虹の国をみつけたら past 29

完璧に美しい女性 ローラグラハム




僕はいつも通りリビングで朝食兼昼食を済ませ、お気に入りの本を読んでいた
天気がいい日が続いていた。何か素敵な事が起こりそうな予感を感じる。

そんなときローラは僕らのゲストハウスにチェックインしてきたのだった。

息を呑む絶世の美女。たびたび近代史にも登場する魅惑の女達。
品の有るやわらかそうな金髪優しそうなブルーの透き通った瞳
ボリュームのあるハート型の唇、体系は少しぽっちゃりとしていて胸も控えめな大きさ
身長は165センチといったところすこしカントリーチックで垢抜けない感じも素敵だった。
彼女を見た瞬間に幸せな気持ちになった。



ノートを片手に持ち彼女達が談笑しているテーブルに近づいた
女の子に声をかけるとき英語はすごく便利に機能する
ハーイと声をかければいい。ただそれだけ。名前を書いてとノートを渡すと
彼女は筆記体ではなく世界中の誰もが読める活字体で名前を書いてくれた。

Laura *****


ローラか。。ローラね。西條秀樹のお陰ですぐに名前を覚えた
どこから来たの??

islandよ


僕はとたんにアイスランドに行きたくなった。彼女の友人にマルボロを1本分けてもらった。
香港で出会ったスウェーデン人のイダも美しかった。きっと北欧は本当に美しい人が多いんだろうと、まさかアフリカの最南端で再確認するとは夢にも思わなかった。



友達は?聞かれたので1人で来たと伝えると彼女達の表情がやや変化した。

素敵な旅になると良いわね。

素敵な旅か

天使達から素敵な言葉をもらったのだった。

幸運は続く。こともあろうに彼女達は僕と同じドミトリーにベッドを取ったのだ。ナニがこっちを見てニヤニヤしている。つまり彼女達はここで寝起きし着替え寝転びながら雑談する。
本当にいい友達を持った。僕はナニのファインプレーに感謝した。

世界中の人の寝顔を見た。インド人の女性は口角を上げ笑顔で眠っていたし寝顔も人それぞれだ。それもドミトリーで寝起きしなければ分からないことだった。

ローラに短い手紙を書いた。内容は半日でいいからデートをしたいとかそんなものだったが僕はその手紙を朝読み返しては結局は渡せず自分の枕の下にしまいこんだのだった。
ローラの友達のベッドにはマルボロを3本お返しした。


その夜僕の隣のベッドで眠るローラの寝相は少し変わっていた。右肩を下にし体の半分はうつ伏せ左手を壁のほうに突き出し指先は誰かの手を欲しているように伸びている。怖い夢を見ているのか旅の不安がそうさせているかは分からなかった。


次の晩、彼女は仰向けにすやすやと眠っていた
完璧な寝顔を見ていると悪戯を思いつく。
彼女の唇に人差し指と中指を伸ばし重ねた。
彼女はビクンと目を開き驚いた。
思わず笑ってしまう。sorryと言いながら僕はその場から逃げた。





夜になり雨が降る
すぐに止むかと思ったがそれはますます大粒に変わり
メインストリートには人影がない。
階段を上り2階のゲストハウスのフロント前に着くと、いつもと違う雰囲気に気がつく。
雨の影響で漏電したのか、ゲストハウス中のあらゆる電気は消えていた。
真っ暗ななか蝋燭が立っている。

バーラウンジを覗くとテーブルの上に蝋燭を立て
火を囲み宿泊客が小さな輪を作っている。
エイテンとローラ達だ。雨音が塗炭やベランダに落ちる音がする。
いつもは誰かがつけているTVもきえ、静かにゆっくり語り笑い合う声だけがする。
火の光は優しく揺れてオレンジの壁を照らしている。
エイテンのグリーンの瞳もローラのブルーの瞳も蝋燭の光の中で見るとより一層美しかった。


エイテンは有り合わせのペーパーを使って器用にバラの花を作ってはローラ達に渡していた。

(君って奴は本当に。。。)

ローラ達もキャンドルの火をデッサンしたりしている。


僕たちはゆっくりと酒を飲みながら、ゆっくりと雨のふる夜を楽しんだ。
ローラたちは明日の午後2時に旅立つという。
彼女に一目惚れをしていたがデートは叶いそうになかった。



翌朝目が覚めるとローラのベッドは1つの黒いバッグを残し綺麗に片付いてしまっている。
もう彼女達は旅立ってしまったのかと思い慌ててレセプションに聞くと
まだ荷物は預かってるしお昼頃には戻ってくるんじゃない?
ピワは笑いながら教えてくれた。

