午前2時に起きデニーズへ
お代わり自由のアメリカンコーヒーをがぶ飲みし作業に没頭した
出国までの時間は迫る一方
領事館、メンバーとのミーティング 航空券(airチケット)の手配、文章動画の整理と
必須作業は思った以上に消化出来ないでいた

メニューがモーニングに切り替わる頃ようやく作業が一段落し
PCの充電が切れた

陽が昇り空気が完全に朝に変わった
登校途中の小中学生の波を逆行するように部屋に戻る途中
歩道脇、街路樹垣根の下に黒い物体を発見した
手に取るとIphoneで充電が切れている
僕は不思議とよく物を拾う
よく手入れされたクラシックギター&ケース
(廃品処理のシールが張ってあった 持ち主が亡くなったと想像した)
木製のデザイナーテーブル&チェア(机を拾った数日後椅子を拾った)
欲しいなと思う物が、ゴミとして或は廃品としてある日目の前に現れる
有り難くちょうだいし部屋に戻る
厳密に言えば法律違反らしい
しかし、ギター弾きとしてはやはり美しく手入れされた美しいギターを
ゴミとして見逃せる程、法律を重んじる人格を持ち合わせてはいない

この件は
清志郎が亡くなって数日後の出来事で
勝手に清志郎からのメッセージと解釈した

僕は現在ケータイ電話を所有していない
一時帰国の身で要らないからだ。しかしiphone1台有れば動画を取りPCに読む事なくUPする事が出来る
シムカードを変え、初期化し、シムロックを解けば
持ち主にも迷惑がかからず使えるな などと、一瞬よからぬ想像をしたが
直ぐにそのケータイが友人の友人の持ち物と判明し無事に連絡がつき
持ち主の元へと返って行った


煙草を吸い一時間程作業に戻った後
伸びきった髭を整え
歯を磨き家を後にした

旅行代理店であらかじめネットで目星をつけていたチケットを確認
サーチャージを確認したが購入は見送った


昼食をとり山手線に乗り込むと午後の日差しが気落ちよく食後の満足感、気持ちいい電車の揺れが
眠りを誘った
午前2時の早起き?
飛び込みで行く丸の内の某企業には約束時間がなく
僕は眠りを求める自己の欲求に従う事にした
渋谷から品川方面に電車は進む 目的地の東京を通過し30分
眠りから醒めると電車は大塚駅に止まっていた
体が軽くなっている、初夏に似た日差しが車内に差し込み逆光の中見るサラリーマンの顔は
普段感じるそれよりも肯定出きる暖かさがあった
ホームに降りる
天気の良さ空気にも風にも心地良さを感じる



呼吸をすると急に懐かしさと不思議を憶えた

なんだろう 覚えがある なんだろう ?
記憶を辿り思い当たった
もう8年程前だろうか
例えば年齢は20~21歳で、僕らはその時間、その時期
青く若い日々を満喫し、或は同時に無駄にしている


悩みはあるが金はない 天気のいい午後、夏の始まる予感
こんな日はやる気もなく、部屋に戻りだらだらするに限る
僕達にはまだ多くの自由な時間があって、猶予があった
東京にいる事が真新しく、感性が刺激される
同時に辛くもあったが
延び延びとした どこまでも行ける様な想像力と無責任な楽観が
同じ様な仲間と集まる事で将来に期待し、責任を先延ばしに出来る
空を見て煙草を吸って少しだけ働き
好きな子を迎えにバイクを走らせれば、それで良かっただけの日々
終わる事のないような時間が目の前に有り持て余していた

政治に期待もしていなかったが、その頃はまだ原発も爆発していない
阿佐ヶ谷や高円寺で60年代の文芸書や写真集をあさり
ファッションに近い感覚で個々が思い思いにレゲエやパンクやロックを崇拝する日々


少し寝ている間に不思議のトンネルをくぐったかのように感じ錯覚した

寝ぼけた頭を時間軸を整理し自身を見ると
年を相応に重ね、やる事に追われている今現在の自分を確認した



大塚から一駅、
今度は乗って来た反対方向に山手線を乗り換える
一ヶ月程前まで部屋があった巣鴨に行き改札を出る
線路と幹線道路が十字に交わり今日も気持ちよく風が抜ける
駅前にはいつも通り演歌歌手の親父が腰を降ろし陣取り
スピーカーから自前の曲を流している


コーヒーと煙草で一息



5分後には再度東京方面の山手線へ
東京駅 新丸ビルの高層階
某企業にアポなしで飛び込むと
口ひげを蓄え、素人としては最上級にスーツを着こなす素敵な男性(32歳)が
親切に親身に対応してくれたのだった