虹の国をみつけたら past 17

マサイとサムライ  革命を信じる雄


三度ダーバンに戻る
高速バスのドアが開くとこの街独特の温かい風と潮の匂いがした
しかし灰色の雲がどんよりと重たく街を覆っている
同じ町並み。知っている建物がまるで全く別物に見える
胸騒ぎをなんとか気のせいにして僕は歩きなれた街を行く
朝食をとりにゲストハウスとビーチの間にあるレストランに向かう

台湾人の女性バイオリニストがオーナーのこの店は、25ランドで醤油ベースの焼きうどんが食べられる

偶然たどり着いてからその味に病み付きになり、週に3度は通うようになっていた
角を曲がるとレストランが入っているビルの異変が目に飛び込んできた
4階まであるビルの壁は真っ黒に焼き焦げていて見るも無残な姿に様変わりしていた
2回部分に飾られていた万国旗も焼き爛れている
路面に面したかつてレストランがあったそこは
やはり丸こげになったシャッターが降ろされポリスが用意した黄色テープが侵入者を拒むように電柱と電柱を張っている

この街ではしばしば強盗が店を荒らす事がある
そこから1ブロック離れたサーフショップも先日その被害に遭っていた

警備員に駆け寄る
一体何がおきたんだ?
2回に入っているテナントショップのケーブルが漏電してそこから火事になったんだ

物凄い勢いで火がまわって一時的にパニックになる人もいた
だが幸いにも死人はでなかった

僕は少しほっとしたが女性オーナーの事を思った
彼女に会いたい事を伝えると彼女はこの近くに住んでいるよ、と警備員は彼女の住所を教えてれた



相変わらずだ

次から次へとこの街は何かがおきる。僕は泊まり慣れたゲストハウスに向かった
彼らは突然の訪問を大声をあげながら歓迎してくれた
もうすでにこの街は第二の故郷になりつつある。シャワーを浴び座りなれたソファーに座り煙草を吸った

ゲストハウススタッフのナニと久しぶりにビリヤードをする。
3連勝。圧倒的に叩きのめすことが出来た

しかしビーチの露店に顔を出してもタピとハムの姿はなかった
彼らは故郷のジンバブエに帰ったのだと新たに露店を仕切るラスタが教えてくれた
マークとティーチは未だ服役中だ。エリックに電話をする。涙声で僕の帰りを歓迎してくれるのだった



馴染みの宿=バナナバックパッカーズに一泊しスーツケースを預け
マサイのミイェレのスペースを尋ねる事にした
サウスビーチ、ラスタのショップから更に南に5分ほど歩く
裁判所の前に建つ18階のマンションの8階の一室

リビングには最新のwacのデスクトップ、薄型の40インチの薄型TV、プロ用のDJミキサーのスピーカー
部屋は広い3LDKでベランダからはインド洋が一望できる
ラスタ達のアジトは窓もないトイレも共同の地下の部屋で似たようなゲットーな部屋を想像していた

綺麗に180℃それは裏切られた

物体と有体の組み合わせとしておかしすぎる
ナニ何々なに?なんで?情報処理に頭がパンクしそうになる
ナニナニナニナニ、ブラック達が僕の言葉を真似て笑った

「this is our space welcome 
ゲストハウスに泊まると金もかかるだろう、ここならお金は要らない
今日からここに住んだらどうだ?」
ミイェレがmacの前に座りながら歓迎してくれる。ちょうど夕食が出来上がる
赤ちゃんを含めた総勢10人程の共同生活
僕は黒人のコミューンに辿り着き転がり込むことになる



シッポがしきりに話しかけてくる

「俺は日本に行きたいんだ行きたいんだ日本でお金を稼ぎたいんだ
 明日一緒にトラベルエージェンシーに行ってくれ!そして日本からレターを書いてくれ」
彼が言うレターとは身元保証のようなものだった
僕が自分の名前を書き、住所、勤め先、そこで彼を雇用するとの内容を書いた手紙
レターとvisaがあって初めて海外に出国出来る様だ
「わかったわかった落ちつけって、手紙ならいくらでも書いてやる。
 だから一緒じゃなくてお前が1人で入って調べてきな
 not we ね only you ね 」

だいぶ彼らの対応にも手馴れてきてしまった。会った瞬間に物事を頼まれる
しかも遠慮なく。その分、何でもyesと答えていたらあっという間に彼らのペースだ
その堂々巡りのやり取りを繰り返すと他のブラザーが笑いながら割って入ってくれるのだった。

シッポお前1人で言って来い

ミイェレと同じベッドに眠る。動物に似た彼の体臭が鼻を突いた。
持っているものを分け合う。それは所有物や食べ物考え方アイディア、多岐に渡る。
ベッドルームの棚にチョコレートを置いておいた。それを見つけたミイェレはひどく怒った
お前は何故食べ物を隠すんだ?1人締めするんじゃない!!

彼はどこで手に入れたか分からないオーデコロンや乳液を棚に保管していた

これは?

これは個人用だ!

なんだかそのあたりのバランスは難しい。洗面所に置いていた僕の歯磨き粉はあっという間に皆の共有物になる。そのくらいは目をつぶる事にしよう

ミイェレは前記した革命運動のaltimet wark準備の為1日中朝から晩までMACに向かい資料を整えている。
HPを持ち企画のディテールの文章を打ち込む。
彼のフェイスブックには300人ほどの友人がアドされていて中にはアーティストの様な輩も多く見受けられた

君はアーティストなの?

「NO im activest 常に正しいと思うことを選択し行動する者だ。」

どうやら活動家と言う事だ
この赤い電球なんとかならないの?ものも探しにくいし落ちつかない
ケープタウンで見つけたんだ!いいだろう!赤はマサイ男の色だ!
一日8時間以上パソコンに向き合い赤い電球の部屋で眠る
何度となく健康に良くないと言っても聞く耳を持たない

僕は食事を新しい家族と一緒にとることに心がけた。
外食すると1回R30ほどかかるがR100程つまり1200円程スーパーで買い物をすれば家族が3日ほど食べられる食材を買い込むことが出来た
冷蔵庫に食材が増えると皆喜んでくれる。基本的にはオーブン料理が主流でチキンや野菜をガーリック、塩、レモンなどで焼きこむ。焼きたてのそれをテーブルに運びまず男達が先に食べる
ナイフやフォークなどは使わない。
コンロの淵に着いた脂のこげも一緒にパップを主食に(とうもろこしの粉を水で溶き火にかける。白くお餅のような食感。)とガツガツと食べる
これが本当にうまい。指先につくチキンの脂を音をたてて舐め、旨そうな肉は早いもの勝ち。生まれて始めての食い物競走を経験した

彼らの食事の取り方で特徴的なのが必ず食べきらない点がある
鍋は必ず少量残し、それを元に次の料理を創ったりもする
シェアの最後の残り火は美しく果汁を5倍の水で薄めるジュースは最後50mlになってはまた水で薄められた。冷蔵庫にはいつも何か料理があったし誰かの愛情を確認する事が出来た

彼らに
「頂きます、ご馳走様」大好きな日本語を教えた。
「イタダキマース、ゴチソサマ」手を合わせそう口にする彼らはなかなか可愛く感じた

朝起きれば誰かが作った朝食がありそれに加えて自分で昼食を作る。もちろん誰かの為に余分にだ
裸足で街を歩き毎日海に入る。何処かのレストランで1食取り日が暮れると家に戻る
1日4~5食取り体を使う。足の指先は伸び体重も増え僕はアフリカに来て初めて健康を手に入れた









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