虹の国をみつけたら past 12


where is one love ?? ラスタ達との日々



ピンキーとのデートの帰りにアジトに寄った
入り口でセキュリティーに引っ掛かり中には入れてもらえない

何故だ?彼らとは友達だ!

などと言っているとアジトの隣の住人がタイミングよくこちらに来る

「ティーチとマークは逮捕されたよ」
 
 !?
逮捕
言葉を聞いてから理解するまでに数秒の時間を要した
ピンキーの顔を覗き込んだがどうやらそれは事実のようだ
エリックに電話することにした
エリックは唯一彼らとは出身の国が違い(タンザニア)
ビーチから離れたマーケットの近くに部屋を持っていた
彼に話を聞くとこうだった
「ハム(バリトンボイス)とタピ(一番顔を腫らしていた)が、どうやらテーチの金、銀行のカードを盗んだらしい。それに怒った2人が殴る蹴るの暴行を加えたんだ」

彼はテーチ、マークの保釈の為に有り金を全て(R1500=2万円)たたいたが足りず今は処分の結果を待っていると言う

悲しい気持ちと同時に信じられない気持ちになった
ハムやタピが他人の金やカードを盗むとは到底思えなかったからだ
いったい何が起こったのかわからなかった
誰かを疑いたくないが
もういつもの仲間ではなくなってしまった


本当の事を知りたかった



ピンキーが一緒にいてくれることになった
彼女がベッドで寝息をたてた後
僕はその日の為に借りたホテルを1人出てみることにした

深夜の空気を感じながら煙草を吸った
ダーバンジュライ(年に一度の音楽祭)は既に終わってしまっっている
まさかこんな形で今日を迎えるなんて夢にも思わなかった
僕ら仲間はもうバラバラだ

午前零時 日付は変わり2010年8月1日
僕は一生忘れられない形で誕生日を迎えた




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翌朝彼らの露店に顔を出した

タピの手には7針以上の縫い傷を確認する事が出来た
朝は痛みが相当つらいらしく挨拶に応じる事もままならない
顔の傷を隠すように色の濃いサングラスをかけ
じっと下を向いたまま動けずにいた

1つ覚えておかなければいけない
事の真意は分からないが
この光景は真実だと僕は心に命じた
タピとハムはお金やカードを盗んでいないと言う

思い出した
僕が皆との生活に慣れた頃、アジトに服を置いていった事があった

その時タピは
「お金はちゃんと持ったかい?」と聞いてくれていた
ハムは仲間の中で最も良く笑う男だ
本当に楽しそうに
それにあの夜、何も言わなかったが、この男は黙って僕の目を見続けていた
エリックもどうやら2人の言うことを信じたらしく
支払った保釈金を返してもらうべく、明日皆で拘置所に行くことを決めた



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翌日
まだ身動きの取れないタピを残し
ハム(バリトンボイス)、エリック(大麻で捕まった)、テーチ(逮捕された)の内縁の妻(子供は2人のだが籍は入れていない)それにトニーというインド系のラスタも加わり
総勢5人で拘置所に向かった

大事なことは大勢同行しみんなで決める
僕は現金も持たず同行することにした

夜になると露店の商品をストックしておくコンテナ置き場を通り過ぎ
知らない道を歩き
途中休みながら、皆かなり早歩きで歩いた

ハム、エリック、トニーが先を行き
僕とテーチの妻が最後を歩いた
彼女は夫(内縁)が捕まっているというのに悲壮感はなく
時に笑いながら日本のことを質問してくる
アフリカ女性の大らかさを感じた

茶色い無機質な大きな建物
裁判所よりもさらに大きいそれが拘置所を兼ねた警察署だった

トニーが煙草をくれと催促し、僕はそれに応じることにした
インド系はすぐにモノをねだる
思い思いに話したい奴と話し時間をつぶしたが
なぜかトニーは一人になる時間が多かった
建物の奥から一人の男が声をかけてきた

どうやら係りの者らしい
言葉は分からないが見ることは出来る

僕は一番最初に動き
ついでトニー、エリックが廊下の前に集まった
係りの者が現金の束を見せる
トニーが受け取り無事にエリックが支払ったお金は返って来たように思えた
この場ではマーク、テーチには会えない為、僕らは帰ることにした

帰り道、何やらテーチの妻とエリックが激しい口論をしている
エリックの話を聞くと保釈の為の現金は
裁判費用に回すためトニーとテーチの妻が管理することになったらしい
自分の金が返ってこないエリックはもちろん意義を唱えたが、お金はすでにトニーのポケットの中だった

僕はトニーに詰め寄った

「それはエリックの金だろ?」

必死の言い訳なのか羅列に言葉を並べるインド系ラスタ(自称ハーフイングランド&ジンバブエ)

「yes か no で答えるとどっちだ?」

インド人はやっと観念したらしく、事実を認め金は必ず返すとだけ残し何処かに消えて行ったのだった

テーチの妻は別れ際聞いてくる
「食べるものを買いたいの、家には子供もいるし、お金をくれない?」
この国に来てから何度金を無心されただろうか
あるタイミングで僕は無闇に金を払い与える事を止めた
僕はNoと答えると彼女は「大丈夫聞いてみただけだから」と言いその場から歩き去った

エリックと話をする
マークとテーチの逮捕後、彼は露店で商品を売ることが出来なくなった
それは彼が唯一タンザニア出身であるからだそうだ
露店の仕切りもマークらから別のジンバブエ人に代わりルールが変わったらしい
インド系ラスタ(ラスタではない)のトニーも明確にしてしまえばマークやテーチに義理があるよう彼らの側だ

何がラスタだ!何がアイリーだ!!何がmoreファイヤーだ!!


「where is one love !!?? haaa!!? 」

僕とエリックが声をあげる同じ道端
テーチの妻がケンタッキーから大きな袋を抱えながら出てくる姿を
僕達は見逃さなかった










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