火が灯っている
夜に見るその光景はやはり美しかった