消える村 流れる若者
うすい黄色い砂地が地平線まで続く。
風に乗った細かい砂粒が、目や鼻に入り込み息苦しくなる。
気温は45度。点在する木々の多くが立ち枯れている。
枝に触ると簡単に折れ、白い粉が舞った。



一枚の写真
(砂漠の中で薪木を集める男とも女とも取れる1人が
想像するに容易な=強い太陽光に焼かれている)

と共に始まるこの文章は
『 砂漠化 テロを生む 』
と題された5月26日付の朝日新聞の1、2面に掲載されたトップ記事だ

まるで、小説の様な出だしだと感じた
新聞記事にしては珍しく筆者の体感を伴った文章だ
読み進めると
文末には忘れもしない名前が記されていた

(ディファ <ニジェール南東部> 杉山正 )

今年3月 南アフリカダーバンで行われたBRICS大統領サミット
公式プレスパスを手に出来ないでいた僕に手を差し出してくれた記者
杉山正さん まさに彼の文章であった
記事を読むと嬉しくなり、また良い文章を書くんだなぁと
エース記者に対しては失礼な それでもやはり懐かしさが湧いてくる感情が強く
氏の痩せたひげ面を思い返したのだった。
ここから少し、『砂漠化テロを生む』と題された杉山氏の記事を抜粋(一部省略) 
敬意を持ってここに紹介させて頂きたいと思います





西アフリカ ニジェール南東部のメイネ ソロア県。
一帯はサハラ砂漠からやってくる砂に埋もれそうになっていた。
以前はゾウなどの野生動物も生息していたというが、今は想像するのさえ難しい。


1975年にこの件を調査した際、一帯で70ヘクタールに過ぎなかった砂漠は
2003年に18万5千ヘクタールに膨らみ、32パーセント以上((この辺り一帯の)と考えられる)を占めるようになった。
今も毎年1万2千ヘクタールずつ増えている。
四方を砂に囲まれた小さな村グーデラムを訪ねた。農家のスーレさん(65)は飼っていた牛とヤギの9割を干ばつでなくした。残るのは牛2頭とヤギ10頭。

「生活しているのではなく、生き残っているんだ。井戸が枯れたら村をさるしかない」
スーレさんはそう話した。


干ばつは30年前には10年に1度だったが
5年に1度 2年に1度と頻度を増して来た。

この一帯で、武装勢力が生活に困った若者達をリクルートしている。そんな話を聞いた



信仰じゃない 食べる為に


取材を重ねると、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム武装組織
『MUJAO(西アフリカ統一聖戦運動)』の元メンバーら2人に会う事が出来た


「メンバーには食うのに困った農民や遊牧民がたくさんいた。近年の大干ばつで多くの人が家畜や生活の糧を失った。大半が宗教心から加わった訳ではなく家族を養う為だ」。

2人のうち1人のイドリサさん(44)によると、戦闘員にはチャドやマリ、ニジェールなどサヘル地域出身者が多かった。ほとんどが銃を持った事がない者達だった。
早朝から夕方まで、走り込みや射撃訓練を受けた。
戦闘任務前には、メンバーの多くがコカインを吸引しているのを見たと言う。

イドリサさんは言う。
「畑に砂が積もる故郷で何が出来るのだ。政府は助けてくれない。貧困と社会不平等が無くならない限り、また新たな組織が出来るだろう。食べ物がなくて、戦えばくれると言われれば、死ぬかもしれないが参加するだろう」



書き手の杉山さん顔が浮かんだ
この言葉を直に、灼熱の太陽の元
英語で(より感情的な言葉)聞き取った場面を想像した
杉山氏は嘘をつく人間ではない
BRICSの現場ICC durban にてご一緒させて頂いた
共同通信社 服部氏が話してくれた場面を思い出す

「原発事故後 我々ジャーナリスト記者達は世間のやり玉に揚げられている
 報道は嘘だ 信じられない。 もちろん批判は随時うけつけるが1つだけ言えることがある
このスクープを出せば東電が潰れる政府が潰れる
そんなニュースは出せない なんて事はあり得ない
むしろそんなニュースこそ やろうぜ!!やろうぜ!!という記者魂、環境、社風が私達にはあ る」


杉山さんは黙ってこの会話を聞いていた。
彼の目には、ある種、見てはいけないモノを見た者特有の暗い影があり
無骨な構え
また無駄な事は話さないそのスタイルに記者としての覚悟、
意識の高さを感じずにはいられなかった


国際会議なんてつまんない だれが取材しても一緒
(確かにロイターBBC外資から先にとったレポートが会場の全記者に配られるといった具合だった)
やっぱり、記者は途上国にいないと わっしはそー思います 静かに呟き 静かに笑う
煙草をよく吸う人だった(そして気前よく与えてくれる人でもあった)



ジャーナリストとは目的遂行と現場のアレンジ力だと思います
またどこかで会いましょう

別れの挨拶も出来なかった杉山氏からのmailにはそうあったのだった。



言葉を胸に精進し
もちろん再会を強く望んでいます
ざっす



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帰国後、何人かのビジネスマンに尋ねられた

『それで、今アフリカはどう? 何がビジネスになると思う?
遅れている状況的物質的時差を掴めば、それは大きなビジネスになる
市場価値を考えても魅力的な場所である事は間違いない』

まったく もって お話にならない
けむにまいたが今回は質問に答えるとしよう



「お前らみたいな人間には 絶対教えない 
その市場とやらを自分の目で見て来いよ」

今だったら、この記事を書き写した直後、今だったら、そう声に出して答えてやる





本日から3日まで横浜で行われている
アフリカ開発会議、今から取材してきます
また現場の様子をアップレポートします

それでは











freelance journalist / Hemingway Pen Club  代表
大嶽 創太郎