安心してベッドルームに戻ると異変に気がついた。
寝起きには気が付かなかったが、ローラが残したと思った黒い鞄は、よくよく見ると僕のベッドの柱に引っかかっている。
二段ベッドが並びそれぞれ4本の柱があるが明らかに僕のベッドの足元の柱にそれはある。
隣のベッドで眠るローラもわざわざこんな事はしないだろう。
そして彼女のベッドは綺麗に片付いているし、その日は僕のベッド、ローラのベッドのそれぞれのベッドの下に宿泊客は居なかった。

何だろうこのバック?手に取り中を見て我が目を疑った。中に入っていたのは未使用の高級コンドーム。ローション。マッサージ用のアロマオイル。用途はわからないが様々に小分けされた医療処方された薬の数々。目薬やスキンケアグッズそれら一式だった。一体誰の差し金だ?何のメッセージなのだろうか?

ふと枕もとの柱に目をやるとそこにも異変はあった。黒い髪留め用のゴムが1つだけ掛けられている。僕は瞬間的に自分の左腕を確認した。昨日まで確かに付けていたピンディーからもらったブルーの髪留め用のゴムが姿を消している。どーなってんだ??

さらに部屋を出ると疑問に追い討ちを掛けられる光景が目に飛び込んできた。

ドミトリーの隣は個室になっている。
ベッドが1つだけあるそのプライベートルームのドアがほんの数センチだけ開いている。しかもドアノブにはU字ロックが空いた状態、

鍵穴にはキーがそのまま刺さっている。
思い浮かぶのはイヤラシイ想像しかない。いったい何なんだ?
整理が付かないまま、その難解なサスペンスミステリーの糸口を探す。

午後1時になりローラ達はゲストハウスに戻ってきた。
ローラの左腕には僕のブルーのゴムが見て取れた。
あれ?
声を掛けようとすると彼女は何処かに消えてしまう。
ローラの友人に声をかけた。
何時のバスなの?
2時過ぎよ。
出発まで40分だった。

ローラ、ローラ、ローラ!!
僕はゲストハウス内を走り彼女を探した。
やっとのことでシャワールームの出口に立つローラを見つけた。
彼女の左腕に、さっきまで見て取れたゴムは姿を消している。

天使と対面する。言葉がでてこない。何か言わなきゃ。
一体何が起きているんだろう。



「I felling confuse 」

「I felling confuse too 」



彼女が何か求めるように僕の目を覗き込む。

こんな時、どこから、なんの話をしていいのかさっぱりわからない。



「do you like me ? 」

言葉に出してから、違うと気がついた。



ローラの目の中で何かが曇った様子が見て取れる。

「I like you but I have a boy friend 」

「ok , I understund ... 」



ゲーム終了の鐘がなる。僕は彼女達のバックパックを纏める
彼女達の荷物をせめてバス停まで運んだ。
サヨナラの挨拶とハグをした。
連絡先を尋ねると、ラウンジの誰かにパスしたと言う。
バスは走り去った。背後に声を感じ振り返ると
疲れきった表情のピワだった。
この荷物をエントランスに運ぶのを手伝って。
ピワを手伝った。
ラウンジに行くと1人の白人男がメモ紙を見ている。ローラの連絡先だ。
それを自分の手に取ってみると男は返してくれとメモを奪い返した。



一体なんだったんだろう?バーカウンターに座り煙草に火をつける。

何度考えても何が起きたのかはさっぱりだ?朝からの一連の不可解な出来事を思い返してみる。
それでも謎は深まるばかりだった。
謎のコンドームや薬ローションの入ったバッグ。個室が使ってくれと言わんばかりに空いていた。
ピンディーレからもらったヘアゴムはなくなり一瞬ローラの腕にあった事が確認出来た。
ため息と一緒に煙草の煙を吐き出す。青白い煙がバーに消えてゆく。


煙草の灰を灰皿に落とす。
すると灰皿の脇に小さく折り畳まれた小さな紙を見つけた。
手に取り、折り目を返す。紙を開くと中にはこんな文字が書かれていた。



「Laura grahamm 11th August 2010

 flight No SA67 joburg to cape town   」



以前、彼女が書いてくれた名前とはファミリーネームが違っている。
本名とフライトナンバー。その気があるのなら追いかけて来い。と言うことなのだろうか?

ドミトリーに戻ると黒い鞄は跡形もなく消えていた。







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完璧に美しい女性 ローラグラハム
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